【Review】トップリーグ2020 第4節 vs NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2020.02.07

先制許すも、強さと技とスピードで連続トライ。リコーらしさ見せる

3戦を終え1勝2敗。つくりあげてきたものをグラウンドで出しきれず、フラストレーションの溜まる戦いが続くリコー。だが、目前の課題を整理し、1つずつ改善を図る姿勢で、状況を打開しようとしている。

 

第4節の相手はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)。昨季はトップリーグでの対戦はなかったが、その前の2シーズンは1勝1敗と星を分け、ともに中位から上位への飛躍を目指す好敵手という関係性が長く続いている。特に切れ味のあるアタックへの警戒を要する相手といえた。

 

リコーは前節のゲームでインパクトを与えたタラウ ファカタヴァがFLで、開幕戦でトライを挙げたアマト ファカタヴァがWTBで先発。前節はメンバーから外れたFBロビー ロビンソンを復帰させるなどのメンバーチェンジを行いこの試合に臨んだ。

今季初の関東でのゲームとなった今節、横浜市・ニッパツ三ツ沢球技場は、風はやや強いものの快晴に恵まれ、黒いウェアを着たファンがスタンドを埋めた。

 

NTTコムのキックで試合が始まる。キャッチしたリコーはCTB濱野大輔のキャリー、PR眞壁貴男のランなどで前進を図るが、ターンオーバーを許す。NTTコムはキックを左サイドへ蹴り、不規則に弾むボールの処理に手間取ったWTBアマトが捕まりタッチラインの外に押し出される。(前半1分)

 

左サイド、ゴール前のラインアウト。NTTコムはこれをキープ。モールをつくり内側に向かって斜めに押す。ゴールほぼ正面まで来ると右へ出し、右中間のトライライン目前にラックをつくる。その外側を8番が突く。リコーは力で阻みにいくが、6番が取り出しその外へ捻じ込む。映像確認を経てグラウンディングが認められトライ。CVは外れたが0−5。(前半4分)

 

FBロビンソンがキックを蹴り込み再開。キックを混じえ自陣から攻め上がろうとするNTTコムだったが、チェイスを試みた2番にラインオフサイド。リコーは敵陣中央、10mライン付近でPKを得るとショットを選択。SOマット マッガーンが低い弾道のキックで成功。3−5とする。(前半7分)

 

反則、ゴール前ラインアウトからのモールで再び攻め込まれるリコー。しかしディフェンスで粘りパイルアップとしてリコーのスクラムに。組み直しが続いたが、NTTコムに反則。リコーはPKをタッチに出し陣地を挽回する。(前半12分)

 

蹴り合いを経て、タッチライン際のラックで激しい攻防。ボールを守り切ったNTTコムは右から左へ大きく展開し、左サイド奥のスペースにキック。WTBアマトが処理にいくがノックオン。NTTコムは左サイドのスクラムから展開し中央〜右サイドを攻める。こちら側にリコーの選手を集めると逆サイドに大きく展開。やや後方へのパスを挟み前に出るリコーディフェンスのプレッシャーを消すと、13番から11番にパスをつなぎギャップ抜けトライ。CVも成功し3−12とする。(前半16分)

 

2つのトライを先に奪われる苦しい展開となったが、リコーはここから反撃を見せる。敵陣浅めの位置のラインアウトからボールをつなぐ。激しいディフェンスにも屈せずボールを守り続けるとSOマッガーンがギャップを抜けWTBキーガン ファリアにパス。ファリアは捕まり倒されるがすぐさまリリース。再度拾い直して前へ。

 

中央をLOロトアヘアポヒヴァ大和が、右サイドをCTB松本悠介が前に出ていく。LOデーモン レエスアスのキャリーからラックに。ここでNTTコムにホールディング。継続したリコーは右サイドをWTBアマトが突きゲイン。惜しくもタッチラインを踏まされたところで笛。リコーはPKをタッチに出し22mラインの内側でラインアウトを得る。

 

ラインアウトモールで右中間を押すリコー。ここで守るNTTコムに反則。アドバンテージが出たのを見て、中央のSOマッガーンが短く浮かせたボールを前方へ蹴る。ここに走り込んだFBロビンソンが見事にキャッチすると、そのまま中央にトライ。激しいアタックで反則を誘い、モール、そしてBKのスキルでトライを獲りきったリコーが点差を詰める。CVもSOマッガーンが成功させ10−12とする。(前半20分)


 

再開後、リコーは自陣からのキックをチャージされるピンチがあったが、跳ね返ったボールはデッドボールラインを割り難を逃れる。直後、自陣からFBロビンソンがブレイク。ハーフウェイを越え敵陣に入ると、フェイズを重ねながら左サイドへ。ここでNTTコムに反則。リコーはアタックを継続するがボールが動かなくなったところで笛。リコーはPKで前進し、左サイド22mライン付近でラインアウトを得る。

