2013-2014 トップリーグ 2ndステージ第3節 対 NTTドコモレッドハリケーンズ

2013.12.19

「結果」がリコーにもたらした自信、確かめる試合に

快勝でトンネルを抜けたリコーが迎える2ndステージ第3節は、2試合連続で1点差の敗戦を喫し、背水の陣を敷くNTTドコモとの対戦。待望の勝利で得た自信はリコーを変えたのか。強い意思で立ち向かってくる相手にも、ぶれずに自分たちのラグビーを見せられるか。2ndステージを見通す上で、重要な一戦となった。

 風上にNTTドコモ、風下にリコーが陣取った前半はNTTドコモのキックオフで始まる。

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 2分、ハーフウェイライン付近のラインアウトから展開したNTTドコモがアタックを仕掛ける。リコー陣内10mライン付近での攻防となるが、ディフェンスするリコーがノットロールアウェイ。NTTドコモはショットを選択。正面やや右約40mのペナルティゴールを決めて0-3とした。

再開後、互いにキックを蹴り合うと、NTTドコモがラインアウトからのアタックでノックオン。リコーは5分、自陣浅めのスクラムを得る。

ここからキックを蹴りこむと、攻め上がろうとする相手にプレッシャーをかけ、ボールをこぼさせターンオーバー。ハーフウェイライン付近からアタックに転じ、フェイズを重ねていく。

さらにNTTドコモにハンドの反則。ここでリコーはタッチを狙ってペナルティキックを蹴り込むが、これがタッチを割らず、風上からキックを蹴り返されエリアを失った。

だが、NTTドコモのパスがスローフォワードとなり、ハーフウェイライン付近でスクラムを得るとSH山本昌太がギャップを狙う。ここでNTTドコモに倒れ込みの反則。9分、リコーはタッチに出し、右サイドゴール前ラインアウトから攻め、22mラインの内側へ入ろうとFL武者大輔らが縦の突進をみせていく。しかし、ラックに横から入るペナルティを犯す。NTTドコモはペナルティキックを蹴り、ハーフウェイラインを挟んでキック中心の攻防となった。

14分、ハーフウェイライン付近のスクラムからNTTドコモがボールを後ろに出すとこのパスが乱れる。リコーは素早くプレッシャーをかけ、ボールを奪いにかかる。NTTドコモはタックラーをかいくぐってボールを回しキックを蹴り込むと、リコーはFB星野将利が拾いタッチキックを蹴る。しかしこれは距離が出なかった。

NTTドコモは中盤のラインアウトからハイパントを上げる。リコーはWTB長谷川元氣が飛び出してキャッチ。自陣からアタックを仕掛けるが、チェイスしてきたNTTドコモの選手とのブレイクダウンで、サポートに入った選手にオフサイドの判定。17分、NTTドコモは左中間約30mのペナルティゴールを狙うが、これは外れた。一進一退が続く。

リコーはドロップアウトをNTTドコモ陣内に蹴りこむと、ボールを持って攻め上がった選手をハーフウェイライン付近で捕まえてターンオーバー。リコーはこのボールをつないでアタックを仕掛ける。WTB小松大祐が左サイドを突きポイントをつくると、ワイドにアタックを繰り返し、22mライン付近までボールを運ぶ。しかし倒れ込みの反則でボールを失った。

リコーがチャンスを生かせずにいると、逆にNTTドコモがペナルティキックでリコー陣内に攻め込み、22mライン手前のラインアウトからアタックを見せる。

21分、NTTドコモは中央から右サイドにフラットな長いパスを通し、11番が右隅にトライ。コンバージョンは外れたが0-8と点差を広げた。

スコアはされたが、フォワード戦では優勢に戦っていたリコーは、ハーフウェイライン付近のラックで再びターンオーバー。ワイドにボールを動かし揺さぶりをかけると、SH山本がパントを上げチェイス。NTTドコモが蹴り返すがタッチを割り、リコーはハーフウェイライン付近でラインアウトを得る。

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 これをキープして展開。ワイドにボールを回しギャップをつくりにかかる。27分、左サイドを攻め、頃合いを見て逆サイドにパスを展開、SO河野へ。河野は少し乱れたパスをうまくさばくスキルを見せ、右中間に走り込んだWTB長谷川にパスを通しラインブレイク。さらにNO.8コリン ボークにつないで前へと運ぶと、最後は右サイドタッチライン際をフォローしたFB星野将利がインゴールへ達し右中間にトライ。コンバージョンは外れたが5-8と点差を縮めた。

