2013-2014 トップリーグ 1stステージ第6節 対 クボタスピアーズ

2013.10.24

基本を徹底し「リコーのラグビー」の正確な実行に懸けた第6節

 トップリーグ1stステージも残り2戦。大方の予想通り、上位4チームが進めるグループA入りへの争いは、勝ち点1の差が大きく影響する混戦となった。なんとか望みをつなぎそこに名を連ねたリコーは、前節からの2週間のインターバルの中間にキヤノンイーグルスとのオープン戦を実施した。

チームとしてのオーダーは「勝ちへのこだわり」。選手はそれに見事に応えた。前半は同点で終えたが、後半の勝負どころで確実にトライを獲り勝ち越す。終盤の反撃にも集中力を切らさず、失点せず抑えきった(34-17)。キャプテンの小松大祐も前半40分間に出場し、トライを決めチームを牽引した。

この日のキヤノン戦と同様に、ここまでのトップリーグ5試合いずれにおいても、リコーが自分たちのやりたいラグビーを見せる局面はあり、その時間帯は試合を見事にコントロールしていた。それでも結果が伴わない歯がゆい状況の中で、神鳥裕之監督は基本への立ち返りに徹した。
「この2週間、地味な練習も多かったと思います。1対1での対応やボールのプレイスメント(置き方)のようなベーシックなスキルを確認しました」

結果に心乱すことなく、自分たちが目指してきたラグビーを信じ抜く。そんな覚悟の下、リコーは第6節・クボタスピアーズ戦に臨んだ。

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 朝から降り続ける雨の中、地元の高校生ラガーマンなど2,000人を越える観衆を集めた新潟県新発田市の五十公野公園陸上競技場。14時、試合開始のホイッスルが響く。

SO河野好光のキックで試合が始まる。このボールを確保した今季トップリーグ初出場のWTB小松大祐がゲインし、リコーは敵陣でアタックを見せた。

悪天候時の定石に従い、縦の突進から素早いサポートでボールをキープ。フェイズを重ねていくとディフェンスするクボタにノットロールアウェイの反則。中央5mラインを越えたあたりからタッチキックを蹴ったリコーは、左サイドゴール前ラインアウトのチャンスを得る。

これを確実にキープ。すかさずモールをつくりフォワードが全力で押す。今シーズン、リコーが手にした新たな武器でトライを奪いにいく。クボタも必死にディフェンスしラックになるが、サイドのギャップをHO森雄基が抜け、ボールをゴール間近まで運ぶと、さらにたたみかけ2分、NO.8野口真寛が左中間にトライを決める。コンバージョンはFBピータース ダニエルが決めて7-0とリコーが先制した。

前節に続き試合の入りに成功したリコーは、前に出てクボタのアタックを止め、ノットリリースザボールを奪いペナルティキックで前進する。

再びラインアウトモールで押すがアクシデンタルオフサイドでクボタボールのスクラムへ。しかしこのスクラムを押し勝ち反則を獲ってリコーのスクラムになる。左中間22mライン付近から中央に持ち出し、この日初先発のSH山本昌太がライン裏にキック。CTBリキ フルーティが飛び出し押さえにいくが、インゴールが狭めだったこともあり届かず。この後、クボタのドロップアウトをリコーがチャージし再びゴールに迫り、再びライン裏へのキックを試みたが、ここも惜しくもトライは生まれなかった。

10分過ぎからは互いにキックを蹴りエリアの取り合いとなったが、SO河野、CTBフルーティ、FBピータースらが冷静に処理し、うまく自陣から脱出していった。

15分にはWTB星野将利がギャップを縫うように走りゲインし敵陣侵入、さらにSO河野のハイパントがキャッチミスを誘い22mラインの内側でスクラムを得る。スクラムを押しモールになるとこれを崩そうとしたクボタに反則。リコーは再びゴール前ラインアウトからトライを狙ったがペナルティを犯しチャンスを逸した。

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ラインアウトやスクラム、ブレイクダウンでの寄せなどでは優勢を保ちつつもスコアを逃すうちに、クボタのプレーにもリズムが生まれ出す。23分にはハーフウェイライン付近でアタックを見せるとリコーにノットロールアウェイ。ペナルティキックでリコー陣内に攻め込んだ。その後フェイズを重ねリコー陣内でこの試合で初めての攻勢を見せる。しかし粘り強いリコーのディフェンスに遭いノックオン。

