【Review】トップリーグ 第3節 vs コカ・コーラレッドスパークス戦

2018.09.19

いきなりのチャージも動揺なし。SO堀米が強気のプレー見せる

トップリーグ第3節は今季初のアウェイゲーム、福岡・レベルファイブスタジアムでのコカ・コーラレッドスパークス戦となった。

 

リコーはプレシーズンマッチでも安定した動きを見せていたルーキー堀米航平がSOで先発。ロビー・ロビンソンがFBに回った。またHO芳野寛、WTB渡邊昌紀も今季初のスターティングメンバーの座を勝ち獲るなど、新布陣でのゲームとなった。

 

コカ・コーラのキックオフをNO8松橋周平がキャッチして試合が幕を開ける。コカ・コーラはリコー陣内のラインアウトから攻め、22mラインに迫るが、WTBロトアヘアアマナキ大洋らが冷静にスペースを見極めて守る。スローフォワードでリコースクラムに。

 

左中間、自陣15m付近のスクラムから広いサイドへ。中央で味方がリリースしたボールを受けたSO堀米がキックを蹴るが、これをコカ・コーラ8番がチャージ、裏のスペースに転がったボールを12番、11番につながれる。SO堀米は自ら追いかけインゴールで11番を捕まえたものの左隅にトライ。CVはキックまでにトライ後90秒が経過したため無効となったが、0-5とコカ・コーラが先制する。(前半3分)

 

しかし、リコーはすぐさま攻勢に転じる。ハーフウェイ付近のラインアウトでボールを奪うと、ハイパントからのボール獲得などを挟みながら前進。右サイド、敵陣10m付近にラックをつくると左に展開。

 

FBロビンソンからSO堀米、さらにCTB濱野大輔とパスをつなぎラインブレイク。左中間で裏に出かけた濱野は外のWTBアマナキ大洋へパス。これが通り、アマナキ大洋は相手をひきずりながら左隅にトライ。SO堀米が蹴ったCVは外れたものの、リコーが5-5に追いついた。(前半8分)

 

前半11分、リコーは左サイドのハーフウェイ付近のスクラムからSH山本昌太が狭いサイドにキック。これがうまく転がり、22mラインを越えたところで相手選手に当たってタッチを割る。ゴールに近い位置でラインアウトを得る。

 

これをキープしてモール。持ち出したNO8松橋が中央のディフェンスを貫いてゲイン。ゴールが迫ると、リコーがピックゴーを繰り返しトライを狙う。

コカ・コーラにオフサイドのペナルティが出ると、リコーはスクラムを選択。何度かの組み直しを経て、リコーが優勢なスクラムにするとそのままドライブ。最後尾のNO8松橋がボールをコントロールすると、それを拾い上げ中央にトライ。CVもSO堀米が決めて12-5。リコーが勝ち越しに成功した。(前半17分)

 

ここから一気に引き離したいリコーだったが、やや攻めあぐねる時間が続く。フェイズを重ねていけそうな状況もつくったが、ノックオンなどが出て攻め込むことができない。自陣でのこぼれ球に反応したNO8松橋が足をかけゴール前まで転がしたが、よく戻ったコカ・コーラがボールをキープ。逆に蹴り込まれたキックの処理でミスが出てリコーにペナルティ。左サイド30mほどの位置からPGを決められて12-8。点差が詰まる。(前半30分)

 

リコーはディフェンスの安定感もあってスコアを許す気配はなかったが、コカ・コーラはうまくボールをつなぎリコーはアタックに入れない。しかし前半38分、自陣右サイド、22m付近のスクラムから、NO8松橋がブラインドサイドを突く。WTB渡邊につなぐと加速、ステップでディフェンスをかわし、一気にゴール前までボールを運ぶビッグゲインを果たす。

 

ここで追いついたコカ・コーラ10番に止められたが、リコーはボールをキープ、さらにFLのエリオット・ディクソンのピックゴーでゴールに肉薄する。そして中央から左中間へのパスを受けたFBロビンソンが身体を回転させながらグラウンディング。CVも決まり19-8。(前半41分)