再開後、NTTドコモがセンタースクラムで反則。リコーはペナルティキックを蹴り22mライン付近のラインアウトにする。フェイズを重ねチャンスを待つと、左中間をLOロトアヘア・ポヒヴァ大和が縦に突く。しかしボールがこぼれターンオーバー。NTTドコモはキックを蹴るとこれがよく伸び、リコー陣内22mラインの内側に転がった。

33分、反応して攻め込んだNTTドコモはハーフウェイライン付近でターンオーバー。さらに中央を突破しライン裏へ抜ける。22mライン付近でパスをつなぎ最後は7番が正面にトライ。コンバージョンも成功し5-15と再び点差が開いた。

リコーはトライ直後の痛い失点を喫したが、前半の終わりにチャンスを迎える。37分、キックオフボールをチェイスしてプレッシャーをかけると、NTTドコモがやや無理な体勢で蹴ったキックを、最終ラインのFB星野がキャッチしてカウンターアタック。

出足よく飛び出してきたNTTドコモのディフェンスに捕まるが、ボールをつなぎ、ラックサイドのギャップをSH山本が右中間を突破。ステップを切って最終ラインを翻弄するとゴール間近まで迫る。

追いついた互いのチームの選手がゴールまで残り5mのところで激しくぶつかりあう。しかしNTTドコモにオフサイド。リコーはスクラムを選択し、正面の5mから押す。押し込まれた相手フォワードがぶつかりポストが揺れる。

リコーはここで獲りきろうと激しく攻めたて、最後はLOロトアヘア・ポヒヴァ大和が中央にグラウンディングしてトライ。終始追いかける展開を強いられたリコーだったが、最後に意地を見せ12-15で前半を終えた。

後半の入りで逆転。その後も試合をコントロール

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 選手交代なしで後半が始まる。SO河野が蹴ったキックオフボールを、NTTドコモがノックオン。いきなり敵陣左中間でスクラムを得たリコーは、NO.8ボークからSH山本、SO河野、WTB長谷川へとつなぎ右タッチライン際を抜ける。ゴール間近にラックをつくると、右サイドから中央に戻し縦の突進を繰り返す。

ディフェンスするNTTドコモがオフサイド。アドバンテージを得たリコーはアタックを継続したが、ボールがこぼれ試合が止まり、右中間ゴール前のスクラムから再開する。

NO.8ボークが持ち出し中央を突くと、NTTドコモに再びオフサイド。今度は右中間からリスタートし3分、NO.8ボークが低く飛びこんでトライ。コンバージョンも決まり、リコーは19-15と逆転。この試合で初めてリードを奪った。

リードを奪い、後半風上の陣地に立っていたリコーは、キックでうまくリスクを管理。敵陣でのプレーを狙いつつ、ボールが相手に渡った際は、切り替えて前に出てディフェンスした。

10分にHO滝澤佳之を森雄基に、15分にFL馬渕武史をマイケル ブロードハーストに、CTBリキ フルーティをピータース ダニエルに交代する。

試合は4点差のまま均衡状態が続いたが、23分に左サイド22mライン上のスクラムからリコーがアタック。ダイレクトに攻め、反応よくサポートが入る。テンポのよいアタックでゴール前に迫ると、右中間のNO.8ボークからLOカウヘンガ桜エモシに長めのパスが通り、右サイドを突破。カウヘンガが右中間に回りこんでトライ。コンバージョンも成功させ26-15とした。4トライを記録しボーナスポイントも確保する。

しかし、そのすぐ後に課題が。26分、リコーは自陣からハイパント攻撃を仕掛けるとオフサイド。NTTドコモにペナルティキックを蹴られ、右サイドのゴール前ラインアウトにされる。

モールを押され、そこから展開されると。相手10番が弧を描く絶妙のランコースを走り、スピードに乗ってギャップを突破。左隅にトライを決めた。コンバージョンは外れたが26-20。トライの直後に失点し、流れを完全に持ってくることができない。

それでもリコーは自分たちのラグビーに集中し追撃を断つ。29分、左中間のギャップを突いたWTB小松に対しハイタックル。アドバンテージを得て果敢に攻めた後、リコーはペナルティゴールを決めて3点追加、29-15に。33分にSH山本が神尾卓志に交代。

終盤の反撃を抑え込むべく、敵陣でプレーするリコーは35分、自陣のラインアウトからダイレクトに縦の突進とサポートを繰り返しボールキープ。

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 じりじり前進し、22mライン付近で左中間からやや外に向かって走ってギャップを突いたWTB小松から、角度を変えて走りこんだNO.8ボークに短いパスが渡り鮮やかに突破。ボークは左中間インゴールまで直線に走りトライを決めた。コンバージョンも成功し36-20。

