【Review】トップリーグ 第1節 vs Honda HEAT戦

2018.09.04

3連続トライでリコーが主導権握るも、Hondaに食らいつかれ接戦に

優勝を目標に掲げて挑むリコーのトップリーグが今年も始まる。
開幕戦は今シーズンから再びトップリーグへの昇格を果たし定着を狙うHonda HEAT。試合前、会場の秩父宮ラグビー場には強い雨が降ったが、試合前には少し弱まった。

試合は思わぬ幕開けとなる。Honda14番がキックオフボールをキープ。リコー陣内でアタックを開始する。テンポよくリコー陣内中盤でフェイズを重ねると、右サイドでゲインし22mラインを突破。

ゴールに迫るとリコーにオフサイドの反則。アドバンテージが出た状態で左に展開すると、左中間のギャップを鋭く抜けた15番が左中間にトライ。リコーはノーホイッスルで今季最初の失点を喫した。10番が蹴ったCVも決まって0-7。(前半2分)

SOロビー・ロビンソンが深めに蹴り込んで試合再開。SOロビンソンのグラバーキック、SH山本昌太のキックパスなどが決まり22mラインの内側に攻め込むが、パスをHondaにカットされてしまいキックアウトを許す。

しかしチャンスは続く。敵陣浅めでのHondaスクラムに強いプレッシャーをかけ、右のPRの柴田和宏の側から強く押し込む。Hondaはなんとかボールを出しリコー陣内にキック。

これに対し、FBティム・ベイトマンが自陣よりハイパントを蹴り込む。チェイスしたWTB長谷川元氣が敵陣10mライン付近で激しく競り合う。相手が弾いたボールが長谷川の顔に当たりこぼれる。

HO森雄基が拾い右中間のスペースを22mライン付近まで前進。フォローしたNO8松橋周平を経てFBベイトマンにつなぎ、ギャップを抜けて右中間インゴールへ達しトライ。CVもSOロビンソンが決めて7-7。(前半9分)

次のスコアもリコーに。自陣でモールを組んだHondaに圧力をかけアンプレアブルにする。右中間22mライン手前で得たスクラムを再び強く押すとHondaにペナルティ。PKを右サイドのタッチに出す。

リコーはゴール前でラインアウトモールを組む。細く長いモールがゴールに向かって進む。ライン手前で密集の左脇をHO森が鋭く突いてトライ。CVははずれたが、12-7とリコーが勝ち越した。(前半16分)

 

やや弱まっていた雨が強く降り出す。FBベイトマンの自陣からのキャリー、CTB濱野大輔の裏のスペースに蹴り自ら拾うプレーで前進し敵陣へ。さらにリコーが攻めトライチャンスが訪れる。

このアタックへの対応でHondaにペナルティ。グラウンドに倒れた状態でプレーした23番が一時的退出処分を受ける。(前半19分)

リコーはPKをタッチに出し再びラインアウトモールを組む。強く押し相手のディフェンスを押しのけると、FLブロードハーストマイケルが空いた正面に低く突っ込んでトライ。CVも成功し19-7。(前半20分)

3連続トライでリコーが勢いに乗るかと思われたが、試合は一進一退の展開に。前半32分、ハーフウェイ付近でのリコーのアタックでボールがこぼれると、これを拾ったHondaが右中間から左へ運びサイドチェンジ。11番がボールを持つと、左中間のスペースにボールを転がす。14番が反応しインゴールに達したボールを押さえトライ。CVも決まって19-14に。(前半33分)

さらに前半38分、リコーが自陣から蹴ったハイパントを確保したHondaは、大きなスペースが生まれていた右サイドにボールを運ぶと、13番が走りそのままインゴールに達しトライ。CVも成功し19-21と逆転する。(前半39分)

 

残り時間あとわずかな中でのリスタートキックはHondaに入る。しかし8NO8松橋とWTB長谷川が同時にタックルを仕掛けるとボールはこぼれる。

拾ったリコーが22mライン付近でキャリーを繰り返していく。ホーンが鳴るなか、SOロビンソンが右中間のギャップを抜けてゴールに迫る。Hondaディフェンスが襲いかかるが、懸命にボールを守ったリコーはSH山本が左へ長いパス。これがWTBロトアヘアアマナキ大洋と相手ディフェンスの間でワンバウンドするが、アマナキ大洋がしっかりボールをつかみ、相手を振り払いながら左中間インゴールに飛び込みトライ。CVははずれたが、24対21とリコーが再度逆転。ここで前半が終わる。

