【Review】トップリーグ 第7節 vs ヤマハ発動機ジュビロ戦

2018.10.25

先制PG、さらにトライ。リコーが試合の入りを制するも、ヤマハ発動機が巻き返す

パナソニックワイルドナイツから14年ぶりの勝利を挙げ、ホワイトカンファレンス4位以内を確定させたリコーは、最終第7節はそのパナソニックに替わってカンファレンス首位に立ったヤマハ発動機ジュビロとの対戦となった。前節と同じくSH髙橋敏也が先発。NO8コリン ボーク、SH山本昌太、CTBティム ベイトマンをベンチスタートさせる布陣で強豪に挑んだ。

 

快晴、強めの秋風の吹く大阪・万博記念競技場で試合が始まる。風下のヤマハ発動機のキックオフボールをFBロビー ロビンソンが低く蹴り返す。これをヤマハ発動機がこぼしリコーのスクラムに。リコーが強く押しコラプシングを奪う。中央約30mのPGをSOブライス ヘガティが成功。3-0とリコーが先制する。(前半3分)

 

再び低いキックでタッチに出したリコーが敵陣に侵入。ラインアウトからの相手のアタックにプレッシャーをかけると、ヤマハ発動機が裏へキック。これを拾ったFBロビンソンがキャリーしてリコーのアタックが始まる。

左サイドをWTBロトアヘアアマナキ大洋がゲイン。フェイズを重ね逆サイドまで運ぶと、今度はFLエリオット ディクソンが豪快なキャリーで前に出る。一旦内に戻しラックにした後、再び右サイドを突いたのはCTB濱野大輔。タックルを受けながらも身体を低く伸ばしインゴールへボールを届かせてトライ。CVも決まり10-0。リコーが試合の入りを制した。(前半6分)

 

再開のキックの争奪でヤマハ発動機にタックルインジエア。PKは追い風に乗って伸び、リコーは22mラインの内側でラインアウトを得る。これを起点に攻めるが、ノックオンが出てチャンスを逃す。

 

ここからヤマハ発動機はリコーの反則などを突いて前進。リコー陣内でアタックに入り、リコーは守勢に回る。自陣スクラムで負傷したPR柴田に代わって大川創太郎がピッチに入る。(前半15分)。

 

右サイド、ゴール前ラインアウトからモールをつくって押すヤマハ発動機。リコーは押し返すがオフサイド。アドバンテージが出た状態で中央に展開され、リコーはギャップに仕掛けた13番を止めきれずトライを許す。CVも決まって10-7。この攻防でFL武者大輔が出血で一時退出、ロトアヘアポヒヴァ大和が代わって入った。(前半20分/26分に復帰)

 

直後、リコーは攻め込むが敵陣22mラインの内側でノックオン。ヤマハ発動機は自陣右サイドのスクラムから、蹴らずつないで攻めていく。自陣22mラインを越えたあたりで7番が抜け出しゲイン。オフロードパスをつなぎリコー陣内深くに攻め込む。右サイドのタッチライン際にラックをつくると、パスを受けた12番が右中間のギャップを鋭く突いてトライ。CVも決まり10-14。(前半26分)

 

リコーはFL武者が治療を終えて戻ったが、LOブロードハーストマイケルが出血。ポヒヴァ大和は引き続きピッチに残る。(前半26分/前半35分に復帰)

 

再開後リコーは再び敵陣に侵入するも、ヤマハ発動機の激しいディフェンスに遭い前に出られない。しかし懸命にボールキープを図りチャンスをうかがう。

 

中央22mラインの手前でボールを持ったSOヘガティがパスダミーを入れるとこれにディフェンスが反応。ヘガティはわずかにできたギャップを鋭く抜ける。これを見て左をフォローしたSH髙橋につなぎ、左中間にトライ。攻めあぐねながらも、こじ開けて奪ったトライでリコーが逆転。CVも決まり17-14とした。(前半34分)

 

敵陣で前に出るディフェンスでプレッシャーをかけていくリコーだったが、ヤマハ発動機はワイドにボールを動かしプレッシャーを避けながら前に出ていく。数メートル程度のゲインを繰り返されたリコーは自陣侵入、さらには22mライン突破を許す。

