トップリーグ 2015-2016 第3節 パナソニック ワイルドナイツ戦レポート

2015.12.02

チャンピオン相手のアウェイ戦。吹っ切れたアタック見せる

リコーは思うようなラグビーができず、開幕2戦に敗れ試練のスタートとなった。しかしプレーの端々には状況を打ち破ろうと足掻く姿を見せている。チャンピオンチーム・パナソニックワイルドナイツとのアウェイ戦という厳しい条件の第3節も、良いマインドを保ち、前を向いて挑んだ。

太田市運動公園陸上競技場は快晴。ラグビー日本代表選手を多く擁するパナソニックの地元、太田での今季最初のゲームということもあり多くのファンが来場した。黒いグッズを身に付けたリコーファンも負けじとコールを続け、試合に向けて雰囲気をつくる。

パナソニックのキックオフで試合が始まる。左中間スクラムから展開すると、右中間で13番がギャップを突破。22mライン付近でボールをつなぎ、左サイドを攻めるとリコーにオフサイド。PKを蹴り出しラインアウト、さらにモールを組む。リコーはこれを押し返しうまくディフェンス。しかし展開され右中間ゴール前のラックでホールディングの反則。パナソニックはスクラムから出したボールをつなぎ、10番からのパスで14番が抜け中央にトライ。CGも決めて0-7。(6分)リコーはモール、スクラムで応戦するも、強く速いアタックにディフェンスを破られた。

パナソニックがさらに攻める。SH山本昌太のハイパントをキャッチしてカウンター。ラインブレイクに成功し22mラインを超える。左サイドから展開し右サイドを攻める。リコーも必死に止めにいったが、タックルが高く入り反則。PKを蹴り出したパナソニックは、ラインアウトからモールを組む。今度は止められず、右中間を一気に押し込まれ8番がトライ。CGも決まり0-14。(12分)

開幕2連勝の勢いそのままにパナソニックが攻め連続トライ。リコーはボールを持つこともほぼできずに序盤を終えた。流れはパナソニックに一気に傾きかねないムードになったが、リコーはインゴールで円陣を組み、立て直しを図る。

相手がわずかに見せた隙を突く。リコー陣内のラインアウトをキープしたパナソニックがBKにボールを回すと、ボールがこぼれラインの背後にボールが転がる。これにLOマイケルブロードハーストが反応。拾いに来た相手選手と競り合いながら足を伸ばし前方に蹴りチェイス。先に追いついたパナソニックがインゴール方向に蹴り出し、リコーの5mスクラムに。この試合最初のチャンスが訪れる。(13分)

パナソニックにコラプシング。蹴り出したリコーは左サイドのラインアウトからモール、続いてFWが縦の突進を見せる。PR大川創太郎、LOカウヘンガ 桜エモシらが激しくファイトしライン上までボールを持っていくと一気になだれ込む。テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)となるが、カウヘンガのトライが認められた。SOバーナードフォーリーのCGも決まり7-14。(17分)訪れたチャンスを確実にものにしたリコーが点差を詰めた。

しかしパナソニックがキックキャッチから攻める。自陣左サイドから展開。タッチライン際にポイントをつくると折り返し左中間にラックをつくると、ラックサイドのわずかなギャップを5番が抜けトライ。CGも成功し7-21。(21分)

再び流れを引き戻されそうになるが、リコーはここから攻める。敵陣浅めのラインアウトから展開、フェイズを重ねていく。LOカウヘンガ、NO.8野口真寛、SOフォーリーらがゲインラインを切りゴール前に進む。

反則で得た中央のスクラムから、野口が出しフォーリーにつなぐプレーで左を攻めると、ラックからボールが出ずパイルアップ。再びリコースクラムとなり、左中間から広いサイドに展開。右サイドタッチライン際まで運ぶが、パスをカットされパナソニックが裏に抜ける。しかし、スクラム直後のブレイクダウンでパナソニックにノットロールアウェイがあり、反則の繰り返しに対し12番が10分間の一時的退出処分を科される。

リコーは3度目のゴール前スクラム。中央から左に出すと、SOフォーリーが飛び出してきた相手WTBの動きを見て、頭を越す山なりのパス。タッチライン際に走り込んだWTB長谷川元氣がこれをキャッチにいく。前には誰もおらず抜ければトライの場面だったが、ボールはタッチを割る。(30分)

自陣ゴール前ラインアウトをキープしたパナソニックはアタック。いきなりラインブレイクし中央を抜ける。ディフェンスに回ったリコーは、自陣10mライン付近で止めるが、ラックでノットロールアウェイ。パナソニックは右中間40mのPGを決めて7-24。(34分)

SOフォーリーのキックで再び敵陣に侵入。WTB渡邊昌紀が右サイドを突くアタックを見せたが、パナソニックがラックのこぼれ球を拾いターンオーバー。リコー陣内に攻め込む。ここはリコーが守りきって前半終了。前半中頃からよく攻めたリコーだったが、アタックへの切り替えで高い集中力を見せたパナソニックがリードを広げた。