試合はシーソーゲームに。CTB濱野のトライで突き放したリコーが粘り勝つ

メンバー入替は行わずに後半へ。最初のチャンスはリコー。自陣のラインアウトからハイパントを上げようとしたHonda9番に対し、LOジェイコブ・スキーンがチャージ成功。パスが相手の足に当たってインゴールに転がる。なだれこんだリコーの選手が押さえにいったが、手につかずノックオン。

Hondaボールの5mスクラムをリコーはここも押す。インゴールからのHondaのキックはタッチを割るが、クイックスローインで継続しリコーがハーフウェイ付近からアタック。しかし10m付近でのSOロビンソンからのパスを狙われ、11番がインターセプト。11番は左中間を走りきりインゴールへ。CVははずれ24-26。(後半5分)

リコーは後半6分にPR柴田を大川創太郎に、11分にNO8松橋をコリン・ボークに入替。

中盤でHondaの力強いアタックをリコーがしのぐ拮抗した時間が続く。ハーフウェイ付近のスクラムをHondaがアーリーエンゲージ。ここはペナルティとなり、タッチに出したリコーが敵陣深くに攻め込む。ラインアウトモールは組まず、遠くで合わせて展開を狙ったがノックオン。

22mラインを越えたあたりでのHondaスクラム。ここでまたもリコーがコラプシングを獲る。左サイドのタッチに出しラインアウトを得ると、今度はモールを組み押していく。最初にNO8ボーク、次にLOロトアヘアポヒヴァ大和がグラウンディングを狙い成功しトライ。リコーがセットプレーの安定感でトライを奪う。CVははずれたが29-26。リコーはPR眞壁貴男に替えて辻井健太。(後半16分)

しかしシーソーゲームはなおも続く。直後のリスタートキックをHondaがキープ。23番の縦の突破などで22mラインを越える。粘り強くパスをつないで攻めリコーディフェンスを揺さぶると、左中間に生まれたギャップを21番が鋭く抜け、インゴールに達しトライ。CVはポストに当たりはずれたが29-31とリコーは再びリードを許してしまった。(後半19分)

 

僅差のまま残り20分に突入。リコーのリスタートキックの処理でHondaがノックオン。得たスクラムを押しリコーがここもコラプシングを獲る。ゴール正面、22mライン付近から、この試合初めてショットを選択。PGに成功し32-31。(後半21分)

そのすぐ後、リコーは自陣ディフェンスでハイタックルを犯し、30m弱のPGを狙われるがこれははずれた。(後半24分)

Hondaは終盤に入ってもアタックの力強さを保つ。リコーはタックルがやや高く勢いを止めきることができない。PGの直後のアタックでインゴールにボールを運ばれたが、直前のプレーでスローフォワード。トライはならず。

両チームへの声援も熱を帯びていくなか、25分にはFLポヒヴァ大和に替わり武者大輔がピッチへ。

後半29分、FL武者らが繰り出す低いタックルが決まり出しHondaの出足が止まると、Hondaにノットリリースザボール。得たPKでリコーは自陣からの脱出に成功。ラインアウトからアタックを仕掛けると、Hondaにハイタックル、オフサイドとペナルティが相次ぐ。SH山本に替わり中村正寿。(後半32分)

 

ゴール前で選択したスクラムを押すとHondaにコラプシング。アドバンテージが出た状態でFW中心のアタックでゴールに迫っていく。プレーが止まり、再びゴール前のスクラムとなると、ここも押し込む。

NO8ボークが真横に持ち出し離す。ボールを受けたのはCTB濱野。濱野はタックルを受けるもボディバランスで体勢を保ち、インゴールに持ち込む。大きなトライでリコーが突き放す。CVも決まり39-31とした。(後半37分)

