2011-2012 春季オープン戦 対 NECグリーンロケッツ

2011.07.08

春シーズンの締めくくり

 近鉄、横河電機、コカ・コーラウエストを相手に2勝1敗。7人制の「セブンズフェスティバル2011」ではコンソレーション優勝という好結果も残し、日々のトレーニングでチームの基盤を着実に築く一方で、ゲームを通じた経験も積み上げてきたリコーブラックラムズ(リコーラグビー部)。7月1日(金)に行われた4試合目となる春のオープン戦、NECグリーンロケッツ戦で、春シーズンは締めくくりとなる。昨シーズン、オープン戦ではリコーが勝利。しかし公式戦では、リーグ戦、ワイルドカードトーナメントともにNECが勝利し、リーグでは1つ上の6位という順位、そして日本選手権への出場権を手にした。今シーズン、さらに上のステージを目指すリコーのメンバーにとっては必ず乗り越えなければいけない相手といえる。

「(前戦の)コカ・コーラウエスト戦では規律に対する意識が高かった。一方でファイトする意識が少し足りなかった。そのあたりが改善できれば」(山品博嗣監督)。春を締めくくるゲームのフォーカスポイントのひとつは、闘志をどれだけ見せられるかがあったようだ。

4トライで前半リード

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 正午過ぎまで照りつけていた日差しが弱まり、コンディションが改善した東京・世田谷のリコー総合グラウンド。15時、リコーのCTB金澤良のキックで試合が始まった。最初に攻勢をかけたのはリコー。キックオフボールの蹴り返しをキャッチし、自陣からボールを回しアタックを仕掛ける。NEC陣内に攻め込み、左サイド22mライン付近でラインアウトを得ると、これをキープしモールで押す。ゴールに迫るがここは惜しくもペナルティ。

NECはペナルティキックをタッチに蹴り出し、ラインアウトから自陣右中間でやはりモールをつくって押す。リコーは自陣への侵入を許したが、密集でボールを奪い返したところでNECに反則。ハーフウェイライン付近でスクラムを得る。ここでNECに再び反則。リコーは右サイドにタッチキックを蹴り、22mライン付近のラインアウトのチャンスをつかむ。

これをキープし中央を突く。素早いパス回しでディフェンスラインを崩すと6分、SO河野好光からのパスを受けたWTBロイ・キニキニラウがギャップを突破。相手選手を引きずりながらインゴールエリアに達し、ポスト右にトライ。コンバージョンもSO河野が成功させて7対0。リコーが先制する。

試合再開のキックオフボールは左サイドに飛ぶ。リコーはこれをキャッチし右サイドにキックを蹴るが、強い横風を受けダイレクトでタッチを割る。リコー陣内22mラインそばまで戻してのラインアウトから、NECはボールを回しサイドを突くがノックオン。リコーボールのスクラムに。

スクラムが回転しリコーにペナルティ。ボールはNECに渡る。ここで再びスクラムを選んだNECは、右サイドからボールを回し、逆サイドを突くと12分、10番がギャップを抜けて中央に切れ込んでトライ。コンバージョンも成功し7対7に追いつく。

試合が再開すると、NECのスローフォワードで得た自陣10mライン付近のスクラムから、リコーはボールを回しバックスがアタック。CTB山藤史也、WTBキニキニラウが力強い当たりを見せ、SO河野が俊敏にスペースを突き、相手ディフェンスをかき回していく。アタックを繰り返す中、パスを受けたPR柴田和宏が密集を抜け出し、敵陣10mライン付近から独走。19分、22mラインを越えたあたりで左をフォローしていたCTB金澤にパスし中央にトライ。コンバージョンも決まり14対7とする。

シーソーゲームは続く。キックオフから攻め込んだNECはリコー陣内でボールをキープ、ディフェンスが続くリコーは粘り強く守っていたが、右サイド22mライン付近のスクラムからNECが展開。22分、逆サイドまでボールを回すと左サイドを14番が突破。回り込んで中央にトライを決める。コンバージョンも決まり14対14とする。

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 リコーも反撃を見せる。キックオフボールを獲得したリコーは、WTBキニキニラウが中央を突破。ゴール前までゲインするがつかまりノックオン。しかしNECがスクラムからボールを出そうとしたところで激しくタックル。ノックオンを誘い、ボールを奪い返す。

敵陣右サイド22mライン付近のスクラムからNO.8ハビリがブラインドサイドを突くと、ゴール前でつかまるがボールをキープし攻撃を継続。中央をWTBキニキニラウが突進、さらに続け左サイド22mライン付近にラックをつくるとSO河野がゴール左隅に向かってグラバーキック。これに反応したWTB横山健一が鋭く飛び出し28分、インゴールエリアでボールを押さえてトライ。コンバージョンは外れたが、19対14と再びリードする。

さらに34分、リコーは右サイドハーフウェイライン付近のラインアウトから展開し、逆サイドまでボールを回すと、NEC陣内10mライン付近の密集からWTBキニキニラウが抜け出し独走。ゴール左隅にトライを決める。コンバージョンは外れたが連続トライで5点を追加。24対14とリードを広げた。