ここで前半終了。リコーは主導権を握り続ける展開にはならなかったものの、それでも3つのトライを挙げる攻撃力を見せた。

FW、BKがそれぞれ持ち味発揮。後半入りの2トライで主導権握る

PR眞壁貴男を辻井健太に、柴田和宏を大川創太郎に入れ替えて後半が始まる。

 

22mラインまであと少しのポジションでラインアウトを得たリコーは、モールを組み前進。粘り強く押し左中間のゴールに迫っていく。ラックに移行するとピックゴーでディフェンスを破りにかかる。

ここも持ち込んだのはNO8松橋。後方からLOジェイコブ・スキーン、PR辻井が押し込むと左中間インゴールに達しトライ。CVも決まり26-8とした。(後半4分)

 

さらにリコーが攻める。自陣浅めのスクラムでFKを得ると、NO8松橋が持ち出して再開。SO堀米からのパスを走り込んで受けたFBロビンソンがギャップ抜けてゲインし敵陣侵入。CTBティム・ベイトマンにつなぎ左中間22mラインを突破。ラックから後方に下げると、SO堀米が右サイドにいたFLディクソンめがけてキックパスを蹴る。

 

これがディクソンと相手ディフェンスの脚に当たり跳ね返ると、これをWTB渡邊が拾いインゴールへ持ち込みトライ。CVも決まり33-8とリコーがさらに点差を広げていく。(後半8分)

 

リコーはHO芳野を森雄基に入れ替え。(後半12分)

 

これ以上は失点できないコカ・コーラが意地を見せる。コカ・コーラ陣内のラインアウトから攻めるリコーがボールをこぼすと、これを拾いターンオーバー。8番が右サイドタッチライン際を抜け、一気にゴール前まで走る。CTB濱野やHO森が詰め寄るが、内側をフォローした7番につながれ、そのままインゴールに押さえられる。CVも決まり33-15。(後半17分)

 

この後、試合は一進一退に。リコーはLOブロードハーストマイケルをロトアヘアポヒヴァ大和に、SO堀米をブライス・ヘガティに入れ替え。(後半21分)

 

後半22分、敵陣でPKを得たリコーはタッチに出し、右サイド、22mライン内側のラインアウトからモールで攻める。早めに展開し左サイドに回すがノックオン。しかしスクラムからのコカ・コーラのアタックを止め、逆にスクラムを得る。このスクラムでコカ・コーラにペナルティ。

ほぼ正面、30mほどの距離からSOヘガティがPGを成功、36-15。直後、リコーはSH山本昌太を髙橋敏也に、CTBベイトマンを牧田旦に、FL武者大輔をコリン・ボークに入れ替える。(後半27分)

 

最終盤、リコーとしてはボーナスポイントの懸かった3トライ差を巡る攻防となる。コカ・コーラは22mラインの内側でボールをつなぎフェイズを重ねていく。気迫のこもったアタックで何度かゴールライン上まで持ち込むが、リコーも集中力を見せ守りきった。さらにFBロビンソンのキックでエリアも奪い返す。(後半35分)

  

WTB渡邊、SH髙橋、CTB牧田といった面々が、出場機会への飢えをぶつけるかのようなアグレッシブなプレーで最後までチームを盛り上げる。最後の敵陣スクラムも強く押し、ホーン後も攻める。SH髙橋がインゴールに転がしWTBアマナキ大洋が走るが、これがデッドボールラインを割ったところでノーサイド。

 

リコーは36-15で今季2勝目。3トライ差も死守しボーナスポイントも獲得。勝ち点を10とし、ホワイトカンファレンス3位に浮上した。マンオブザマッチはフル出場を果たし、核としてチームを牽引したNO8松橋が選ばれている。

 

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

ハーフタイムでは、ビッグプレーでトライを獲ろうとせずに、フェイズを重ねて、我慢強くやっていればチャンスがあるということ。あとはセットプレーで優劣がついているので自信を持って戦おうと伝えました。

ただ、細かい部分を見るとコカ・コーラさんのスクラムにてこずっていた場面もあったので、そこは冷静に分析しないといけない。でもそこもメンバーの入れ替えやメンバーのコミュニケーションを通じて盛り返せたのは、評価したいと思います。