この後37分にPR長江有祐を高橋英明に、柴田和宏を辻井健太に、NO.8ボークを柳川大樹に、FB星野を高平拓弥に交代。

試合終了直前、4つ目のトライを奪おうと気迫を見せたNTTドコモが反則を突いて前進し、激しく攻める。だがリコーは集中力を切らすことなく応戦。ゴール前でのアタックを守りきりノーサイドを迎えた。

前節に続く勝利で、今シーズン初の連勝。計5トライでボーナスポイントも2試合連続で獲得。通算ポイントも12として、グループB4位に浮上。得点100、12トライはグループBトップ。失点68は3番目の少なさだ。

マンオブザマッチにはスクラムのコントロールに力を発揮したPR長江有祐が選ばれた。またこの試合はSO河野好光のトップリーグ100試合目の出場。1stステージのSH池田渉に続く達成となった。試合終了後、記念セレモニーが行われ家族の方から花束の贈呈が行われた。

「イメージを持ってやれている。実行力を高めていければ」(WTB小松大祐キャプテン)

神鳥裕之監督

「前節は今シーズンベストのゲームができたので、そのパフォーマンスと、選手の勢いや流れを考えて、メンバーを変えずに試合に臨みました。(前半は試合のコントロールに苦しんだ感じがした。風下だったのが影響したのか?)風も少しあると思いますが、少しふわっとしていた。選手がうまくスイッチオンできていなかったようにも感じました。キャプテンの小松とも話しましたが、前半うまく乗りきれていなかったようです。NTTドコモさんも、前節の自分たちのように絶対に負けられないという気持ちで向かってきていました。その気迫に押された部分もあると思います。
(それでも後半持ち直し、自力で2試合続けて結果が出た?)追い込まれた強さを見せてきたチームに対し勝ちきれた。我々にとっても非常に大きな勝利だったと思います。特に最後の攻防を守りきって、4トライのボーナスを与えないで勝利したというのはよかった。1stステージでは、勝利したキヤノン戦で、最後に簡単にボーナスポイントを献上していた姿を考えると成長がうかがえました。ただ、トライを獲ったすぐ後に失点する場面もあったので、それは今後上位と戦って勝つ上での課題です。
(試合ではスクラムはもちろん、フォワードに勢いがあった?)そうですね。フォワード戦のところでしっかりやりきってくれたので、あそこが優位に立てたことで試合は安定したと思います。積極的にペナルティゴールを狙わずに、フォワードの強みを生かそうとしたところもありました。
(河野選手が100試合出場を果たしたが?)本当によくやってくれています。今シーズンは現段階で唯一のフルタイム出場。日々の練習からも積極的に取り組もうという意志を、今年は特に強く感じます。それが試合でのパフォーマンスにもつながっている。試合前『今日は勝って花を添えよう』とみんなで話していました。
来週の近鉄戦のあと2週間空くので、まずは次の試合まで走りきります」

田沼広之フォワードコーチ

「みんな自信を持ってやれています。やっていることは変えていない。春からやってきたことを1つひとつ振り返り続けることで、できるようになってきた。勝つことで自信を確信に変えていければと思います。勝って反省できる、次につながるいい試合でした」

WTB小松大祐キャプテン

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「前節のNTTコム戦では、100%ではないですけど、僕らのいい状態のラグビーというものがわかったので、今日の前半『自分たちのラグビーができていない』と、選手ははっきり感じていたと思います。そこで後半に逆転して勝てたというのはチームにとって大きい。接戦をものにしなければいけない状況はこれからまた出てくるはずなので。
(後半最後の10分、15分はボールキープへの意識と、ディフェンスでの集中力を感じた?)エリアを獲りにはいく。でも前にいく姿勢は崩さないというのはNTTコム戦と同じ姿勢を継続しました。前半はキックでエリアを獲りにいって逆に攻め込まれていたので、自分たちでボールを触ってコントロールしながら、エリアを獲るというイメージにして。それが後半できました。キックだけではないエリアの獲得が、今日はうまくできたと思います。
前半のキックも、悪くはなかったです。ただ相手のキックをダイレクトでキャッチできなかったので、それで下がってしまった。今はスクラムハーフからのキックとスタンドオフからのキック、両方がうまく使えているので、キックオプションがうまく使い分けられている。
(バックスリーもよく仕掛けていた?)相手のFBがよかったので、うまく蹴り返される可能性を考え、継続していくイメージでやっていました。蹴るのであればチェイスして止められるかどうか考えて。
(大きくは変わらない中でも微調整は入れていた?)前の試合よりもいいラグビーをという思いは誰もが持っていたと思う。それがプレッシャーになっていたり、あとはダイレクトにもいける場面でワンパス入れるアタックも使っていたので、その結果ノックオンが出てしまったというのはありました。ただ、イメージを持ってやれているので、実行力を高めていければいいと思います。自分たちが前に出て仕掛けた場面でミスをしないというのは大事なので」

