2012-2013 トップリーグ 第4節 対 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2012.09.24

一丸となって試合をコントロールした前半、あと一歩でトライを逃した

 トップリーグ第3節を終え3敗。勝ち点も挙げられない厳しい状況下でもがき、自分たちのラグビーを形にするための何かをつかもうと必死に戦うリコー。
第4節、昨シーズンはドローで終えたNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(NTTコム)との一戦は、結果が求められるゲームであることは誰の目にも明らかだった。

「ファイナル(決勝戦)という意識で」(山品博嗣監督)という言葉。そしていつもよりすこし長く、試合開始の直前までタックルの練習を繰り返しウォーミングアップからもその思いは強かった。

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 CTB河野好光のキックオフで試合開始。返しのタッチキックからのラインアウトを奪ったNTTコムがアタック。これをしのいで5分、リコーは自陣のラックでこぼれたボールをNO.8野口真寛が拾い、素早くアタック。FLのマイケル ブロードハースト、カウヘンガ桜エモシが密集の近場を突きディフェンスラインを崩していくと、SH神尾卓志がラックサイドにできたギャップを抜けてビッグゲイン。敵陣に侵入し22mラインまであと少しの位置まで攻め込んだところでタックルを浴びノックオン。

ここからリコーの時間となる。NTTコムはスクラムより移行したラックからボールを出すのが遅れる反則。リコーボールのスクラムに。展開し右サイドでWTB星野将利が倒れず粘りポイントをつくると、SH神尾が駆けつけ左サイドに展開。CTB河野のゴロキックがタッチを割りゴール前のラインアウトに。11分、NTTコムがキープし、蹴り込んだキックをWTB小松大祐がキャッチ、FB小吹祐介にパスすると左中間5m付近からドロップゴールを狙う。これはやや弾道が低くはずれた。
ドロップアウトからSO津田翔太のタッチキックで再びゲインし、その後も蹴り合いに勝ち、試合をコントロールし続ける。

ハーフウェイライン付近のラインアウトで反則し、NTTコムのクイックタップからのアタックを浴びるが、これを止めカウンターラックでボールを奪いにいくとNTTコムにオフサイド。タッチキックで再びボールを敵陣に戻すと15分、リコーは密集の近くを縦に突く連続攻撃であっという間にゴール前に迫る。あと一押しの位置まで押し込むと右中間から展開、左中間からSO津田翔太がキックパスをFB小吹に通そうとしたが、惜しくもフェアキャッチされた。

さらに強い意志も持って攻め続けるリコー。ラインアウトの反則で得たマイボールスクラムから、NO.8野口がサイドを突きゲイン。再びフェイズを重ね前進していく。NTTコム陣内中盤に入ると、右中間から右隅へCTB河野がグラバーキックを蹴り再びゴールに迫る。ラインアウトからモールに。

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 22分、これをグッと押し込むとNTTコムはボールを出しキック。これをキャッチしたWTB星野からボールを受けたFB小吹が、最後方から右サイドへカウンターアタック。右サイドのポイントから怒涛の攻撃でゴールに迫る。中央でSO津田からのパスを受けたCTBワイナンド オリフィエが角度を変えて突入しゲイン。残り5mのラインを越えるが、NTTコムも必死のディフェンス。ポストにNTTコムのディフェンス選手の身体が触れ、前後左右に何度も揺れた。ラックでボールが動かなくなって正面やや左の位置からリコーのスクラムで試合再開。

再びNO.8野口が持ち出しサイドアタック。激しいタックルでやや押し戻されたが、ボールをキープし右へ。FLカウヘンガらが右中間を突きゴールに迫る。オープンサイドに出して中央を攻めるとNTTコムに倒れ込みの反則。26分、リコーはCTB河野がペナルティゴールを狙って成功、3対0と先制した。サイドアタックで負傷した野口に代わり相 亮太がピッチへ。

