プレシーズンリーグ2015 第4節 近鉄ライナーズ戦レポート

2015.10.06

反則でペースつかめず。しかしディフェンス、アタックで好パフォーマンス

プレシーズンリーグを2勝1敗、プールD2位となったリコーは、各プールの2位チームが戦うプレートトーナメントに進んだ。初戦の相手はヤマハ発動機とコカ・コーラに大勝しプールB2位に入った近鉄。トップリーグ開幕に向け、「トライアル」と「勝利」を両立させながらこのカップ戦にチャレンジしてきたリコーは、同様のスタンスを維持しラスト2戦に臨む。

秋晴れの秩父宮ラグビー場。リコーのキックオフで試合が始まる。キックオフボールの争奪で近鉄にノットロールアウェイ。リコーはPKでゴール前に前進。左サイドのラインアウトからモールで押し、ラックになると左中間でサイドアタックを繰り返す。展開しSOコリンボークが右中間を突く。リコーは我慢強く攻め、2分以上のアタックとなった。

右サイドを攻めるリコーは左サイドにスペースを見出すと展開。最後はSOボークからWTB長谷川元氣につないでインゴールへ持ち込みトライ。(3分)FB高平拓弥の蹴ったCGは外れたが、リコーが最初のアタックでスコアに成功。5−0と先制する。

再開されると蹴り合いとなる。互いにうまく処理し、決定的なエリア獲得はならず。近鉄がハーフウェイライン付近から攻めると、今度は守るリコーがノットロールアウェイ。中央リコー陣内10mライン手前という距離のある位置ながら、近鉄10番がPG成功。(9分)5−3と点差を縮めた。

リコーはハーフウェイライン付近のディフェンスでNO.8柳川大樹のタックルでうまく相手を止めターンオーバー。回して左中間を攻めるがノックオン。さらに前方に転がったボールに選手が触れてしまいノックオンオフサイドとなる。

PKを蹴った近鉄が前進しリコー陣内に侵入。ラインアウトから22mライン付近を攻める。ラックでボールが出ずリコーボールのスクラムとなるが、アーリープッシュでボールを失い、さらにコラプシングでPKを与えてしまう。右中間22mライン付近の位置から近鉄は再びPGを狙い成功。(16分)5−6と逆転する。

直後、リコーのキックオフを近鉄が弾きボールはリコーへ。リコーは攻めるがボールを失いディフェンスに回る。しかしハーフライン付近のラックでアグレッシブにバトル。こぼれたボールを拾ったSH山本昌太が体勢を崩しながらも、アタックに転じポジションを上げてきていた近鉄のラインの裏へ蹴り込む。これにCTB山藤史也、WTB渡邊昌紀が反応しチェイス。ボールを拾ったバックスに山藤がプレッシャーをかけるとたまらずパス。これを走り込んでいた渡邊がカットし右中間を抜けてトライ。(19分)CGは外れたが10−6とリコーが再逆転する。

近鉄はリコーのランナーを止めてノットリリースザボールを獲る。PKで前進し22mライン内側に侵入。左サイドのラインアウトから近鉄がテンポよくアタック。リコーはディフェンスに追われた。崩されことなく粘り強く守ったが中央でオフサイド。近鉄はPGで加点。(24分)10−9。

ここからは互いにボールをキープできず、かたちのあるアタックにならず目まぐるしくボールが両チームを行き来する。そんな中でもゴール前にボールを運んだ近鉄に対しリコーがオフサイド。近鉄はまたもほぼ正面のPGを決めて逆転。(33分)10−12とした。

リコーは近鉄がボールを自らインゴールに下げてグラウンディングするプレーで5mスクラムを得る。この大きなチャンスでSH山本が持ち出しスクラムサイドを突くが前方の選手とぶつかるアクシデンタルオフサイド。近鉄スクラムとなってしまう。リコーはスクラムでペナルティ、さらにオブストラクション、オーバーザトップと続けざまに反則が出て攻撃を継続できない。