 

やや乱れたがリコーがキープ。22mライン付近でSHマット ルーカス左右に球出ししながらフェイズを重ねていくと、中央のギャップにFBロビンソンが身体を捻じ込みゲイン。つかまれると後方のSHルーカスへ後ろ手のオフロードパス。ルーカスは、ロビンソンのキャリーに引き寄せられ手薄になった右サイドにスライドしながらパス。WTBファリアが受け、22mライン付近の広いギャップを抜け加速。迷いのないランで右中間まで走りきってトライ。CVも決まり17−12とリコーは逆転に成功する。(前半26分)

 

リコーの連続トライに加え、前半28分にはCTB濱野を止めにいった15番がハイタックルで一時退出を科され流れが傾くかに見えたが、NTTコムがやや優勢なスクラムを生かしうまく対処する。さらに思いきったアタックを展開してみせて、リコーは受けに回ってしまう。自陣に侵入されると、ラックでのターンオーバーを狙うがオフサイド。PK でゴール前のラインアウトを与えることとなる。(前半35分)

 

NTTコムはラインアウトモールを押すと、8番が取り出し走り込んだ12番にパスを通し、そのまま左中間にトライ。数的有利を得たリコーだったが、反則からのチャンスを一発でスコアに繋げられて再逆転を許す。CVも決まり17−19。(前半37分)

 

前半終了間際の41分、スクラムで傷んだPR大川創太郎が千葉太一と交替。スコアは動くことなく前半が終了する。

「チャンスを仕留めきれるか」で明暗。アタックの形はつくるも届かず

リコーは前半終了時から、メンバー入替は行わず後半へ。後半は入りから身体をぶつけあう激しい攻防となる。リコーは前半同様のフェイズを重ね前に出ていくアタックを見せたかったが、NTTコムもプレッシャーをしっかりとかけ、それを許さない。一進一退の時間が続いた。リコーは後半7分にFLタラウをエリオット ディクソンに入替。

先にチャンスを迎えたのはリコー。敵陣浅めの位置でノットリリースザボールを奪いPKで前進。22mラインの内側で、ラインアウトからモールで押し込んでいく。HO森雄基がボールを持ちじりじりと前進するが、崩れてボールが出せなくなる。NTTコムボールのスクラムに。

 

リコー陣内へのキックで逃れるNTTコムに対し、カウンターアタックを仕掛けるリコーはディフェンスに阻まれタッチラインの外へ押し出される。しかし直後のラインアウトを奪い再びアタック。さらにボールを奪い返しに来たNTTコムがタックル時に反則。(後半10分)

 

ここでリコーはSHルーカスを山本昌太に、WTBアマトを小松大祐に入替。トップリーグにおけるリーグ戦通算100試合を達成した小松にスタンドから拍手が贈られる。

 

リコーはPKをタッチに出し、左サイドゴール前ラインアウトにする。ここもモールを押し左中間を前へ。SH山本が中央に仕掛け、ゴールまであと5mのところでリコーが荒々しく攻める。FWが縦に突きディフェンスを集めると左へ。SOマッガーン、FBロビンソン、そして大外のWTBファリアへ。

 

ファリアはわずかにトライラインに届かずラックに。左隅からSH山本は左中間に鋭く走り込んできたLOポヒヴァ大和にパス。だがボールがこぼれノックオン。ボールを確保したNTTコムはリコー陣内へ蹴り込みピンチを脱する。リコーは2度の敵陣深くでのラインアウトのチャンスをスコアにつなげられなかった。

 

NTTコムが攻勢をかける。10番の裏へのキックを拾いリコー陣内になだれ込むとさらに奥深くへキックし、これを14番がチェイスする。これにWTB小松が追いつき大きく跳ねたところをジャンプしてはたき後方へ。やはり追っていたFBロビンソンがこれに反応しボールを確保。SOマッガーンがタッチに蹴り出した。(後半13分)

リコーは直後のラインアウトでボールを奪い、LOレエスアスが鋭くキャリー。しかしボールがこぼれノックオン。リコー陣内ほぼ中央、10m付近のスクラムとなる。

 

ここでNTTコム9番は10番を使わず、左の12番、13番とつなぎ抜ける。そのまま独走を許し中央にトライ。CVも決まり17−26。(後半16分)

 