前半終了間際、自陣ゴール前の攻防を相手ペナルティでしのいだリコーだったが、タッチキック後のラインアウトでペナルティ。NECはリスタートしてアタックを再開。しかし、今度はノックオンでリコーボールになるが、スクラムでリコーはペナルティ。スクラムを選択したNECは右中間10mライン付近からボールを展開。左サイドをスピードに乗った13番が抜け、回りこんで中央にトライする。コンバージョンも決まり24対21。

ペナルティを重ね相手にチャンスを与えるかたちでトライを奪われたが、リコーはリードを保ち試合を折り返した。

NECが力強いアタック、守勢に回る

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 後半はWTB横山健一に替わりマーク・リーが入りスタートする。

だが、主導権を握ったのはNEC。開始直後から鋭いアタックを見せ22mラインを越えてくる。しかしリコーもしっかりディフェンスし、ラックでボールをジャッカル。ボールをバックスに回し、自陣からアタックを狙うが、わずかにWTBキニキニラウの飛び出しがはやくスローフォワードの判定。再びNECボールに。

5分、NECは右サイド22mライン付近のスクラムからボールを展開。左サイドをスピードに乗って走り込んだ13番に回すと再びディフェンスラインを突破、一気にインゴールエリアに達し、左中間にトライ。コンバージョンも決まり24対28と逆転する。

リコーは自陣スクラムからキックを敵陣深くに蹴り込むと、蹴り返しがダイレクトタッチとなり、左サイド22mライン間近でのラインアウトのチャンスを得る。これをキープしアタックを仕掛けるが、執拗なディフェンスにあいクイックボールが出せない。隙をうかがいラインブレイクを狙うが、ターンオーバーされ中央をハーフウェイライン付近までゲインされる。ここは相手ノックオンに救われたが、次のスクラムサイドをNO.8ハビリが突進するとサポートが間に合わず孤立気味のアタックとなり、22mライン付近でジャッカルされる。15分、NECはこのボールを18番(LO)が一気にリコー陣内22mライン近くまで運び、パスを請けた22番(CTB)が左中間にトライ。コンバージョンも決まり24対35とリードを広げた。

リコーもチャンスをうかがう。試合再開のキックオフボールのブレイクダウンに勝ちボールを確保すると、FB横山伸一からWTBキニキニラウへのパスが通り、左サイドタッチライン際を走る。ゴールラインに迫るが惜しくもノックオン。NECはゴール前のスクラムからすぐボールを出し、インゴールエリアからタッチキック。これがやや短く、リコーは左サイド22mライン付近のラインアウトのチャンスを得るがこれを活かせず、NECが守りきるかたちに。

リコーは19分、NO.8ハビリが再び自陣から中央を攻め上がるが再び孤立。パスを試みるが通らず、こぼれたボールをNECは拾わず直接キック。これがリコーのアタックラインの背後に落ちると21分、飛び出してきた19番(NO.8)が拾い、そのままゴールまで一直線に走りトライ。コンバージョンも決まり、24対42と突き放す。

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 この後、リコーは次々と選手交代を実施。リザーブメンバーをすべて起用し反撃を試みる。相手キックミスなども出てゴール前まで数度達するも、セットプレーの安定感が取り戻せなかったこともありトライを奪えなかった。34分には自陣22mライン付近のNECのスクラムから展開され、タッチライン際を13番に破られトライを許した(コンバージョン成功)。最後まで必死のディフェンスを見せたが、24対49でノーサイド。

信頼関係を大切に、チームづくりは進行中

 試合後、山品監督はこんな感想を述べた。
「チームの成熟はもう少し先と見ています。だから、結果についてはネガティブに考えてはいません。ラインアウトがとれなかった、スクラムがやられたというのはいい。トラッキング(追い込み方)が悪かったというのもこれからやっていけばいいこと。ただ、プレーの質については、いろいろ思うところはある。やってきた事が雑なところは、よく考えないといけない。本気で止めようとしていたか。ディフェンスにおいてコミュニケーションはとれていたのか」
意識によって高められる質の部分に、改善の余地があると指揮官は見ている。

FL相亮太はこう話す。
「今年はフォワードならフォワード、バックスならバックス、ベースの部分をしっかり積み上げてきています。今日の試合も、トライを与えてはいても完全に崩されたとは思っていない。ベースの部分が積み上げられているからこそ、粘れていたところもあったと思う」
現役時代の山品監督とともにプレーした経験も持つベテランは、今季に懸ける気持ちの強さを漂わせる。敗戦の中にも手応えを感じていた。

この春のオープン戦は4試合というやや少なめの試合数ではあったが、多くの選手に出場機会が与えられ、さまざまな可能性を試していることは明確だった。これについて、遠藤コーチの話が印象的だった。

「スケジュールに余裕があるから、皆にチャンスを与えているというわけではない。選手は全員、十分な力を持っていることを厳しい練習を通し示してくれている。誰もがトップリーグで闘える可能性を秘めていると思っているから、チャンスをつかんでいる」
信頼関係を大切にしたチームづくりが進んでいることが、よくわかるコメントではないだろうか。

この日の試合を終えた時点で、トップリーグ開幕まではちょうど120日となった。8月の夏合宿、9月のプレシーズンマッチとステップを踏みながら、リコーラグビー部はさらなる一体感の醸成に挑むことになる。

(文 ・ HP運営担当)

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