PR長江有祐

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「チームに関しては、ともかく勝てたこと。2連勝というのは喜んでいいことだと思う。個人的にはまだパフォーマンスが上がりきっていないところもあります。もっとチームのアタック、ディフェンスにフィットしていけたらなと思います。フィールドでもう少し走っていきたいですね。スクラムに関しては、まあ前半からどんどん押せるとは思っていないですし、1試合通してプレッシャーかけ続けて、後半に結果が出てくれればいいかな、という思いでやっています。今日は前半から滝さん(滝澤佳之)がプレッシャーをかけてくれて、後半の大事なところで、森(雄基)が入ってきて、さらにエンジンをかけて押していけました。途中相手のPRが変わって、僕のほうも安定しない時間帯もあったんですけど。試合を通して、みんなでうまく対処できた」

PR柴田和宏

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「スクラムでは相手が久富(雄一/元日本代表)さんだったのでプレッシャーを受けることを覚悟していましたが、周りのフォローもあってうまく進められたと思います。ただ後半は少し組みづらかった時間もありました。
試合全体を振り返ると、自分たちのミスから一気にピンチになったり、トライを獲られてしまったという反省があります。前半は特に。少し空回りしていましたね。やろうとしていることをやっているつもりなんですけど、自分たちで勝手に焦って、周りが見えず、無理してしまった。ただ、1stステージであればそのままいってもおかしくない展開だったのを、立て直せたのはよかった」

CTBリキ フルーティ

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「(今日の勝利は)自信というものにつながっていると思います。ここからプラスして、来週また勝てるように頑張りたい。
また、この試合を振り返って、直すべきところを確認したいですね。近鉄はいつ戦ってもタフな相手なので、しっかり分析していい状態を継続して試合に臨めれば。
(苦しい時期が長かったが、結果が出始めている。チームが耐えられた理由は?)ウインドウマンスがいいタイミングで来たと思う。会社としてもチームとしてもグループAに入れなかったことは残念だったけれども、目標を立て直してグループBで上位に入ることに集中できている。選手もその切り替えによく対応できていると思う。その結果が出ている。
ただ、勝ててはいるけれども、パーフェクトなラグビーができているわけではないので、しっかり修正してパーフェクトゲームに近づけて、他のチームにプレッシャーをかけていく必要もある。(パーフェクトでないと具体的に感じるのは?)試合を進める上でのストラクチャー、形はよくなってきていますが、個人のスキルでミスが多い。それぞれが自分の仕事にもう少し集中する必要があると感じています」

CTB山藤史也

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「前半はちょっと、あまりうまく回っていないなと感じていました。だから、後半よく巻き返せた、立て直したなと。風下というのもあって、うまくエリアがとれないのもありました。その中でもミスが多かったりとか、普段僕たちがやろうとしていることとは違う動きになって、周りが反応できなかったりとか、サポートが遅れて相手にボールを獲られたりとか。
(そこから立て直すためにどんな声を?)僕らがいつも練習や試合でやっていることを振り返って、シンプルにダイレクトにやろうと。ハーフタイムに何かを特別変えたということはないです。(後半早々にトライが獲れたのも大きかった?)風上に立って、エリアが獲れて、そこでフォワードがだいぶ優位に戦ってくれたので、スコアが生まれた形。
ケガ人も戻ってきて、ラグビーの精度も上がりつつある。タックルするプレーヤーがしっかりタックルして、ダイレクトにいくプレーヤーがダイレクトにいく。個人個人が役割をしっかり果たせれば、いい流れの試合ができると思うので。ここから、これまでの分を取り返したいですね」

前節のNTTコム戦が勢いで押し切った勝利なら、今節はうまくいかない場面でも、都度折り合いをつけ試合をまとめあげた勝利に映った。後半の入りに逆転。冷静に試合をコントロールし、突き放すトライを奪う。そして試合終了まで集中力を切らさず無用なトライを与えない。勝負強いラグビーは、シーズン終盤戦で重ねることになるタイトなゲームに向けて、大きな経験になったに違いない。

次節は12月22日(日)、13時から千葉県・フクダ電子アリーナで行われる近鉄ライナーズ戦。4週連続の試合となり選手の疲労はピークにあるはずだ。だが、1stステージでは前半に主導権を奪われ、活路を見出せぬまま敗戦した相手へのリベンジを、必ずやリコーは果たす。


(文 ・ HP運営担当)

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