もうこれ以上の失点は避けねばならないリコーは、敵陣浅めでスクラムを得るとNO8松橋周平が持ち出し走り込んだCTB濱野にパス。濱野が中央を前に出て22mラインを越える。さらにFLディクソン、NO8松橋とつないだ。プレッシャーをかけるNTTコムはパスを奪いにいくがノックオン。リコーのスクラムに。(後半18分)

 

敵陣22mライン内、右中間のスクラムからリコーは展開。SOマッガーンからのパスを、ディフェンスの出足を見てFBロビンソンが手で弾くようにして左へ。これをWTBファリアが追いつきキープ。左中間をLOレエスアスがキャリーするが、相手ディフェンスにつつまれ、モールアンプレアブルでNTTコムボールとなる。互いに反則でチャンスを得たが結果は対照的なものとなった。(後半20分)

 

残り20分をきり、互いにキックでチャンスをうかがう展開となる。リコーは相手8番を止めにいったCTB松本が出血。さらに自陣にボールを蹴り込まれピンチを迎えるがNO8松橋らの対応でうまく逃れる。

 

プレーが切れたところでCTB松本に替わり浜岸峻輝。また、相手のランナーの突破を阻んだWTB小松に対する相手選手のラフプレーがなかったか、映像確認が行われたが不問とされた。(後半25分)

 

リコーは自陣中盤の相手ラインアウトでモールコラプシングを犯し、PKでゴール前ラインアウトのピンチを招く。NTTコムはこれを押し右中間を前進。中央でボールをキープして激しく攻めたてる。ここで外に張っていた14番が余っているのを見て右へ。14番にボールが渡るとインゴールの右隅に飛び込まれトライ。CVも成功し17−33。残り10分強、2トライ2ゴールでも届かない16点差がつく厳しい状況となる。(後半28分)

 

リコーは後半29分にHO森を小池一宏、同30分にLOポヒヴァ大和を柳川大樹に入替。意地を見せたいリコーだったが、なかなか戦況は好転しない。自陣でのNTTコムのアタックへの対応が続く。後半34分にPR眞壁に替わり辻井健太が入る。

 

残り5分を切ったところで、自陣最奥でのスクラムでFKを得るとNO8松橋が速攻を仕掛けエリアを挽回する。一度ボールを失うが、ラックで奪い返し再びアタック。WTB小松、SOマッガーンがギャップに身体を捻じ込んでいくとチームに再び勢いが生まれてくる。

 

P Kで得たラインアウトからのアタックでWTBファリアがゲイン。PR辻井が力強いキャリーでさらに前へ。そして、右中間のギャップをCTB濱野が抜けゴール目前までゲイン。ここで右についたCTB浜岸にパスしインゴールに達するが、グラウンディングのち前に相手に包まれアンプレアブルに。

 

このアタックでNTTコムにハイタックルの反則があったとして、リコーボールが続く。80分経過を知らせるホーンが鳴る中、SOマッガーンが左中間でリスタート。22mライン付近でリコーが攻め立てる。

 

NTTコムに今度はホールディング。再度リコーがリスタートする。右のスペースが空いているのを見てリコーはWTB小松にパスをつなぐが惜しくもノックオン。ここでノーサイドの笛が吹かれ17−33でリコーは敗れた。

 

チャンスの数はリコーのほうが多かったといえるかもしれない。ディフェンスも差し込まれる場面は減り改善の兆しが見えた。次節は2月15日(土)、兵庫県・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場での神戸製鋼とのゲームとなる。昨季のチャンピオンに対し、前を向き猛然と立ち向かうことで、何かをつかむ一戦としなければならない。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はどうもありがとうございました。素晴らしいスタジアムで、たくさんのお客様に来ていただき大変嬉しく思います。なんとか勝ってチームを浮上させたかったのですが、結果がついてこなかったことは残念です。ただ選手たちは一生懸命プレーしてくれています。過去3節の課題を修正し、シンプルにしたプランを実行してくれて、前半を中心にこれからに向けて活路を見出せるようなシーンがたくさんありました。それをこれからの自信につなげていけるように準備していければ。次の試合までは少し時間が空くので、自信を取り戻すための期間にします。【以上共同記者会見にて】

 

結果が出ないと、「何をやってもうまくいかない」という不安にさいなまれるもの。そうならないようにするのが僕らの一番の仕事。コーチにもシンプルなメッセージをお願いしていて、「意外と問題点はそんなに多くないんだ」と感じてもらおうとしてきました。今日もアタックをシンプルに変えて、最初にダイレクトにいくことで、いいアタックができていましたしね。