 

(SO堀米航平がデビュー)よくやったと思います。堀米は最初にチャージされましたが、あいつのいいところはハートの強さ。物怖じしない性格がすごく良いです。最初に洗礼を浴びると動揺する選手もいると思うのですが、すぐに自分を取り戻して、60分間しっかりプレーしてくれました。

(起用に至った経緯は?)前節の東芝戦の敗戦を受けて、少し自分の中で決断しました。まずロビー(ロビンソン)の特性を生かして、彼をFBで使ってみたいと思ったのが一番ですかね。ラインブレイクなども見せてくれましたが、すごく満足しています。スピードはもともとありますから。それで、ロビーを15番にするとして、では10番をどうするかというときに堀米が権利を持っていたということ。それでチャンスを与えました。試合をつくるという意味で、キックの安定感を重視したというのもありました。

(ディフェンスも安定してきた)去年のリコーでしたね。選手たちはけんけんがくがく、本当にいろいろなことを話し合っています。もっとよくなるんじゃないかなと思っています。

CTB濱野大輔キャプテン

試合前には、謙虚に、丁寧にプレーしようということを伝えて試合に臨みました。結果的にはようやく自分達のラグビーができたのではないか、というのが率直な感想です。しっかりディフェンスで前にプレッシャーをかけて、コーラさんのアタックを仕留めて、そして自分たちのアタック。ダイレクトにプレーしたなと。今日は本当にいいラグビーができたと思います。

課題は敵陣でのプレー。トライを獲りきれる場面で、ビッグプレーでトライを獲ろうとするような認識のずれがありミスにつながった。キヤノン戦では敵陣に入り込んだら必ずスコアすることを意識して、アタック、ディフェンスともに脅威を与えるラグビーをしたいと思います。(共同記者会見にて)

 

NO8松橋周平バイスキャプテン

(存在感を見せた)自分のなかでの手応えはありますが、もっとやれる。より高いレベルを目指しているので。満足せずにさらに成長したいなと。これを機にもっとステップアップできるように。(後半の入りにトライを奪い流れができた)継続ですね。敵は僕たち自身というのが今週のターゲットでもあったので、自分たちのラグビーをしようと。落ち着いて、獲り急がず、丁寧に。ハーフタイムにはそんなことを話しました。

(前半はそのあたりがあまりうまくいっていなかった)そこが僕たちの課題。「最初の20分」(に集中する)というフォーカスもあったんですが、いきなりトライを獲られて。ゲームプラン通りにいかないことは多いものですが、実現するための努力は大事ですよね。

(試合中に修正していけたのは収穫?)でもまだまだですね。ターンオーバーからシンプルなトライを獲られていますし。それは前の2試合でもそうだった。マインドの切り替え。どこかでスイッチオフしてしまう。(ボールを)獲られるのはしょうがない。その後どうするか。そこを大事にしたいです。

(通常のディフェンスはかなり改善されてきた)それは分析をしていて、コネクトしようと。僕らはラインスピード上げてなんぼなんで。でも、もっとできると思います。

 

SO堀米航平

緊張しました。(いきなりのキックチャージも)チームのメンバーがポジティブな声をかけてくれたので切り替えることができました。(その後は冷静にプレーできていたように見えた)そうですね。ロビー(ロビンソン)がサポートしてくれたこともあって。ロビーとの試合は初めてだったのですが、やりやすかったです。彼もSOなのでわかってくれていて。のびのびできました。

(初のトップリーグ、何か感じたことは?)大学とはまた違うハイレベルなところでした。両CTB、日本代表の2人(ウィリアム トゥポウ、ラファエレティモシー)は視野が広いなと。まだまだ満足はいっていないけれど、ファーストゲームという点ではやれたことも多かったのかなと。

 

前節の試合で負けて、少しこう(ネガティブに)なっていたところを、練習を通じて立て直すことができたと思います。成長できた試合だったのかなと思います。またチャンスをもらえたら自分の役割を果たしたいと思います。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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