近鉄がハーフウェイラインの手前からPGを狙い、これが決まって前半が終わる。(40分)10−15

ディフェンス、ブレイクダウンでのバトル、ギャップを見いだし仕掛けていく判断、スピードなどにはこれまでの試合と変わらない躍動感を感じるものの、ミスやペナルティでそれらがなかなか生かせない歯がゆい前半となった。

後半3トライで12点差を跳ね返し勝利。終盤の猛攻守りきるしぶとさも

PR辻井健太に替わって藤原丈宏が入り後半スタート。入りでまずはリードを奪い返したいところだったが、キックオフボールが近鉄へ。一気に攻め込まれゴール前でディフェンスに追われる。開始直後ながらよくリアクションしたが、中央ラックから持ち出した相手15番がグラウンディング。(1分)PGも決まり10−22と点差は12点へと広がった。

CTB山藤に替わって牧田旦(6分)。リコーは再び攻め込まれるが、自陣ゴール前で相手を捕まえノットリリースザボールを奪う。タッチキックでエリアを戻しラインアウトへ。やや乱れるがなんとかキープし、ゴロキックを蹴ると近鉄にノックオン。自陣右サイドのスクラムから展開しWTB長谷川が左サイドを突くがここは対応され押し出される。(7分)

しかしラインアウトがオーバー。リコーがボールを確保すると、SH山本とSOボークのループプレーからCTB小松につなぎ突破。敵陣に侵入。守る近鉄に反則が出て、リコーはPKを蹴り出しゴール前ラインアウトに。

ラインアウトから展開しWTB長谷川がアタック。戻すかたちで手前(スロワー側)のタッチライン際を突いたNO.8柳川がブレイク。ゴールに迫ると内側をフォローしたCTB小松大祐にパスしトライ。(9分)CGは外れたが、5点を追加し15−22。PR大川創太郎に替わって柴田和宏(10分)。

リコーはノックオンとスクラムでの反則で自陣侵入を許すが、ゴール前のディフェンスでターンオーバーしエリアを奪い返す。さらに近鉄の反則でSOボークのリスタート。これに他のメンバーも反応し一気に攻め上がる。LOカウヘンガ桜エモシ、HO滝澤佳之らにつないで前進すると、左中間をSH山本が突く。捕まるがうまくボールを離し、外をフォローしたCTB小松につなぐ。小松はインゴールまで抜けて自身この日2個目のトライを挙げた。(20分)SOボークがCGを決めて22−22の同点に。HO滝澤に替わって芳野寛。(22分)

替わって入った芳野が反則からのリスタートで突進。NO.8柳川、CTB小松とつないでゴールに迫る。すると近鉄にオフサイド。SOボークがPGに成功しリコーが勝ち越した。(24分)25−22。LO生沼知裕に替わって小山智聲。(25分)

ペースはリコー。キックオフボールをキャッチするとモールで押し戻し、LOカウヘンガがキープし前進。自陣から攻め上がっていく。展開するとノックオンが出て近鉄スクラムとなるが、近鉄が蹴ったタッチキック後の自陣浅めのラインアウトからアタックを見せる。

展開し大外をSOボークが突く。ハーフウェイライン付近のポイントからカウヘンガの突進、FB高平につなぐと、その内側にクロス気味に走り込んだWTB長谷川に戻すパスが通る。前方のスペースを抜けた長谷川は中央インゴールへ。(27分)CGも決まって32−22。リコーが5個目のトライで10点差をつけた。

SH山本を神尾卓志、CTB小松を木上鴻佑に入れ替えてラスト10分を戦うリコー。自陣浅めのディフェンスが続いたが、しのぐうちに時間が過ぎていく。

残り5分でゴール前進出を許したものの、突進を食い止め、粘り勝って最後はノットリリースザボールを奪った。失点せずに守りきってノーサイド。リコーはプレシーズントーナメント(プレート)1回戦突破を決めた。マンオブザマッチはCTB小松大祐が選ばれている。

次戦は代表招集者、また負傷者が多く出たことからトーナメントを出場辞退したパナソニックワイルドナイツに不戦勝したNTTドコモレッドハリケーンズとの決勝戦に進む。10月10日14時5分から東大阪市花園ラグビー場で行われるプレシーズンラストゲーム。結果と内容両面で、トップリーグを戦い抜くための大きな自信を得られるような試合にしなければならない。