 

10番が中央のギャップに仕掛けると、6番、13番とオフロードパスを繋いだヤマハ発動機が中央にトライ。CVも決まり17-21。再びヤマハ発動機がリードを奪う。(前半40分)ここでホーンが鳴り前半終了する。

 

リコーはセットプレーの精度や我慢強いアタックで2トライを奪ったが、ヤマハ発動機の自陣からの果敢なランやセットプレーからのアタックを阻めず、3つのトライを許した。

連続トライで後半23分に逆転。終盤逆転を許し、最後まで食らいつくも惜敗

リコーはメンバーの入替は行わず後半へ。最初のチャンスはヤマハ発動機に。10番のゲインでリコー陣内に攻め込むと、左サイドのラインアウトを得てモールで前進。22mラインの内側に入っていく。

 

展開後、リコーにオーバーザトップの反則が出るとヤマハ発動機はスクラムを選択。これをじわじわと押すと8番が持ち出し、12番につないでスクラムサイドを破る。12番はそのままポスト左にトライ。CVも決まり17-28。

 

試合の流れを決めかねない後半最初のスコアを奪われたリコーは、FL武者をロトアヘアポヒヴァ大和に、SH髙橋を山本昌太に、CTB牧田旦をティム ベイトマンに入替。流れを変えにいく。(後半9分)

 

再開のキックを確保したリコーは、10m付近から攻める。右サイドをWTB渡邊昌紀がゲイン。FBロビンソンのディフェンスラインの裏へのキックは相手に入り蹴り返されるが、その蹴り返しをSOヘガティがキャリーして再びアタック。右サイドを攻めていく。ヤマハ発動機のディフェンスも堅いが、LOブロードハーストマイケルが力で前に出て22mラインを越える。中央に展開、CTBベイトマン、SOヘガティの連携でさらに前に出ると左へ。

 

WTBアマナキ大洋が左サイドを突くが3人に囲まれ、パスを出すもつながらず相手に入る。芝生を叩き悔しがるアマナキ大洋だったが、切り替えて直後のラックからのパスアウトに反応。キックを狙うインゴールの10番にチャージを試みると、これが見事にヒット。掲げた両手に当たったボールはデッドボールラインギリギリの足元に落ち、これを押さえてトライ。左中間からのCVも決まり24-28としてリコーが食らいつく。(後半13分)

 

後半19分、FLディクソンをコリン ボークに入れ替えたリコーは、再び敵陣に入って粘り強く攻める。反則を誘い22mラインの内側のラインアウトを得るとこれをキープしモールを組む。

 

ラックに移行するとFL松橋周平、LOブロードハーストらがピックゴーでじりじりと前進。最後はFLポヒヴァ大和が身体を捻じ込んでグラウンディング。CVは外れたが29-28とリコーが逆転に成功する。(後半23分)

 

しかし再開後まもなく、リコー陣内でヤマハ発動機がスクラムを得る。左中間、ゴールまでは25mほどの位置のスクラムはイーブン。早めに出したヤマハ発動機は10番が中央のギャップを突破。リコーはタックルを決められず、ポストの真下に飛び込まれトライ。CVも決まり29-35。リコーはSOヘガティを小松大祐に入替。(後半27分)

 

再開すると蹴り合いとなるが、キック処理でやや乱れが生じたリコーは、チェイスしてきた選手にBKが囲まれピンチに。このラックで WTBに入っていた小松に故意の反則があったとしてイエローカード。10分間の退出を科される。(後半28分)

 

ヤマハ発動機はPKをタッチに出しゴール前ラインアウトにすると、モールを組み前進。リコーはうまくディフェンスできず、細長いモールで右中間を一気に押し込んだヤマハ発動機は2番がトライ。CVは外れたが29-40とリードを拡げる。(後半30分)

 