パナソニックが怒濤の攻撃。しかし折れずに戦い抜き勝ち点獲得

 NO.8野口に替えロトアヘアポヒヴァ大和を入れて後半スタート。ハーフウェイライン付近のラインアウトからアタック。22mライン付近まで前進すると縦、縦で右サイドを攻める。ゴールラインが近づくとSH山本がディフェンスに突っ込む。ラックをつくるとPR辻井健太がボールを拾って持ち込みトライ。12-24。CGもSOフォーリーが決めて14-24。(2分)

10点差としたリコーは、さらに流れを引き寄せるべくインパクトプレーヤーを投入。HO滝澤佳之をマウジョシュアに、LOブロードハーストを生沼知裕に、CTB山藤をタマティエリソンに入替。

しかし中盤のラインアウトからパナソニックが攻撃。展開したボールを受けた11番が突破。ラックからさらに展開すると8番が突破。リコーはディフェンスが機能せずトライを奪われる。CGも決まり14-31。(10分)

リコーはSOフォーリーのライン裏へのゴロキックなどでチャンスをつくり敵陣へ。22mライン内側のラインアウトからモールで押し込む。展開すると、また縦の攻撃を繰り返す。ミスせずよいアタックを見せるが、ここはパナソニックが守りきりノットリリースザボール。リコーはPR辻井を藤原丈宏に、大川を柴田和宏に入替。(17分)

PKを蹴り出したパナソニックは、中盤のラインアウトからハイパント。11番とWTB渡邊が競り合ってキャッチにいくが、ボールは11番に。左中間から展開。右を攻めゴール前に。ラックから出したボールを3番が受けてインゴールに飛び込みトライ。CGも成功。14-38。(21分)リコーのアタックをしのいで確実にスコアするパナソニックが一気に点差を広げた。この後もラインアウトからのアタックでリコーのディフェンスを切り裂き23分、26分にもトライ。14-52と圧倒する。

それでも下を向かず戦うリコーは、HOマウ、FBピータース ダニエルらが突破し敵陣に攻め入る。ペナルティを獲り、蹴り出してラインアウトに。ラインアウトモールを組むと、押し切ってLOカウヘンガがトライ。CGも成功し21-52。(34分)。このトライの後、SH山本を中村正寿、WTB長谷川を星野将利に入替。

直後、SOフォーリーの自陣からのキックがチャージされ、アタックを受ける。パナソニックはラインアウトからモールでトライを獲り返し(CG成功)21-59。(37分)

試合終了が迫るが、4トライのボーナスポイントまであと1トライのリコーは、自陣から意地のアタック。するとパナソニックにアーリータックル。リスタートしたSOフォーリーが浮かせたキックをライン裏に蹴り、飛び出して自分で確保。敵陣にラックをつくると、再びフォーリーが抜け出して一気にゴール前まで走る。最終ラインを避けてランコースを左にとると、タッチライン際をフォローしていたWTB星野にパス。これが通り星野は左隅にトライ。角度のあるCGも、SOフォーリーが丁寧に決めて28-59。(41分)ここでノーサイドを迎えた。

苦しい試合だったが、リコーは最後まで戦い抜いた。チャンピオンから奪ったボーナスポイントはその成果だ。しかし厳しさは増している。開幕3連敗で勝ち点2、グループA7位。上位4チームに入る可能性をつないでいくためには、次節12月5日、12時からの埼玉・県営熊谷ラグビー場での東芝ブレイブルーパスに勝つしかない。

バックスタンドへの挨拶を終えた選手たちの背中に、送られ続けたリコーコール。この声援に応えるために必要なのは、とにかく勝利だ。

「FWがすごく頑張ってくれたゲーム。しっかりマッチアップできていた」(SOバーナード フォーリー)

神鳥裕之監督

たくさんのお客さまのなかでプレーできたのは、ラグビー日本代表や関係者の方々がワールドカップで頑張ってくれたおかげです。本当に感謝したいです。開幕2戦は満足いかない試合でしたので、今日はチャンピオンチームを相手に一泡吹かせようという気持ちで臨んだんですが、パナソニックさんの素晴らしいアタックをディフェンスが止めきれなかったというのが大きな反省です。悔しい結果になってしまいました。

リーグ戦はまだまだ続きますので、最低限ではありますが1ポイント獲れたことを糧にして、下を向かず準備していきます。(SOバーナードフォーリーの先発起用について)本来であればすぐに使いたかったんですが、コンディションを整えながら満を持して使ったという感じです。期待に応える活躍をしてくれたと思っています。最後のボーナスポイントを獲るトライの起点も彼がつくってくれました。ワールドクラスのプレーを見せてくれたと思います。これからにも期待しています。【以上共同記者会見にて】