「後半の動きは、選手たちの成長がわかる象徴的な40分だった」(神鳥裕之監督)

神鳥裕之監督

今日応援してくださった両チームのファンの皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。プレシーズンマッチとはいえ、トーナメントということなので、しっかり勝って次のステージに進みたいという思いで試合に臨みました。結果的にトライ数の上では満足できるゲームができたのかなと思っているんですが、前半は反則が多く苦しみました。次の試合、またトップリーグに向けた大きな課題ととらえ準備を進めていきたいと思います。
(多かったペナルティについてはハーフタイムに指示を)はい。数でいうとこちらが12、近鉄が1というかなり極端な状態でしたので。ただ同時に、ディフェンスのシステムや選手の実行力というのは満足のできるパフォーマンスは出せているというメッセージも伝えていました。数字的には後半はイーブンぐらい(近鉄6に対しリコー5)に戻せたのかなと。その修正能力には選手の成長があったと思います。
(ペナルティが減ったことによって、パフォーマンスの出せていた部分が生き、後半のスコアにつながったというとらえ方か)ペナルティを犯してしまったのは、自分たちの規律意識に加えて近鉄さんの厳しいプレッシャーもあった。それでも前半はトライを獲れるシーンで意図したかたちでしっかり獲れていました。アタックに関しては自信を持ってパフォーマンスできていたので、後半はペナルティが減ってさらに機能したというのはあると思います。【以上共同記者会見より】

(最初のトライはフェイズを重ねて)あれは我慢我慢でフェイズを重ねれば必ずスペースが生まれるという練習通りの話が実行できたいいトライだと思います。ペナルティが多く選手がフラストレーションを溜めてしまった部分はありましたが、アタック、ブレイクダウン、ディフェンス、という切り口で見ていけばトップリーグに向けて順調に上がってきているとは思います。まだやるべきことはありますがチームとしてはいい方向に来ていると思います。
(前半はショットでのスコアを重ねられた。トライを獲りに来られたらまた違った試合になった可能性も?)1点でも上回れば勝ち抜けるのがトーナメントというのもあります。一方でゴール前でトライを獲りに来られるのはやはりプレッシャーを感じるもの。結果論ではありますが、PG後のキックオフで気持ちを入れ替えることができたので、我々にとってはよかったのかもしれません。(一時は12点差まで開いた。そこまでは近鉄サイドのペースだった)ただ、点差ほどやられている感じはなかったと思います。やろうとしているアタック、トライを獲りにいく力には選手たちも手応えを感じていたと思いますし。後半はそのイメージとパフォーマンスがリンクしたのではないかと。
後半の動きは選手たちの成長を感じる象徴的な40分でしたね。レフェリーとのコミュニケーションなどを通じペナルティを減らしたこと。ブレイクダウンのところで、カウンターラックでボールを獲り返すことができていましたが、そういうシーンは昨シーズンはあまりなかった。日頃の練習の成果と言っていい大きな収穫だったと思います。このカップ戦(プレシーズンリーグ/トーナメント)はとらえ方が難しい面もありましたが、我々としてはポジティブにとらえて、様々な選手の挑戦の場として生かしてチームの底上げに役立てることができてると思います。選手たちも実感しているんじゃないかなと。外国人選手や帰化外国人選手だけではなく、日本人選手のレベルアップも図れていると思っています。
(ラグビーW杯では日本代表と同組のサモアに新加入選手であるティムナナイウィリアムスがおり注目されているようだが)よく紹介されていますね。大会中ですので、どんなコンディションで来日することになるかはまだわかりません。ですが、とにかく僕らは今の戦力でトレーニングを続けて、そこに彼らがフィットできるようにしっかりサポートしていきたいと思います。試合を見ながら、今どんなコンディションなのかには思いを巡らせたりもしますけどね。
(次戦は決勝戦ということになる)プレシーズンの最後を締めくくる試合として、お互い高いテンションを保って戦えるのはよかったと思います。選手たちの頑張りによって、11月14日のターゲットに向けて成長を続けられていると思います。一喜一憂せずに、残りの日程もしっかり準備していきます。

