2007-2008 トップリーグ 第2節 対 東芝ブレイブルーパス

2007.11.07

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「やっぱり強い。(個々に)基本があって、戦い方がぶれない」

雨の開幕戦から数日後、11月某日のリコー砧グラウンド。ブラックラムズ主将の伊藤鐘史は、第2節で対戦する東芝ブレイブルーパスをこう評していた。言わずもがな相手は昨季王者である。

「バリエーションをつけたい」(瀬川智広・ブレイブルーパス監督)という意図はあれど、ブレイブルーパスの強さが如実に表れるのはモールである。“立ってプレーするという意識”と“親に見せられない練習”で醸成させたお家芸だ。ブラックラムズはそのモールを警戒、FWのユニット練習ではその対策を確認していた。「モールをどうするというよりも、まず作らせないように。形成する前に倒す」(伊藤)。“仮想東芝”の選手に対し、低く、鋭く刺さるのだった。

一方、府中市にある東芝府中グラウンド。サントリーサンゴリアスとの開幕戦を「前にボールを運べなかった」(瀬川監督)ことで落としたブレイブルーパスは「次はとにかく攻めよう」(同)という意思統一のもと、試合前の一週間を過ごしていた。今季の、新スタッフとしての初白星を何としても、ただ勝つだけでなく王者たる試合内容で――

前主将で昨季MVPのCTB冨岡鉄平もこう話していた。

「勝つことが一番大事なんだけど、それだけじゃない。チームの存在意義を見せなきゃいけない。来たお客さんに“東芝のラグビーはすごいボールが回るな、やっぱり面白いな、強いな”という試合を見せないと。次のリコー戦は大事になる」

2007年11月4日14時、秩父宮ラグビー場。快晴のもとキックオフとなった。

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序盤からラインアウト、タッチキックなどでミスを重ねるブラックラムズに、ブレイブルーパスは容赦なく襲いかかった。まずは前半9分、ブラックラムズのペナルティから得たゴール前左ラインアウトをブレイブルーパスFW陣が一気に押し切り、FLラトゥブラ・ラトゥバがインゴールに飛び込む(ゴールは失敗)。さらに19分のSH伊藤護、28分のPR笠井健志のトライで突き放しにかかった(ともにゴール成功)。

さらにハーフタイム直前の39分、今度はゴール前右でペナルティを得たブレイブルーパスは得意のモールを形成する。練習どおりに低く刺さらんとするブラックラムズFWから接点をずらし、なだれ込む。最後はCTBナタニエラ・オトがトライした(ゴール成功)。スコアは10対26。「小さなミスから自陣で試合をしてしまった」。佐藤寿晃監督は前半を悔いた。

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しかし後半、佐藤監督は流れを変えるべくWTBにシュウペリ・ロコツイを投入、先発出場のCTBブライス・ロビンスに加え外国人BKを2人並べた。ブラックラムズが本来志向していた、素早い攻撃の片鱗を見せることになる。

8分、ロビンスがハーフラインから相手守備網を切り裂き10メートルライン上までゲインし、左のスペースへパス、快足FB小吹祐介がそこへ走り込みトライを奪う(ゴール成功)。さらには28分、CTB金澤良が自陣での相手パスをインターセプトしてそのまま走りきる。後半2本目のトライとなった(ゴール成功)。

しかし、反撃はここまでだった。最終スコアは24対40。4トライ以上で得られるボーナスポイントも、取れずに終わった。

攻撃の形は見えた。たとえば前半26分も、キックオフからターンオーバーを奪い一気に右へ鮮やかに展開、さらにゴール前右でのポイントからすばやく左へSO河野、CTBロビンスとボールは渡り、最後はFL赤羽根拓也がトライを奪った。今季初先発のロビンスも「スキップのように」が身上のステップで、幾度となくゲインラインを割った。BK陣のスキル、スピードは今季の指針で、「やってることは間違いない」(小吹)と確信できる内容ではあった。

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しかし、試合後の伊藤は言った。「ブレイクダウンの差が得点差に現れたと思います。(ボールに)絡むことはできるけど、その後押し切れない、見てるだけになってしまう」と。

「やっぱり悔しいですね。ボーナスポイントも取れなかったし。“あそこをこうしていればもう一本取れた!”というシーン? それはただの結果論になってしまうし、言ったらキリが無い。とにかく、もっと精度を上げていきたいです」

――じゃあ、MS杯でリベンジですね。

「へへ。それしかないです。もうすぐ次の試合ですから、切り替えていくだけですね」

伊藤がこう語る一方、冨岡は報道陣に囲まれていた。この人の話は、つい聞きたくなるのである。

「ウチは経験不足の選手が多くて、今は苦しい試合で経験を積んでいる。こういう時期は必要だと思うんです。今日のリコーですか?BKの展開が良かったですね、ああいうのは(やられる側は)嫌なんです。僕らにとってもいい試合になった。あの形を継続したら上位チームも苦しむんじゃないですかね」

両雄の再戦は、果たして訪れるか。

(文 ・ 向 風見也)

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