点差はついてしまったのですが、最後自分たちでチャレンジして4トライが獲れたというのは、今後の戦いにおいては後々意味を持ってくると信じています。この頑張りは評価したいです。でも、後半の半ば、パナソニックさんの攻撃が充実した状態になってきたときに、簡単にディフェンスラインを突破されてしまっていた。あそこのタックルクオリティは反省しないといけない。立て直すことができませんでした。
(パナソニックの攻撃がよく継続していた)最初の攻撃であれだけゲインされてしまうと、後手後手になってしまう。向こうは前に出た状態で次の攻撃が準備できますが、我々は下がりながらのディフェンスとなる。そこでディフェンスライン形成が追いつかない。後半の半ばはこの構図が続きました。ラックで攻撃のスピードを遅らせたりとか、エッジ側のポイントであればラインスピードを上げるというのがゲームプランではあったんですが、それができていればもう少し流れを寸断できたかもしれない。パナソニックさんの攻撃の精度が高かったです。
(エリアを獲りにいったのはプランだったのか?)SOにバーナード(フォーリー)が入ったので、それはこれまで以上にメッセージとしてはっきりさせました。(それは本人の意向も汲んで?)私やヘッドコーチのアイデアがまずあり、彼にはその実行を期待しました。その中で彼のアイデアや気付いたことを取り入れています。(前半はミスを突いてしっかりトライを獲れた)1つトライを獲った後に敵陣でずっと攻めましたが、なかなかそれがトライに結びつかず、簡単にスコアを返されてしまった。流れを取り返せませんでしたね。敵陣に入ったときには何らかのスコアをして帰ることが思うようにできなかった。
(この1週間はディフェンスを?)ディフェンスはここ2試合思い通りのパフォーマンスができていなかったので、時間を割き確認を含めてトレーニングしていました。ディフェンスのオーガナイズのできるタマティ(エリソン)を入れたりだとかそういった工夫もしたんですけど、結果的にはまだ改善が必要なんだと思います。タックルクオリティ、ディフェンスシステムの信頼、どちらもが改善しきれていません。
アタックは少しゲームプランを変えていました。FWでピックゴーで攻めていく。パワーを生かし攻めていこうというプランは比較的機能したととらえています。ここ2試合はゲインライン近くの攻防でプレッシャーを受けていましたが、今日の10番を起点にしたやり方は一定の手応えをつかめたと思います。(思い切りのよいアタックをしているようにも映ったが)昨シーズン、リーグ戦のサントリー戦は、敗れはしたものの後半にトライを重ね以降盛り返すきっかけになりました。ああいう試合になればいいなと。(ハンドリングエラー、ペナルティも減ってきた)本当に少しずつではありますが、よい兆しは出てきています。ここからはトーナメント戦だと思って1戦1戦勝とうという発信をしていきます。

NO.8野口真寛キャプテン

お疲れ様でした。監督と重なりますが、たくさんの声援ありがとうございました。ディフェンス、モールからトライを獲られてしまったところなどが反省です。それが敗因だと思います。パナソニックに対するプランとしては、FW前5人が真ん中からFW戦を仕掛けていこうというのがあり、それで前に進むことができたという手応えは感じられました。トップリーグのチャンピオンから4トライ。1、2戦も負けましたが、今日はポジティブに、次につながる試合だったと思っています。【以上共同記者会見にて】

SH山本昌太

キックを蹴られてチェイス、ボールを取られて、そこからワイドに振られてというパナソニックさんの得意なアタックをされてしまいました。2戦終わってシンプルに攻めようというところと、あとはディフェンスにフォーカスして準備したんですが、結果ダブルスコア。後半の連続してスコアされた場面は自分たちの甘いところが出た。前に出られだすと後手後手に回るというのは1対1、タックルの部分で受けてしまっているんだと思う。システム以前の問題だと思います。でも試合を通してのゲーム中のチームの雰囲気、前を向いてやっていこうという姿勢は前の2節に比べよくなったかなと思います。もうあとはないので開き直って前を向いてやっていきます。(SOフォーリーとのプレーの感想は)すごくコミュニケーションをとってくれる。やりやすいし勉強にもなる。チームを引っ張ろうとしてくれています。

SOバーナード フォーリー

FWがすごく頑張ってくれたゲームだったと思います。しっかりマッチアップできていました。ディフェンスのミスがいくつかあったのは残念でしたね。パナソニックさんはいいチームなので、そういうミスをしっかりポイントに変えてきた。私たちにとってはいいパフォーマンスだったと思います。ここから積み重ねていけるので。今回やってしまったミスを減らせば、次の試合はいいチャレンジができると思います。

WTB渡邊昌紀

アタックについて今週はチームとして明確にこれをするというのを決めて、それを練習して、試合でもそれができた。その結果4トライを重ねてポイントが獲れたのだと思います。ディフェンスは変えず、これまでやってきたことの精度を高める準備をしてきました。ダブルスコア以上の点差にもなってしまうようなパナソニックさんのような強いチームとやるときには、敵陣深くに入れる少ない機会にしっかりスコアする力が必要。それがまだ足りないと思います。もし獲りきれていれば、相手もプレッシャーを感じただろうし展開も変わったんじゃないかと。

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