2011-2012 トップリーグ 第9節 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

2012.01.13

一年前、高知で味わった悔しさをぶつけたゲーム

 リコーにとって昨シーズンの神戸製鋼コベルコスティーラーズ(神戸製鋼)戦は、忘れられないゲームだった。同点で後半40分経過のホーンを聞き、ボールをキープしながらも勝利を目指し攻めた結果、勝ち越しトライを許し敗れた。

「毎日の積み重ねをやめないこと」

昨シーズン敗れた試合後、勝ちきるために必要なことは? という問いにSO河野好光はそう答えた。トップリーグ第9節・神戸製鋼戦は、あの日からのリコーの積み重ねを確かめる一戦とも言える。

「ディフェンスもアタックも、特にセットプレーもいい。序盤で取りこぼしているけれど、今シーズンの神戸製鋼は例年以上にいいチームだと分析しています。つまり、簡単には勝てない相手。
自分たちは、いい練習ができています。昨日は練習で高いコンタクトレベルを求めたのですが、メンバー外の選手がそれにしっかり応えてくれて、実戦以上にハードなトレーニングができた手ごたえはあります。タイトな試合になると思いますが、選手たちはやってくれるでしょう」
試合の前々日、午後の練習を終えた山品博嗣監督の表情には、準備は済ませたという気持ちが満ち溢れているようだった。

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 14時、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場に試合開始の笛が鳴り、神戸製鋼のキックオフで試合が始まる。互いに激しくコンタクトしていくと同時に、バックスは隙を見てキックを蹴り込みエリアを獲りにいく。メリハリの効いた緊張感ある立ち上がり。

最初のチャンスは神戸製鋼。3分、ボールを回すリコーのパスがやや高く体が起きたところに神戸製鋼のディフェンスが一気に襲いかかりターンオーバー。左サイドハーフウェイラインから10番がゴロキックをライン裏に転がす。ボールはゴールライン目前まで転がり、これに赤いジャージが迫ったが、この日FBに入ったタマティ・エリソンが冷静に拾う。プレッシャーも意に介さず、大きく蹴り返し難を逃れた。その後は互いに正確なディフェンスを見せ、22mライン付近でボールを奪いあう一進一退が続く。

9分、リコーは左中間自陣22mライン手前のラックからこぼれたボールにSH池田渉が飛びつき、さらにLOカウヘンガ桜エモシが寄せてターンオーバー。池田が右に展開し、SO河野が右中間のギャップを自ら走る。ステップで一人かわすとハーフウェイラインを越えたところで右サイド大外のWTBマーク・リーにパス。リーは敵陣22mラインを越えてゲイン。ここでつかまったが、ボールをつなぎリコーはアタックを継続。しかし、神戸製鋼のディフェンスラインが整うと、スローな展開を余儀なくされ、フェイズを重ねるもジリジリと押し戻される。結局、アクシデンタルオフサイドで神戸製鋼ボールとなった。

13分、神戸製鋼ボールのラインアウトを奪い、左サイドからWTB小吹がキック。神戸製鋼の、14番の前に落ちるが手につかずノックオン。リコーは22mライン内に侵入。しかし、左中間のスクラムからのアタックは激しいディフェンスに遭い、密集でターンオーバーされた。

敵陣でのプレーを継続、厳しい神戸製鋼のディフェンス

 17分、リコーNO.8ジェームス・ハスケルがジャッカル。FBエリソンがキックで神戸製鋼陣内22mライン内に蹴り込み、WTBリーとともにチェイス。プレッシャーを受けた11番はボールを拾うとその場でタッチライン外へ蹴り出す。マイボールのラインアウトを得て、リコーは再びチャンスを迎える。

ボールをキープし、リコーは繰り返しアタックを仕掛けていく。だが、神戸製鋼は隙を見せず、特にスクラムでは猛烈にプッシュをかけてきた。

しかし26分、左中間22mライン付近のラックで神戸製鋼がハンドの反則を犯すと、リコーはゴールを狙う。静まりかえったスタジアム、SO河野が確実に決めて3対0と先制した。

このゴールで試合が動き始める。自陣右中間10mライン付近のスクラムからボールを出したリコーにノックオン。神戸製鋼はスクラムから展開しアタック開始。縦への攻撃を繰り返し、激しく突破を図っていく。ここでリコーにノットロールアウェイの反則。タッチキックを蹴った神戸製鋼に右サイドゴール前ラインアウトのチャンス。

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 競らずモールに備えたリコーだったが、神戸製鋼はディフェンスが待ち構えたゾーンからほんの少しずらした場所でモールをつくり一気に押す。右中間を前進し、そのまま8番が持ち込んでトライ。コンバージョンも決まり3対7。神戸製鋼が逆転した。