22mラインの内側のスクラムからリコーはキックで前進。さらにラインアウトを奪いアタック。クボタがホールディングの反則を犯すとゴール前に蹴り出し再びラインアウトにする。相手のミスと反則に付け込んでまたとないチャンスをつくるが、右中間を攻めたところでノックオン。この後相手のうまいタッチキックが出て、自陣22mライン付近に押し戻された。31分、フォワードが円陣を組んで気合いを入れ直し臨んだラインアウトをキープし、再びエリアを取り戻した。

しかし38分、リコーの中盤でのアタックを受け切ったクボタは自陣でターンオーバー、キックを蹴り込む。リコーはFBピータースが蹴り出し自陣5m付近でクボタにラインアウトを与える。クボタが中央を攻めるとリコーは自陣中央ゴール前でオーバーザトップの反則。クボタがペナルティゴールを難なく決めて7-3。最後にスコアを許してしまったが、終始主導権を渡すことなく試合を進めたリコーがリードして試合を折り返した。

パス回し大外使ったクボタが、1対1に勝ち逆転トライ

 後半に入っても雨足は衰えない。照明に灯りが入り、激しく降る雨が客席からもよく見える。

前半試合をコントロールしたリコーは、メンバーチェンジなしで後半に臨んだ。ハーフウェイライン付近のクボタボールのラインアウト後のディフェンスで、リコーがホールディング。ペナルティキックを蹴られ、リコーは自陣22mライン手前まで前進を許す

右サイドのラインアウトからクボタが連続攻撃。リコーもうまく対処し、接点で食い込ませない。22mライン付近でアタックを受け止めた。しかしボールを奪いにいったリコーにノックオンが出て、右中間22mラインを超えたあたりでクボタのスクラムとなる。直前のアタックではラックの近場を攻めていたクボタだったが、一転スクラムから長いパスをつなぎ展開。リコーもこれをよく見て、ディフェンダーがスライドして右サイドに詰めていく。

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 だが、スピードに乗った11番が一瞬速く左サイドをえぐり突破。左隅に飛び込んでトライを決める。角度のあるコンバージョンにも成功。7分、7-10とクボタが逆転する。

トライは獲られたものの、冷静なディフェンスを見せていたリコーはばたつくことなく、直後のスクラムで押し勝ちペナルティキックで攻め込む。高い位置でキャッチするラインアウトで確実にキープし、22mライン付近でアタックする。クボタのディフェンスが激しく前に出てくるのを見て、SO河野がゴロキックでタッチに出し、ゴール前クボタのラインアウトとなる。

キープ後、蹴り込まれたボールをキャッチしてリコーがカウンターアタック。中央をWTB小松がゲインし、CTB山藤史也にパス。左中間にポイントをつくり中央に戻すと、ラックサイドをSH山本が俊敏に抜けてゲインする。22mラインに達するとクボタがペナルティ。15分、リコーはタッチに蹴り出し、右サイドゴール前ラインアウトからトライを狙う。
リコーはここでCTBリキ フルーティを徳永亮に、WTB星野将利を今季初出場のロイ キニキニラウに交代する。

ラインアウトをキープし、キニキニラウが近場を縦に突く。パワフルな前進に会場が沸く。さらにつないで徳永らが中央で仕掛けるが、ディフェンスに捕まりノットリリースザボールの判定。決定的なチャンスを逃したが、ペナルティキックを蹴り出した後のラインアウトでクボタがノットストレート。敵陣左中間22m手前でスクラムを得たリコーは、展開し右サイドをWTBキニキニラウが突く。しかし惜しくもノックオン。スクラムからキックを蹴られリコーは自陣に押し戻された。

TL通算100試合出場を達成したSH池田渉のパスがトライ生む

 22分、ハーフウェイライン付近のラインアウトからクボタがアタック。うまく攻め込み22mライン手前まで前進するが、ノックオンが出てリコーのスクラムに。23分、リコーはSH山本に替わってこの試合がトップリーグ100試合目の出場となる池田渉がピッチへ入る。

スクラムに池田がボールを入れるが、リコーにペナルティ。25分、左中間から20mほどのペナルティゴールに成功したクボタが、7-13とリードを広げた。攻め込むがスコアできないリコーと、1度のチャンスをスコアにつなげるクボタが対照的だった。

30分、リコーはハーフウェイライン付近でペナルティキックを得るとタッチに出し左サイドゴール前ラインアウトからトライを狙う。試合を通じラインアウトの安定は保たれ、ここでも高く、遠くに合わせゴール正面に近い位置でモールを組むがクボタがペナルティを犯しながら止める。

リコーはもう一度ラインアウトにして粘り強く攻めていく。展開し、右サイドでFBピータースがゴロキックを蹴り、WTBキニキニラウが押さえにいくが一瞬はやくボールに触ったクボタのディフェンダーがノックオン。