連続トライ、さらに数的有利を得ているヤマハ発動機が勢いに乗るかに思われたが、リコーは諦めない。再開のキックを確保すると22mライン手前でアタックを開始。ボールがこぼれるがヤマハ発動機のディフェンスに当たってタッチラインを割り、22mラインの内側でラインアウトを得る。

 

ここはモールを組まず展開。左中間から右サイドに回しFWが中心となって激しく攻めていく。ラックに駆け寄ったSH山本が、わずかに空いたのを見逃さずラックサイドを鋭く突いて抜ける。そのまま右中間インゴールに達しトライ。FBロビンソンがCVを決めて36-40。(後半34分)

 

最終盤、ヤマハ発動機が深めに蹴った再開のキックをキャッチしたリコーが自陣からゲインを図る。しかしヤマハ発動機ディフェンスのプレッシャーは激しく、ボールがこぼれてノックオン。リコー陣内22mライン付近でのヤマハ発動機スクラムに。組み直しが続き、時間が経過していく。

 

残り3分、ヤマハ発動機がアタック。22mラインの内側でリコーはディフェンスに追われ、さらにノットロールアウェイでヤマハ発動機にPK。ゴールは狙わず、蹴り出してラインアウトからトライを狙うヤマハ発動機。リコーはPR眞壁貴男を辻井健太に、HO森を芳野寛に入れ替え、さらにWTB小松がピッチに戻る。(後半39分)

 

ラインアウトはLOジェイコブ スキーンが手を伸ばしボールを奪いかけたが、惜しくもボールは相手サイドに。FWがボールをキープし時間を使うヤマハ発動機。リコーはなんとか奪おうとラックにプレッシャーをかけるが、80分経過のホーンが響く。ここでリコーにペナルティ。ヤマハ発動機が蹴り出したところでノーサイド。リコーは最後まで勝利への執念を見せたが惜しくも届かず、36-40で敗れた。

 

リコーはこの試合でボーナスポイント1を重ねたが、ホワイトカンファレンス4位だったクボタスピアーズが勝利したため、順位が入れ替わりリコーは4位に。12月より始まる順位決定トーナメント1回戦はレッドカンファレンス1位の神戸製鋼コベルコスティーラーズとの対戦が決定した。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はリコーの価値をさらに高められるチャンスだったのですが、結果は勝つことができず残念でした。ですがゲーム中、相手にセーフティリードを獲られる展開があったにもかかわらず、選手たちは必死に食らいついて、トライを獲りにいく姿勢を見せ、簡単に相手に安心させないようなゲーム展開を終始つくれたことには成長を感じます。まだチャンスはある状況ですので、この悔しさはプレーオフにぶつけて、また前に進めるように1ヵ月間準備したいと思います。

(プレーオフに向けて、7試合で見えた課題、修正点は?)今日のような失点の多くなるゲームはうちのスコアではない。安定的に20点以内に抑えられるような戦い方が終始できるようになれば、強みであるディフェンスをキーに戦うことができるので。安定的なパフォーマンスを出せるようにすることにこだわっていきたいと思っています。

(ハーフタイムは?)受け身のディフェンスでしたので、ディフェンスコーチの方から、ラインスピードを上げる、身体をスクエアにしてまっすぐ上がる。これらの強い発信がありました。実際そこはパフォーマンスとして実行してくれたと思いますが、相手がフィジカルの強さのあるヤマハ発動機さんということもあり、ブレイクダウンでじりじりとプレッシャーを受けるなどして、思うようにいかない部分はあったのかなと思います。【以上共同記者会見にて】

 

悔しいですね。もしあのまま勝っていても対戦相手は変わらなかったようですが。(よく粘った)簡単にやられないというメンタリティは、このゲームにおける収穫かな。ただ、このスコアはよくない。開幕戦のHonda戦のような感じでした。(ディフェンスで苦しんだ)ワイドスペースに運ばれすぎたというのはあります。特に前半、風下でチャレンジしてきたときにプレッシャーかけたかったんですけどね。

(一方でアタックではやりあえた)アタックのストラクチャー(構造)の部分ではだいぶ成長してきたなと。バリエーションにも成長した部分を感じます。30点を超える失点をしてこなかった相手に対して、これだけスコアしたわけですからね。

