2011-2012 トップリーグ 第4節 対 コカ・コーラウエストレッドスパークス

2011.11.24

フォワードのファイトがあってこそ、チーム全体が生きる

 開幕戦から闘志あふれるプレーでフォワードを引っ張るLO山本健太。
こんな話をしてくれた。
「山品(博嗣)監督には、前半、特に出だし10分から15分は相手を圧倒するプレーをすべき、もうかなわないという印象を刻み込むような激しさを印象づけるように言われているんです。もちろん冷静さを保ちながら。
レオン(ホールデンヘッドコーチ)にも『フィールド外では、どんなにシャイでも構わない。でも、フィールドではアニマルになれ。それがフォワードだ』と言われました。」

野生の本能に従い、無心で相手に勝とうとする動物のように。

「激しさはもともと持っていたけれど、そういう言葉によって、これまで以上に引き出されているとは思います。
(これから昨シーズン上位の相手とも当たっていくが?)フォワードの接点で負けてしまったら、バックスの選手の力をはじめ、チーム全体を生かせる時間は減る。強い相手と渡り合うにはフォワードがどれだけ激しくファイトできるかにもかかっている。もちろん、ペナルティになる激しさではダメですから、そのギリギリを追求しなければいけない。今はまだペナルティになることが多くそれは課題だと思っていますが」

ディシプリン(規律)に関する意識をチームから感じることは多い。オフサイドラインを示す大きなしぐさであったり、ペナルティの後、ライン全体がすばやく10m下がるスピードであったり、オフサイドポジションの選手の大きなアクションであったり、当たり前のことだが、そうしたことがチーム全体で疎かにされていない。
「激しさ」を武器にする上で欠かせない規律意識は、地味ではあるが今シーズンのリコーの大きな成長のように感じられる。

試合開始2分、2人のCTBの切れ味でトライ奪う

photo

 快晴も冷たい風が吹く冬らしい天気の福岡・レベルファイブスタジアム。正午、試合開始の笛が鳴った。

開始間もない2分、自陣右サイド22mライン付近のリコーのスクラムでコカ・コーラが反則。リコーはNO.8のマイケル・ブロードハーストがタップキックしてリスタート。ボールをまわし、自陣から攻めていく。

左中間でCTBマア・ノヌーからCTBタマティ・エリソンにパスが通ると、エリソンは外に向かい角度をつけて走りギャップを突いてゲイン。外をフォローしていたWTB小松大祐にパス。小松は絡まれたが、リコーはボールをキープ、左サイドから2次攻撃を仕掛ける。LO馬渕武史を使いラックの近めを突くと、すぐにボールを出し、今度はSO河野好光からCTBノヌーへ。

ノヌーは右中間から一人飛ばして、右サイドのWTB小吹祐介にフラットで鋭いパス。小吹はすかさずグラバーキック。ボールは相手ディフェンスラインの裏へ転がる。

このボールを拾ったコカ・コーラ最後尾15番が蹴り返す。リコー陣内でSO河野がキャッチし、FB横山伸一(横山伸)にパス。横山伸は中央を一直線に走り相手ディフェンスラインに突入。このブレイクダウンからSH神尾卓志が素早くラックのすぐ左脇のCTBノヌーにボールを出す。ノヌーはパスダミーを入れ、中央付近のギャップに自ら突っ込む。

数人がかりの厳しいディフェンスに遭い倒されるが、その横に走り込んだエリソンに短いパス。このオフロードパスが通りラインブレイク。エリソンはステップを刻み寄せてきたディフェンスをかわすと、スピードに乗って一気にインゴールへ。ポストのすぐ左にトライを決め、小さく人差し指を突き上げる。

リコーは試合が始まって最初のアタックを成功し、速攻でトライを奪った。コンバージョンもSO河野が決め、7対0。

photo

 7分、左中間を攻めリコー陣内に侵入したコカ・コーラに、激しくディフェンスにいったリコーにノットロールアウェイ。30mを超えるほどの距離があったが、コカ・コーラ15番が成功。7対3となる。

コカ・コーラはキックでエリア獲得を狙いながら、ボールをキープしアタックを繰り返す。リコーも厳しくディフェンスし、それを阻む。22mラインの内側にボールを運ばれる場面もあったが、あわてず冷静に身体をあて、それ以上の前進を許さない。

18分、自陣相手ボールのラインアウトで妨害があったとしてリコーに反則。左中間30mほどの距離のキックをコカ・コーラ15番が成功。7対6と1点差。
しかし、リコーもすぐさま反撃に。21分、ハーフウェイライン付近右中間でのパスのキャッチミスによるこぼれ球をWTB小吹が拾いに走った。ラックとなりターンオーバーされかけたが、直後にコカ・コーラにノックオン。スクラムから展開、SH神尾がSO河野へ、河野がギャップを狙いステップを刻み前へ。そこからCTBノヌーにつなぐと一気にディフェンダーが集まる。すかさずCTBエリソン、FB横山伸へとつなぎゲインラインを突破。横山伸は左サイドを快走し22mライン手前で大外WTB小松にパス。まっすぐインゴールへ。リコーが2つ目のトライを奪う。タッチラインすぐそばからの難しい角度のコンバージョンを河野が決めた。14対6。

30分、リコーは右サイドにグラバーキックを蹴られ、ゴール前までゲインされるピンチ。そこもNO.8ブロードハーストが長距離を全力で戻る献身的なディフェンス。5mスクラムからのコカ・コーラの攻撃も、フォワードが踏ん張り得点を許さない。それ以外は多くを敵陣でプレー。マイボールの時間も長く、相手にペースを握らせないまま前半を終えた。なお、35分にFB横山伸に替えて金澤良を入れ右WTBに、小吹はFBに入った。