SH山本昌太ゲームキャプテン

やはりペナルティの数が多く、レフェリーとのコミュニケーションがうまくできなかったり、そのペナルティによってリズムがつかめなかったり、といったところがあった試合でした。ペナルティについてはしっかり確認して、次の試合の準備をしたいと思います。(後半、ペナルティの部分以外でやりやすくなった感覚はあったか?)ターンオーバーからしっかりエリアが獲れたり、1対1で前に出れるようになりブレイクダウンで優勢に立てたことなどで、いい流れにもっていけたと思います。【以上共同記者会見より】

ターンオーバーが多かったりだとか、アンストラクチャーな場面も多い試合でした。最初ばたばたしてしまってボールが手につかなかったり、キープすべき場面で無理につないでいってしまったり、なかなかリズムのつかめない試合でした。もちろんペナルティもあったんですけど。(2つ目のトライは、中盤から裏に蹴り込んだキックから)キックチェイスの部分はここまでの課題1つでもありました。あそこはバックスがしっかりチェイスしてくれてトライにつながってよかったです。

HO滝澤佳之

前半はセットプレーでミス、ペナルティがあったんですがそれを修正できず、なかなか試合に入っていけなかった。引きずったまま前半を終わってしまいました。いい勉強になったと思います。ミスを引きずったというのは特に僕なんですけど。セットプレーでミスが起きるとそこばかりに集中してしまって、今度はディフェンスにミスが出たり。まだまだ選手として成長が必要ですね。
(開幕まであと40日。チームとしての準備は進んでいる?)はい。でも、まだ伸びる部分も残してもいる。(準備が)遅いと言えば遅いんですけど、まだよくなる余地があるように感じます。やろうとしていることを全員がもっと理解すれば、もっと上にいけると感じています。

HO芳野寛

(入った直後、思い切りのいいリスタートも)あそこは行けという声が聞こえたので。しんどい試合でしたね。向こうもフォワードで勝負してきたので。(後半の終盤20分に出場したが、勝ち切るために大事な時間。何を考えていたか?)とにかくセットプレー、スクラムとラインアウトの安定を考えていました。

CTB小松大祐

ケガから復帰してから今シーズンは調子よくやれています。フィットネスの部分でも問題はないですね。前半から出し切っていっても、後半も体力残っているという感じでやれているので、今日も飛ばしていこうかなと思っていました。ただ今日はディフェンスをしている時間が長かったので、前半の終わりなどは少し疲れている様子はありました。それは僕もチームも。敵陣に入ってもペナルティから戻され、ショットでスコアされるというのもメンタル的に疲れてくるような展開だったので。前半は後手に回っている雰囲気がありました。
後半はハーフタイムに確認した空いてるスペースを狙っていくことができました。外側や相手のフォワードとバックスの間のような。あとはフォワードがセットプレーで頑張ってくれていたので、ゲインラインを越えることを目標にやりました。
(後半に2トライ。1本目は外側を突いたNO.8柳川からのうちに戻すパスから、2本目はターンオーバーから)ターンオーバーからのアタックに関してはバックスが引っ張ってやれと言われています。1本目はサインプレーが崩れたんですが、意思統一をしていた外側をアタックしようという流れでできていたと思います。アタックに関してはやろうとしていることができれば問題ない。でも、少しでも躊躇してしまうと前半のようにペナルティを獲られたり後手に回るケースが増えると思うので、今日の後半をスタンダードにしてやっていきたいと思います。1人ひとりが前に出る意識があれば変わると思うので。とにかく敵陣に入ったら3点でもいいのでスコアすること。今日の前半ももう少しトライが獲れたと思います。
1試合1試合課題はありますが、さらに上を目指そうとしながら練習できています。(開幕までに解消したい課題は?)ブレイクダウンかな。1人ひとりのスキルの部分。絡まれるケースが多かったので、そこで速く展開できればもっとチャンスが生まれていたと思う。そこはバックス、フォワード関係なくやらなければいけない。

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