右サイドゴール前のスクラムからリコーが攻める。クボタのペナルティでアドバンテージが出ると、思いきって展開し今度は左サイドを攻める。これは止められたが、右中間のリコーのスクラムから再開。

36分、この右中間のスクラムをリコーはスクラムトライを予感させる圧力で押す。スタンドから歓声が沸き、守るクボタにまたも反則。レフリーの腕がリコーサイドを指しアドバンテージが示された瞬間、SH池田はブラインドサイドのWTBキニキニラウに出し、右隅にトライ。リコーは土壇場で12-13の1点差に迫る。

入れば逆転、しかしかなり厳しい角度のコンバージョンは、滞空時間の長いボールが程良い距離感で飛んだが、惜しくもはずれた。リコーは勝利のためには残り3分でのスコアが必要となった。

リコーは相手がこぼしたボールを得たキニキニラウが右中間を走り、自陣からゲイン。敵陣に入ってすぐでポイントをつくり展開。しかし、少し下げてのパス回しでノックオン。リコーは押し勝ってペナルティを獲るしかない自陣のスクラムにすべてを懸ける。しかし、スクラムが回転しリコーに反則の判定。

40分、リコー陣内左中間5mラインを過ぎたあたりからクボタがペナルティゴールを狙う。キャプテン・WTB小松の「まだ諦めるな!」と叫ぶ声が響き、キックがはずれた場合に備えるリコー。だがボールはポストの間を射抜き、ゴールと同時に試合は終了。リコーは12-16で4敗目を喫し、シーズン後半の2ndステージをグループBで戦うことが決定した。

なお、後半23分より出場しトップリーグ通算100試合出場を達成したSH池田にを称えるセレモニーが試合終了後に実施された。

「変わろうとしている姿や、勝とうとする気持ちが伝わるプレーをしていく」(WTB小松大祐)

神鳥裕之監督

「前節の近鉄戦からの反省としては、試合を通してよくやってくれたと思う。勝負どころでのミス。この先しっかり直していかないといけない課題。
近鉄戦と同じように前半の始め、いいところでトライが獲れて、もう1つ2つしっかり獲れていれば相手の勢いを止めることもできていたはず。そのチャンスもかなりありました。そこで獲りきれないことで、相手が息を吹き返してしまった。これも近鉄戦と同じような展開でした。敵陣に入ったときの集中力というか、トライを獲りきる力というのはまだ自分たちには足りない。セットプレー、ラインアウトは安定していたし、いいスクラムを組めている回数も多かったです。それがスコアにつなげられないというのは痛い。
試合を通してみると、ミスの回数は少なかったと思います。でも、ミスをするタイミングがよくない。ゴールラインに近づけば近づくほど、あわててしまう状況がありました。
(一流の選手が、試合の大切さを理解してグラウンドに立っている。そういう状況で、どこでミスが出るかはある程度“運”とも言えないか?) 確かにチャレンジした結果のアンラッキーに見舞われたミスもある。ですが、日々の練習の中で、もう少しプレッシャーのある、試合に近いテンションでトレーニングするような意識をこれまで以上に持ちたい。本番の試合だけでプレッシャーを経験しているようでは解決しない問題。
(流れを決めた後半最初のトライで、クボタは思い切って回し外を攻めてきたが?) 後半は向こうが風下になるし、分析しても近場を攻めたあとのワイドスペースにボールを運んでくるということは想定していて、雨の中でもやってくる可能性はあると思っていました。トライは奪われましたが、あの場面に至るプロセスではよく守っていたので。ディフェンスに関してはよくやったと思います。
(最後のトライの場面は、アドバンテージも出ていた。中央で近い位置でトライを獲れれば?) それは結果論。選手を攻めるわけにはいかない。確かにボールキープしてスクラムで勝負というチョイスはありました。ですが、アドバンテージを生かしチャレンジした選手の判断は間違いじゃない。スコアしたわけですし。むしろ判断で言うなら、僕の指示として、ラインアウトからのモールにこだわりすぎたことが問題だった。ゴール前のペナルティではスクラムという選択をしてもよかった。それは僕の責任。
(ラインアウトモールは相手も意識していた?) キャッチングまではうまくいっていましたが、その後のドライビングの部分は研究されていてうまく崩され、最後まで攻略できなかった。
(今季初出場が小松、武者、キニキニラウと3人もいたが?) みんなよくやってくれました。小松はよくチームを引っ張ってくれた。引き締まったと思います」