この後39分、ボールを回し攻め上がった神戸製鋼に対し、中央15m付近でリコーがオフサイド。ペナルティゴールを決められ3対10と点差を広げられ前半を終了。

後半開始早々、カウヘンガがゲイン、ノヌーがフィニッシュ

 後半開始。敵陣に侵入するも攻めあぐねたリコー、少ないチャンスでトライを挙げた神戸製鋼という前半の図式は、いきなり変わる。

後半1分、リコーのキックオフボールを22mライン間際でキャッチした神戸製鋼7番が、迫ったリコーディフェンスのギャップを抜け、ハーフウェイラインまで右中間をゲイン。外をサポートした8番へパスするが、これがこぼれリコーがターンオーバー。
逆にリコーはLOカウヘンガが、自陣左中間から中央に向かって走り、敵陣22mライン間近までビッグゲイン。

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 中央でラックをつくると、ここで神戸製鋼に倒れ込みの反則。SH池田がすかさずリスタートすると、左を走っていたCTBノヌーへ。ノヌーは目前の9番と1番の間のギャップを突く。1番をハンドオフすると、そのまま走り左中間へ来日2つめのトライを決めた。コンバージョンも決まり、10対10の同点とした。リコーに流れを引き寄せた。

リコーはこの後も攻勢し続けた。キックオフボールを確保すると、CTB山藤史也、FBエリソンらのビッグゲインで神戸製鋼ゴールに迫った。神戸製鋼も前に出てしっかりプレッシャーをかけはじめ、ペースを取り戻す。試合は互いにボールを動かしたアタックをしっかり受け止め、ターンオーバーする見応えある展開となっていく。

リコーは、神戸製鋼の自陣10mライン付近のラインアウトからのモールに、コラプシングの反則。神戸製鋼はタッチキックでリコー陣内に攻め込み、ボールを回しながらフェイズを重ね前進していく。22mラインを越え中央でラックをつくると10分、フォワードで繰り返した縦の突進から、目先を変えるように左に展開、大外の11番で左隅にトライを奪われた。コンバージョンは外れたが10対15と勝ち越した。

リコーは直後に獲り返す。キックオフボールの落下地点のラックから、神戸製鋼がボールを出し蹴ったキックがダイレクトタッチに。リコーは左サイド22mラインの内側でラインアウトを得ると、これをキープし展開してアタック。13分、CTBノヌーが中央を突き、ゴール目前にポイントをつくるとSH池田がすぐさま左へ。ボールを得たFL覺來 弦がパスダミーを入れ外すと、サポートしたLO柳川大樹とディフェンダーを引きずって前進。ライン上にラックをつくると、池田が外のLOカウヘンガヘパス。カウヘンガは左中間インゴールエリアへ達しトライ。角度のあるコンバージョンもSO河野が決め、17対15と逆転に成功した。

試合はトライの応酬となる。神戸製鋼は直後の16分、左サイド22mライン手前のラインアウトからアタック。中央22mライン付近にラックをつくると、縦の突進を繰り返す。替わったばかりの16番がダウンボールされたボールを拾うやいなや、目前のギャップを抜け、ゴールラインを越え左中間にトライ。コンバージョンも決まり17対22と神戸製鋼は再逆転する。このトライ後にもみあいが起こり、不行跡で神戸製鋼5番が10分間の一時的退出を科された。

20分、ペナルティキックとしてのキックオフで試合再開。タッチラインの外へ蹴り出し、マイボールのラインアウトを得るが、これが乱れノックオン。さらにスクラムでヘッドアップの反則を犯し、チャンスを逃した。リコーは22分にHO滝澤佳之を森 雄基、NO.8ハスケルをマイケル・ブロードハーストに、24分にはWTBリーに代わって横山伸一がピッチに立った。

25分、リコーはハーフウェイライン付近のラインアウトから展開。左サイドから右サイドへ。再び右サイドへボールを戻すとFBエリソンが自ら仕掛けゲイン。さらに攻撃を継続し、LO柳川、NO.8ブロードハーストらが縦に突進し、さらに右サイドをカウヘンガが抜け、内のWTB横山伸にパスを出すもノックオン。スクラム、タッチキックを経てラインアウトから再びアタックを仕掛けたが、ハンドリングミスでゴールには迫れず。28分に神戸製鋼5番がグラウンドへ復帰し、15人同士の試合に戻る。

リコーは29分にFBエリソンに替えてロイ・キニキニラウが入り、右のWTBに。左のWTB小吹がFBに回り横山伸が左のWTBに入る。
30分、神戸製鋼の自陣スクラムから下げて蹴ったタッチキックがダイレクトタッチに。リコーは右サイド22mラインの内側でラインアウトを得る。これを列後方でFL覺來に合わせ、そのそばに走り込んだWTBキニキニラウに、SH池田がパス。キニキニラウが力強く前進し、さらにその脇をサポートしたCTBノヌーに素早くオフロードパスをつなぎ、ノヌーがさらに前へ。中央ゴール前のポイントから左へ展開。SO河野、FB小吹、最後は大外のWTB横山伸が左隅に飛び込んだ。31分、ついにリコーが同点に追いつく。