後半39分、SOロビンソンを木上鴻佑、CTB牧田旦を高平拓弥、HO森を芳野寛に入替。最終盤Hondaが執念のアタックを見せ、リコーはディフェンスに回る。しかし、PGを許したもののトライは与えずノーサイド。39-34でリコーが勝利した。

 

3年連続の開幕戦勝利。マンオブザマッチはスクラムをリードし、また1トライも記録したHO森が選ばれた。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

自分たちのラグビーではなかったですよね。自分たちの試合じゃない。自分たちのスコアじゃない。そう思うのは自分たちのラグビーっていうものがイメージできている、わかり始めているということでもある。それは成長なのかな。

(ディフェンスがやや乱れた)問題はタックルの高さやコミュニケーションにあるのは確かですが、その前段の部分で、アタックですぐにボールを手放してしまったり、変なオフロードパスがあったり、ノックオンがあったり、エリアを獲りにいくキックが不用意であったりというのも影響していたと思います。ハイパント、コンテスタブルキックに対するチェイスのプレッシャーが弱く、その結果のアンストラクチャーな状況が相手に強みを発揮させてしまった面もあった。我々コーチングスタッフの準備不足でもある。ここを整備すれば苦しい状況でタックルにいかねばならない場面も減ったはず。そこには目を向けて反省したいですね。

次の東芝戦は真価を問われる試合。FW戦はもっとタイトになっていくと思うので、そこで負けないということが大事ですし、引き続き雨でスリッピーな状況というのも予想されるので、アタックにおけるボールキープ、50-50のパスを避けるといったことを徹底したい。正しいアタックをすることがいいディフェンスができる状況をつくるので。そこから修正していきたいですね。

CTB濱野大輔キャプテン

前半、シンビンが出で数的有利になったんですけど、そこで自分たちの首を絞めてしまったのと、うまくゲームコントロールをしきれなかったことですね。

自分たちはディフェンスが強みだったんですけど、(タックルで)少し高くいってしまったこともあり強みを出せませんでした。今日はHondaさんの勝ち試合のようなものだと思っています。ただ、勝利への貪欲さでは僕らは少し上だったのかなと。そこに尽きると思います。来週は東芝が相手ということもあり、こういう試合だとさらに厳しくなると思うので、一週間いい準備をして臨みたいです。

(勝利への貪欲さはマインドの影響も大きいのでは)マインドで言えば、今日はFBベイトマンの発案で、トライをした後とされた後に小さな円陣を組んで、2回深呼吸をして、そのあとリーダーが話すというのをやったんです。クルセイダーズでやっていることなのだそうですが、それはプラスになったと思います。次に何をやるべきかが頭に入っていく感じがあって、うまく切り替えられたので。こういうクロスゲームなどでは特に有効だと思う。ベイトマンのリーダーシップには助けられました。

(最後のトライは)自分たちで準備していたプラン。NO8が仕掛けて、スペースをつくるというのは頭に入っていたので。それが出せて良かったです。

PR眞壁貴男

(スクラムはやりたいことができていたのでは?)そうですね。スタートの森さんと柴田さんが前に出てくれたので。僕も前に出やすかったです。作戦がうまくはまったと思います。(ディフェンスは)キックを打ち出して、カウンターでプレッシャーを受けることが多かったですね。そこはチームでコミュニケーションをとって修正を図っていかないといけないですね。しっかり話せば大丈夫だと思います。

HO森雄基

スクラムでプレッシャーをかけようというプランでした。Hondaさんはギャップの小さいスクラムを組む印象だったので、自分たちはギャップをしっかりとって、リコーのスクラムを組もうと。前半は右の柴田の側から押して、後半は無理にペナルティをもらいにいかず、まっすぐ押しました。回していると見られないように、ディシプリンに意識を置きました。

試合を通じてほぼドミネイト(制圧)できたと思います。相手があまり正しくない押し方をしてきたときに、レフリーがしっかりと見てくれていたのもありがたかったです。(最初のトライ、こぼれ球によく反応した)ハイパントをキャッチにいっている場面がよく見えていたので。どっちかなと思ったけど、ラッキーでした。次もまずはスクラムで頑張ります。

 

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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