WTB小松大祐キャプテン

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「ここまでの5試合を外から観て感じていたのは、観ている人に自分たちが変わろうとしている姿や、勝とうとする気持ちみたいなものが伝わるプレーをもっとしていきたいということ。身体を張る、思い切ってセービングにいくとか、気持ちの部分をもっと見せられたらなと。あとは勝つこと。あれだけ応援してもらっているので。
いまやっていること戦術戦略はみんな信じてやっています。あとは精度だとずっと言われている。それに加えて僕は気持ちの部分も変えていく。近鉄戦よりは気持ちの入ったプレーが多かったと思います。SHの山本やFLの武者が流れを変えてくれた。若い選手がチームに与えてくれる刺激を生かしたい 」

SH池田渉

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「今日はありがとうございました。試合数としてカウントされるのが今日で100試合というだけの問題で、出場1試合目と全く同じ気持ちで、同じコンディションで、試合に臨みました。どれだけコンディションを良くしても、使ってもらえない限りは100試合出場はできなかったと思うので、この場を借りて神鳥監督には感謝の気持ちを伝えたく思います。それともちろんチームメイト。試合に出るために日々共に努力して過ごしているので、100試合を達成するまで、気持ちを高めてくれた彼らにも感謝していると伝えたいです」

HO森雄基

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「セットプレーは安定していたのですが、ペナルティをしてはいけないところでしてしまった。それでスコアされたので。反則した場所が悪かった。
(後半逆転されて追いかける展開の中、グラウンド上の雰囲気は?) 全然悪くなかったです。やるべきことをやっていた。ディフェンスも良かったと思いますし…。やっぱり前半にもう1つトライが欲しかった。波に乗るべきところで乗れなかった。クボタさんのディフェンスも良くて、止められたという感じはある」

FL武者大輔

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「初出場でフル出場できたのは嬉しいこと。でもチームにとって大事な試合で、勝てなかったことが悔しいです。まだまだ足りないところあると思うので次のパナソニック戦は2ndステージに向けた試合として頑張ります。
監督からは相手のボールを奪う、ブレイクダウン周辺での仕事をフォーカスされていました。そこは意識しました。ただ、いくつか反則していしまったので、レフリーの声を聞いてプレーすることを大事にしたい」

次節パナソニック戦は二度目の開幕戦

 この試合、セットプレー、ディフェンス、ブレイクダウンでの集散など個別のプレーからは、悔しい敗戦を喫した前節近鉄戦からの修正の意識を強く感じた。

PRの長江有祐や柴田和宏は、スクラムはもちろん、接点で荒々しくサポートした。HO森は終始安定したスローを続け、フィールドでもアタックセンスを見せた。LOカウヘンガ桜エモシは先頭に立ってゲインラインを切ろうと身体を張った。LOロトアヘア・ポヒヴァ大和、FL武者大輔、NO.8野口真寛らは高いワークレートで、好守の大事な場面で印象的なプレーを見せた。ディフェンスの安定感を支えたのはどこにでも現れる3人だった。FLマイケル ブロードハーストは身体を張りボールキープに貢献する一方で、ここぞという場面ではキレのあるランニングで相手のディフェンスラインをかき乱し、流れを変えた。

全く物怖じしないルーキー・SH山本はアジリティで勝負を仕掛け、SH池田は判断力でなかなか生まれなかった2つめのトライをひねり出した。SO河野、CTBフルーティは、雨もあってパススキルが生かしにくい状況だったが、キックでリスクを管理した。他の選手が思いきりのいいプレーをできる土台をつくった。CTB山藤、WTB星野、小松はトレードマークのアグレッシブさとキャリアを積み高めてきた巧さも見せ、チームの「自信」の象徴となった。FBピータース、途中出場した徳永亮のプレーからはタレント、そして出場機会を大切にし、何かを残そう、得ようとする姿勢が伝わってきた。WTBキニキニラウはインパクトプレーヤーとしての役割を十二分に務め、求められたトライを確実に獲った――。

過程を経ずに生まれる結果はない。だが、過程が正しくとも結果が生まれないことはある。個別のプレーや各選手のパフォーマンスを振り返れば、誰しもが自分に課せられた役割を果たそうと必死に戦っていたのがわかる。それでも、そうした過程を経ても、結果が伴わないことも起こるのがラグビーだ。この歯がゆさは、すべてのラグビーチームが直面し得るものであり、乗り越えなければいけない壁だ。

グループBで戦うチームにも日本選手権に出場するチャンスは残っている。ここからの目標は4シーズン遠ざかっている舞台に立つことに変わる。次節、10月26日(土)13時から、埼玉県・太田市運動公園陸上競技場で行われるパナソニックワイルドナイツ戦は1stステージ最後の試合であって二度目の開幕戦となる。「このままでは終われない」という気持ちを、リコーはグラウンド上で表現する。


(文 ・ HP運営担当)

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