SO河野がコンバージョンキックを低い弾道でコントロール。ボールは、クロスバーに当たり大きく弾んでその向こう側へ。積み重ねた思いでねじ込んだかのようなキックで、リコーは勝ち越した。24対22。

電光石火、横山伸一がディフェンスラインを切り裂く

 勝ち越しても、攻める気持ちは失わないリコーは、左中間自陣10mライン付近でスクラムを得ると、NO.8ブロードハーストが持ち出しショートサイドをゲイン。ポイントをつくると展開攻撃で神戸製鋼ディフェンスを崩しにかかる。横山伸が、覺來が、川上が、河野が、ノヌーが、キニキニラウが、鋭く、強くディフェンスラインに挑んでいくと、アウェイ・神戸の地に、何度も何度もリコーコールが響く。

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 しかしラックからボールが神戸製鋼にこぼれてしまう。SH池田の鋭いチャージをかわしながら、神戸製鋼10番がインゴールエリアから蹴ったボールを、右サイド22mライン付近でFB小吹がキャッチ。ボールはWTBキニキニラウを経て中央のWTB横山伸へ。激しい連続攻撃が効き、横山伸はゴールポスト目指してさらに加速する。前だけを見て、小さくステップを切りながらゴール前のディフェンスをかわす電光石火のランだった。次の瞬間、ゴール下へ飛び込んだ。勝利を決定づけるトライとなった。コンバージョンを河野が決めて7点を追加、31対22。

ホーン後に神戸製鋼がフォワードで意地のトライを決めたが、リコーは31対27では2004-05シーズン以来となる神戸製鋼からの7年ぶりの勝利を奪取した。マンオブザマッチは、ゲームメイク、鋭い仕掛け、5回のキックをすべて決めた河野好光に。

「前半は最後の10分、2回ほど集中力が切れましたが、リコーのほうがいいラグビーをしていたと思います。ハーフタイムには、もう少しダイレクトにプレーしようと話しました。ワイドにワイドに行き過ぎていたところもあったので。
後半はスクラムを支配できていたのが大きかったと思います。それが前にいく勢いをつくりだしていました。最後まで気持ちを切らさなかったメンバーたちを、私は誇りに思います。今日はお互いハードにプレーした試合でした。
残り4試合。すべて大事な試合ですが、一試合ずつ大切に、練習で積上げたことを発揮できるよう、こだわって挑みます。自分たちでコントロールできるところをコントロールすること。ディシプリンなどでしょうか。そうすればおのずと結果はついてくるはず」
レオン・ホールデンヘッドコーチは、選手たちを信じ、その先の目標達成も信じ続けていた。

「若いチームだけに、とにかく勝ち切る経験が必要」と常々言ってきたSH池田渉。最後まで大きな声で指示を出し続けた。3度目の対戦でつかんだリコーのSHとしての神戸製鋼からの勝利を喜び、大きな手ごたえを感じていた。
「後半は接点でのレベルをひとつ上げようと話しました。それと、自分たちが神戸製鋼対策としてやってきたことを、シンプルに表現するということ。後半最初のトライを獲ったあたりからテンポよくいけて、それに対するリアクションもとれていたので、この調子でいけば結果はついてくると思いました。
最後(4つめのトライを奪った後)、ひとつのセオリーとしてフォワードで行くという判断があって、自分はそれを選んだんですけど、SO河野がボールを求めていたんです。さっき話したのですが、数的有利な状況があったんです。結果的にはそれを信じて出すべきだったと反省しています。それでも勝点5を獲ったということを喜びたいです。今日は」

「今シーズンはサテライトの試合に出場することも多い。トップリーグでやるときは、メンバーに入っていない30人の思いを背負ってプレーしないといけないと思っている。昨シーズン、最後に勝ち越された場面に自分も関わっていたので、やってやるしかないと」
途中出場して2トライを決めた横山伸一は、喜びながらも、冷静に次を見すえているように見えた。

「なんといっても、少ないチャンスを実行力高く、フィニッシュまでもっていったところ。前半は26分くらいまでほとんど敵陣でプレーしていたけれど、チャンスというチャンスはそんなになかったですから。ゲインを切ったあと、1フェイズ、2フェイズで仕留めるという、実行力の高さを見せてくれたなと思っています。
来週も絶対負けられない大きな試合になる。インターバルは短いですが、やるべきことはやってきたので、まずはコンディションを整えて」
人一倍に選手を大切にして信じ続ける山品監督。期待に応えた選手たちを評価した。

階段を一段ずつ登っていることを証明し、これからの試合のドラマを予感させるゲームだった。トップリーグも残り4試合。1月15日(日)は東京に戻ってNTTコミュニケーションズシャイニングアークスとの大一番。
山品監督の言葉通り、大きな試合となるはずだ。激戦を闘いながら成長するリコーブラックラムズ。歓喜の輪を全員で創りあげるために、ブラックラムズは、さらに厳しく、険しい壁を乗り越える。

(文 ・ HP運営担当)

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