直後、自陣のディフェンスでオフサイドを犯し、正面約40mの位置からペナルティゴールを狙われたがはずれた。リコーはその後もブレイクダウンでよくファイトした。テリトリーを広く保って試合をコントロール。35分にはLO山本健太の中央の突破から展開、左サイドをWTB小松が突くとNTTコムにハイタックルの反則。36分、角度のあるペナルティゴールをCTB河野が決めて6対0。リードを広げた。

前半終了間際、ハイパント処理後にできた自陣のラックで手を使い、ペナルティゴールを返されたが6対3とリードして試合を折り返した。

後半の入り、確実にスコアしたNTTコムが逆転

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 後半、リコーはPR柴田和宏を高橋英明に交代しスタート。入りはNTTコムが攻勢をかける。自陣でリコーのランナーに激しく絡みノットリリースザボールを獲ると、タッチキックでゲイン。ラインアウトから12番の突破でリコー陣内に深く攻め込み、左中間でFW戦を仕掛ける。激しいアタックに対抗しリコーがラック周辺に人数を割くと、右の完全に数の余ったBKに展開。5分、14番が右中間にトライを決めた。コンバージョンははずれるが、6対8とNTTコムに逆転を許す。

さらにNTTコムが攻勢をかける。テンポのよいアタックを継続し前進していく。リコーはゴール前の反則で一度アタックに転じたが、自陣10mライン付近のラックからブラインドサイドにボールがこぼれる。これを一瞬SH神尾が見失った瞬間、素早くさらわれ、再び攻め込まれる。ゴール前で繰り返しアタックを浴びたが、リコーは必死にタックルを繰り返しトライは阻止する。しかし14分、ゴール前のラックでオフサイド。NTTコムは正面やや右からペナルティゴールを決め6対11と点差を広げた。リコーはここでCTBオリフィエをロイ キニキニラウに交代し11番の位置に。小松がCTBに入った。さらにSH神尾を池田 渉に交代。

リコーは17分、LOブロードハーストが縦の突破でゲイン、21分には自陣でこぼれ球を拾ったWTB星野将利がギャップを抜け加速、一気にゲインするなどして個の力を見せたが、いずれも単発のアタックに終わりチャンスに結びつけられなかった。

逆に23分、リコーは自陣深くに蹴り込まれたボールの処理でLOカウヘンガがゴール前でノックオン。さらにチェイスしてきた選手とのこぼれ球の奪い合いでミスと反則が重なり、リコーはまたもペナルティゴールを決められ、6対14となる。リコーはSO津田に代えて山藤史也を入れCTBに、河野がSOに入った。

リコーの果敢なアタックは続く。29分、キャプテン小松が抜け出しハーフウェイラインを越え左中間にポイントをつくると右へ展開。LOカウヘンガが右サイドを突く。タックルを受けボールはタッチラインを割ったが、ラインアウトからのこぼれ球をNO.8相が拾い中央のギャップを突く。さらにつなぎCTB河野が背面を通すパスを出しWTBキニキニラウで左サイドの突破を狙った。

30分を過ぎるとリコーが主導権を握る。22mライン手前のラインアウトから、WTBキニキニラウ、LO馬渕武史、CTB山藤らが突破を狙っていく。フェイズを重ね少しずつゴールに近づいていったが、こぼれ球を拾われキックを蹴られる。しかしこれをキャッチしたキニキニラウからパスを受けた小松が鋭くギャップを突く。つかみかかるディフェンスの選手をはらいのけながらも、体勢を崩さず、スピードを上げゴールまで15mに迫る。さらにアタックを継続しNO.8相が縦に突く。だが激しいタックルを浴びボールがこぼれた。しかし一旦はボールを渡したが再度アタックを仕掛けたリコーは、中央を激しく攻めハイタックルを誘う。37分、ペナルティゴールを決める。リコーは5点差にして最後のアタックでの逆転に懸けた。