好調な河野のキック 勝負を決めた金澤 - 小松のホットライン

photo

 後半の入りもリコーが押す。CTBノヌーのギャップを突いてのゲインをきっかけに敵陣へ侵入。一度ボールは失うもFL覺來弦がタックルを決める。こぼれ球を拾ったLO山本健太が突進し一気にゴール前へ。再び相手ボールとなったがリコーが攻撃を続行。右中間22mライン付近でモールを押すと、コカ・コーラにオフサイド。リコーはここでゴールを狙う。5分、SO河野がこの日3本目のキックを成功させ17対6とリードを拡げた。

前半同様ペースを握り続けていたリコーだったが、9分、ハーフウェイライン付近右サイドタッチライン際のブレイクダウンで、ボールを奪われると、コカ・コーラ12番はブラインドサイドのわずかな隙間に駆け込んだ11番にボールを出す。無人のスペースを駆け抜けた11番はそのままインゴールまで走りトライ。コンバージョンも決めて17対13。これまでの過去の闘い同様に、試合は接戦の様相となってきた。

しかし直後の13分、22mライン中央のスクラムでコカ・コーラがバインドを外す反則。絶好の位置でペナルティキックを得たリコーは、SO河野が確実に決め20対13。

7点差と開かれたコカ・コーラだったが積極的にアタックを仕掛け、ここからの時間帯で主導権をつかみにかかる。それを読んだかリコーは16分、PR伊藤雄大に替えて高橋英明、LO馬渕に替えて柳川大樹がピッチに。

互いに勝負どころで反則やミスを誘うプレーが決まり、試合はしばらく膠着状態となるが、後半風上に立ったリコーはキックと蹴り返しに対するカウンターアタックをうまく使い前進。エリア獲得に成功してペースをつかむ。

27分、PR高橋がラック脇のボールを拾い右中間を抜け出して22mライン付近までゲイン。ラックからLO柳川がボールを出し、CTBエリソンを経てWTB金澤につなぐと、金澤がグラバーキック。反応したのはWTB小松。左サイドを駆け上がり、相手ディフェンダーを抜き去るとインゴールでボールに追いつき左中間にトライ。コンバージョンも決め、貴重な追加点を加え27対13とした。29分、リコーはWTB金澤に替えてロイ・キニキニラウ、NO.8ブロードハーストに替えて相亮太、32分にはSH神尾に替えて池田渉を送る。

photo

 残り10分を切っても、コカ・コーラは最後まで攻勢をみせる。36分、ハーフウェイライン付近で、リコーにオフサイド。タッチキックを蹴り、リコー陣内に侵入すると、そこからボールを細かくつなぎ突破口を探る。リコーも冷静に止めていたが、左中間22mライン付近でノットロールアウェイ。コカ・コーラ6番がリスタートすると力強く前進しタックルをかいくぐる。SH池田がライン上で食らいつくが、執念でトライを決めた。コンバージョンも決まり27対20再び1トライ1ゴール差に迫る。

残り3分、リコーは守りに入らず攻め続けた。ラックでターンオーバーし、相手反則を誘うと40分にペナルティゴールを狙う。これは外れたが、ボールを拾ったコカ・コーラのアタックをしっかり止め、最後はノックオンを誘ってノーサイド。

27対20でリコーは接戦をものにした。マンオブザマッチが、WTB小松大祐に贈られた。

目標は高く。決して、、、現状には満足しない

 第1節開幕戦以来の出場となったキャプテンHO滝澤佳之が記者会見に出席。勝利にも表情は厳しい。「勝ててほっとしています。競り合いになるとは思っていましたけれど、リードしているときにもうひとつ攻め切れなかった。守りに入ってしまった時間があったのは反省点」

終始主導権を握りながら、競ったゲームとなった原因を問われると、「チャンスの時の集散が遅かった。一人のいいゲインに対し、サポートが遅かった。相手の集散がよかったシーンもあった」と答えた。

山品博嗣監督も課題を上げる。「目標は高い。現状に満足せずにやっていかないといけない。ここまで4試合を闘い、修正すべきと感じているのはセットプレー、モール、それからディフェンスです。少し受けてしまうと前に出られなくなる。バックスはキック。今日などは特にフィールドの真ん中の方に蹴ってしまっていたので。小さなところを修正しないといけない。実行力ですね。一つひとつのプレーの精度を上げていくこと」

勝利を引き寄せるトライを生んだグラバーキックを蹴った金澤良は、WTBで出場。
「練習はしています。すんなりゲームに入れましたし。セットの位置が違うくらいで、プレーが始まってしまえば、そこまで強く意識せずにできている。外にスペースがあればそこにいなければいけないというのはあるんですけど、流れの中ではそんなに違和感はありません」

トップリーグ4試合を闘って3勝1敗。勝ち点14。トライ数17はトップリーグで3番目。課題のペナルティも39。一試合当たりの数を1ケタに留めている。2週間を空け中盤戦に入るトップリーグで目標を達成する最低条件はクリアしてきたといっていいだろう。だが勝負はここからだ。金澤は言う。

「(チームとしてのここまでの出来は?)。いいところも悪いところもある。70点くらいかな。次のNEC戦、どこまでやれるかで今のチームの力が計れると思うし、この先が見えてくると思います」

次節、12月3日(土)12時~秩父宮ラグビー場でのNECグリーンロケッツ戦。わずか5点差ながら、昨シーズン日本選手権出場を阻まれた相手へのリベンジ。どこまでやれるか――。2週間のインターバルを経て、さらに研ぎ澄まされたブラックラムズ。目標達成に向けて挑み続けるスピードは、さらに加速する。

(文 ・ HP運営担当)

PAGE TOP