(スクラムからのアタックで失点がかさんだ)ビデオを見てからですが、あれだけスクラムにプライドを持っているチームですから、「まずはスクラム」となる。それも含めて彼らの強みなんでしょうけど。ただセットプレーそのものは相手の強みを消す戦い方ができていたと思います。最後にラインアウトモールを獲られたのは残念でしたけどね。今シーズンはモールトライをゼロに抑えようという目標があったのでコンプリートできなかったのは悔しいですね。

 

(3敗はしたが、すべてでボーナスポイントは獲った。このレベルからさらに上にいけるか)この1ヵ月の取り組みが重要。カップ戦を戦いながら神戸製鋼戦を見据えていきます。カップ戦3試合をどのように戦うかはほぼ決まってきているので、リーダー陣と相談しながら最終決定したいと思います。

(トーナメントは神戸製鋼との対戦となる)相手は1位のチームですから、チャレンジャーの意識をしっかり持って戦います。チャンスは十分あると思っているので、全精力を傾けて勝ちにいきます。ファンの皆さんには成長を感じていただけるゲームができるようになってきましたが、ここからは結果も出せるようにしていかなければいけない。次のフェイズに来ていることを感じています。

CTB濱野大輔キャプテン

今日の試合はリコーにとって真価が問われる試合だったと思います。前半は自分たちの勢いのいいアタックで先制点を獲っていい流れをつくれたのですが、前半の後半からヤマハさんがワイドなアタックで勢いづいてきて、ラインスピードが上げられず僕らのディフェンスが機能せず、そのまま自由にヤマハさんのラグビーをさせてしまったという試合だったと思います。でもこの試合で得られるものはありました。プレーオフ、ビルドアップするチャンスだと思うので、1日1日成長しながらやっていきたいと思います。【以上共同記者会見にて】

(諦めない姿勢は見せた)アティテュードは見せられましたが、結果は負けなので。先週の試合と比べると、今日の試合はマインドの部分で隙があったのかなと。1つのミスがピンチを招くことも学びました。プレーオフまで時間もありますし、あとはカップ戦ですね。普段出場できていない選手にもチャンスが来ると思うので、ワンチームとなりもっともっと活性化していけるように。(優勝を目標に掲げて、可能性残してここまできた)次、神戸製鋼ですよね。僕らはもっともっとビルドしていかないといけないですけど、初戦で神戸製鋼と戦えることにすごくワクワクしているというのもあります。全く恐れずに。もう一回チャレンジできるチャンスなので。(ワクワク感。楽しむということも大事)ベストプレーを出すぞ、例えばチョップタックルに自分が一番にいくぞ、そういった競争心を持って行こうと伝えています。改善点も見えてきたし、ポジティブにとらえてやっていきたいですね。

 

HO森雄基

(スクラムは昨シーズンに続いてよく対抗した)マイボールはキープできた。相手ボールのときも、ところどころプレッシャーをかけることができたと思います。自分たちのスクラムを組めているときはよかったのですが、相手に合わせてしまったときは受けたかなという感覚もあります。

(ヤマハ発動機のスクラムは独特だというが)特に相手のHOは僕にプレッシャーをかけてきていたように思います。自分たちの姿勢を崩さず、リコーのスクラムを組めばチャンスはあると思っていました。ファーストスクラムなんかはうまくいったので。それを毎回できるように。少し安定性がなかったので、修正したいですね。

 

(ディフェンスは前節のようなプレッシャーがかからなかった)後ろに帰っているときのディフェンスをもう少し、スローボールにするなどして、もう少し時間を稼げれば、うまく対応できたのかなと。相手のテンポに合わせてしまって、クイックに出されると僕らのコミュニケーションも少なくなってしまい、誰を見るのかといったようなことが話せなかった。それでFWのところを攻められてしまって……。

(80mつながれた場面など)あそこも戻る意識はあったと思う。戻りながらコミュニケーションをとるなどして、レベルアップするべき部分ですね。(次は神戸製鋼)(今シーズンの)神戸製鋼とやれて、よかったと思っています。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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