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 キックオフボールを確保し、フェイズを重ねてNTTコム陣内10mライン付近までゲインしたが、乱れたパスを、体勢を崩しながら拾ったSO河野に相手7番が襲いかかりノットリリースザボール。ボールがNTTコムに渡ると、すぐにホーン。タッチキックで得たラインアウトをキープし、ボールを蹴り出しノーサイド。リコーはボーナスポイント(7点差以内の敗戦)1は得るも、今季初勝利は次戦以降に持ち越された。

崖っぷちで努力を続けていると、壁を壊すための「これをやるしかない」ってところが見えてくる(NO.8相 亮太)

SH池田 渉

「後半、チームの中で、特にアタックにおいてディシプリン(規律)に問題が出て、チームが一丸になるという部分で欠けているところがありました。(規律の乱れは焦りから?)今日の試合についてはそうですね。前半はいいアタックを見せていてそういう部分はなかった。後半逆転されてスコアをしなければというところから起きたと思う。
(前半はトライに迫りながら獲れなかったことを、どう捉え後半に臨んだか?)やろうとしていることはうまくいっていた。最後の一押しについては、もう少し簡単に攻めてもいいところもあったので、シンプルにスコアできるところはして、しっかり獲りきろうと。獲れなかったから何かを変えるというよりも続けようと話しました。(いま、すべきことは?)まず、やっていることを疑ってはいけない。ある意味では今までと変わらず、精度の高い練習を、むしろ強固にやっていくこと。何も変える必要がないと思う。ここまで勝ち点がとれていなかった中、1ポイントが獲れた。少しだが前に進めたことは確かなことだ」

FLカウヘンガ桜エモシ

「今日はミスも出てしまい負けてしまったが、チームとしては毎試合すこしずつよくなっている。次の試合までの2週間で切り替えて、必ず勝ちたい。たくさんのリコーファンの皆さんの応援に応えるために全員で、この局面を乗り越えて頑張っていくしかない」

NO.8相 亮太

「追いつけそうな点数のスコアボードが目に入る。なんとかしてやろうと思うがあまりに、チームとしての枠から少しずれたプレーが出はじめてしまったのかもしれない。特に、後半のはやい段階で点を獲られ、さらに2本目のペナルティゴールを決められて1トライ1ゴールでは届かない8点差になったころから。
チームとしての準備はできていると思う。プロセスはよかったと思う。ただ最後。そこで終わってしまっているのかもしれない。その一歩先にいこうという意識。激しくやれている。ただ、もうちょっと。
でも、僕は壁が割れるような気もしているんです。こういう苦しい経験をして崖っぷちで努力を続けると、壁を壊すための「これをやるしかない」ってところが見えてくる。自分はリコーでトップリーグ降格というつらい体験をした一人。その後チームが力をつけていく姿を体験してきましたが、そういう瞬間が何度かありました。だから、なんとかもう一度壁を壊したい」

 4戦を終えて4敗という結果は非常に重い。
前半のラック回りの身体を張ったディフェンス、スピードに乗った連続攻撃は、選手たちの自分たちのラグビーへの誇りと、強い気持ちが感じられるものだった。昨年も一昨年も、敗戦が続く厳しい状況はあった。だが、試合後の選手たちの口々から聞こえてくる声は、そのときとは比べられないほどポジティブ。「スピードラグビー」構築のために、自分たちのラグビーを創りあげるために皆、自信に満ちている。

次節まで、2週間のインターバル。
10月6日(土)12時から行われる福岡サニックスブルース戦では、焦りから解き放たれ、磨いてきたスキルと組織力、そして自信が噛み合ったゲームで、相の言う「壁を壊す瞬間」を見せてくれることを期待したい。
この2週間でもう一度、全員が仲間を、そして自分自身を信じて練習に臨む。そして積上げたものを全て信じて、ゲームでそのまま発揮するだけ。

福岡サニックス戦は、今年のトップリーグを左右する大事なターニングポイントの試合となるに違いない。

(文 ・ HP運営担当)

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