ディフェンスは逆にリコーのスタイルに戻りきれていないので、さらにシンプルなメッセージを伝えていく必要があります。少し積極性がない。コネクトして全員でプレッシャーをかけたいんですけど、うまくいっていないですね。前提となる個人のタックルの成功率が下がっているのもあるのですが、昨季はできていたわけですから。どうしてできなくなっているのかを考えて、それを改善するのに適したシンプルなメッセージに変えて伝えなければいけない。選手たち、特にリーダー陣がなんとか状況を変えたいと必死にやってくれているので、僕らもそれを手助けできるように頑張りたい。

勝たなければいけない世界ですから、厳しく問題を追い求めなければいけないのはわかっています。ただ、選手たちは100%の頑張りを見せてくれていますので、いいところにも目を向けながら戦っていきたい。

NO8松橋周平共同主将

ありがとうございました。小松(大祐)さんの100キャップということもありましたし、僕らとしてもどうしても勝ちが欲しい試合でした。ただ、前の3試合に比べできた部分は多かったので、そこはポジティブに考えたい。

大事な場面で簡単に獲られてしまったことなどは課題。敵陣深くに入ったときに獲りきれるかという部分でNTTコムさんとの差が出たように思います。次の試合まで2週間あるので、成長していきたい。

(獲りきれなかった理由は?)自分たちはモールを強みとしていたのですが、いいセットアップできて前に出れて、このままいけばトライできそうだというときに、NTTコムさんはいいリカバリーをしてきてフッカーまでプレッシャーをかけてきて、パイルアップになったプレーが3回くらいありました。あれでリズムが崩れていった。モールで獲りきるのはとても大事。

あと、「シンプルに」「ダイレクトに」ということを大事にしていたのですが、裏のプレーをして自分たちにプレッシャーをかけ相手ボールになってしまったこともあった。大事なところこそシンプルにやらなければいけなかった。【以上共同記者会見にて】

HO森雄基

(試合の流れをつかみきれなかった)ディシプリン(規律)のところですかね。オフサイド、ジャッカルのところ。ペナルティを与えリズムに乗れなかった。アタックを継続していれば、いい流れがつくれていた。その流れを切らさずにできていれば。NTTコムさんはディフェンスの2人目の寄せが速く、いいテンポで出せなかった。2人目の速さを意識して対抗したのですが、絡まれる場面は多かった。そこがもう少し改善できれば、いいテンポでBKにボールが出せるのかな。そこかな。歯車が噛み合えば。

スクラムはマイボールでミスしてしまった場面もあり、それもリズムをつくれなかった理由ですね。重いスクラムでした。組み方を少し変えて対策はしていたのですが。次の神戸製鋼戦では攻めるスクラムを見せられれば。

LOロトアヘアポヒヴァ大和

(アタックはよかったのでは?)クリアにやることが決まっていて、それがよかった。1人1人自分の仕事がわかってピッチに立っていたと思う。あとはフィニッシュのところ。(セットピースではドミネートには至らなかった)一番大事なところ。相手がプレッシャーをかけてきたこともありました。帰ってレビューしたい。足りないところをクリアにできれば押しきることもできる。モールディフェンスはよかったと思う。頑張って耐えることができました。神戸製鋼戦はチャレンジになるけれど、本当のリコーの力が出せればいい戦いができる。

SOマット マッガーン

(前半はいいアタックでトライが獲れていた)シンプルにと考えていました。ゲインラインを意識して、ブラックラムズラグビーを取り戻すことにフォーカスしていました。いいセットピース、いいキャリーをして、ハードワークをする。

(フィニッシュの部分をデザインする役割だが?)いい方向に進んでいると思う。今日のバックスラインは今年初めてのメンバーで、これからさらに信頼感を高めていく必要がありますが、最初としてはよくできたと思う。(FBロビー ロビンソンとの連係はとてもよかった)彼とはニュージーランドの同じチームでプレーしていたので、お互いをよく知っているんです。だからまたコネクトできたのはよかった。

(スタンドオフとして面白いなと思っている選手は?)WTBアマト(ファカタヴァ)だね。大卒1年目で、FWからBKに転向して、プレシーズンの期間でも成長しているのがわかった。練習に対する姿勢もいいし、これからが楽しみな選手だと思います。

WTB小松大祐

(トップリーグ100試合出場達成。意識は?)意識してしまうとダメなので(笑)チームが勝つために自分の仕事をするだけと考えて準備していました。でも途中出場した時の歓声がすごくて、少しびっくりしました。嬉しかったですね。

(キャリアとして100試合を目標にしたりは?)明確な目標にしていたわけではありませんが、それを達成すれば、身体がそこまで大きくはなく、有名校出身でなくてもトップリーグでやれるんだということをアピールできるかなという思いはありました。あとは応援してくれている方たちが僕以上に100試合を心待ちにしてくれていたので、その期待に応えられたことも嬉しいです。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

PAGE TOP