【Review】トップリーグ2021 プレーオフトーナメント2回戦 vs 東芝ブレイブルーパス

2021.05.13

絶好調のスクラムで東芝を制圧。奪った反則をチャンスにつなげスコアに成功

ホワイトカンファレンス4位でファーストステージを終えたリコー。プレーオフトーナメント初戦となった2回戦は、レッドカンファレンス5位の東芝ブレイブルーパスと戦うこととなった。愛知・パロマ瑞穂ラグビー場は清々しく晴れ、ベストに近いコンディションに恵まれたが、その陽気とは相容れないどこかピリピリしたムードもあった。

 

トップリーグでは最後にノックアウトトーナメントを設けるフォーマットは何度も採用されてきたが、多くは順位を決定するために敗れた後もゲームが続いた。しかし今シーズンはそうした位置づけのゲームが存在せず、敗れればその時点でシーズンの終了が決まる。緊迫感はその事実がもたらすものだったのかもしれない。

メンバーは最終盤の2連勝を支えたメンバーをほぼ踏襲。前節の日野戦からの変更は、リザーブのLO柳川大樹をWTB山村知也に入れ替え、BKの枚数を増やすのみに留まった。リコーはファーストステージ7試合で、神戸製鋼戦を除く全ての試合で後半に2ケタ失点を許している。それは愚直にリロードを繰り返し、フィジカリティと運動量の双方で相手に立ち向かうラグビーの負荷の大きさを表してもいる。リコーにとって、後半をいかに戦うかは、トーナメントを勝ち上がるための大きなポイントといえた。

 

荒々しいプレーでチームを鼓舞するNO8ベン ファネル、経験と強気な仕掛けが光るSH山本昌太、試合展開に合わせ複数のポジションに入ることができ、いずれも高いクオリティでプレーできるユーティリティBKメイン平ら、リザーブ陣にかかる期待は大きなものとなった。

 

東芝は左奥、WTBネタニ ヴァカヤリアにキャッチさせるキックで試合を始める。リコーのリターンを受けて東芝がアタック。ワイドにボールを動かしながらフェイズを重ね、リコーのディフェンスに食い込み前進。リコーはラインを保ちながらタックルを繰り出す。しかし、突破こそ許さなかったがじりじりと後退。

 

ミスも出さず攻める東芝は22mラインの内側に侵入すると、右中間で13番がディフェンス2人に捕まりながらオフロードパス。これが14番に通り、インゴールに持ち込まれトライ。東芝が先制し0−5。CVは外れたが、リコーはノーホイッスルトライで失点を許す。(前半4分)

 

リコーは右中間深めにリスタートキック蹴り込むと、直後の相手のミスで敵陣22mラインの内側でスクラムを得る。押し合いを経てリコーがボールを出しアタック。相手のノックオンで一度スクラムをもらいここから中央を攻めるが、ボールがこぼれ奪われる。東芝はインゴールまで下げてタッチキック。リコーは左サイド、22mライン付近でラインアウトを得る。

 

ラインアウトモールを組み左中間を押していくと、HO武井日向が右に飛び出し、その内側、モールの脇に走り込んできたWTBキーガン ファリアに戻すパス。ファリアのキャリーから継続し中央を攻めると東芝にノットロールアウェイ。アドバンテージが出た状態でFBマット マッガーンが長いキックパスを狙うが、これは外のFLブロードハーストマイケルには入らず。

 

正面やや右、22mラインを越えたあたりの位置のPKは、一度タッチに出そうとする様子もあったが、ゲームキャプテンを務めるFL松橋周平が改めてショットを指示。FBマッガーンがこれを成功させて3−5。トーナメントらしいスコアリングでリコーが点差を詰める。(前半9分)

 

東芝は再びWTBヴァカヤリアにキャッチさせるキックで再開。リコーはSH髙橋寿也がハイパントを蹴り込み、これを受けてキャリーした東芝6番を捕まえると密集でターンオーバー。すかさず展開するもパスがつながらず、ボールはもう一度東芝へ。ハーフウェイ付近から右サイドをえぐられるが、なんとか止めてこぼれ球を確保する。しかしリコーにノックオンがあったとして、ハーフウェイを少しリコー陣内に入ったところでの東芝スクラムで再開となる。(前半11分)

 

このスクラムでFWが力を見せる。右のPR笹川大五が激しく正面からやりあい、続いてPR西和磨らが担う左側が押し込んでいく格好で東芝を圧倒していくと笛。リコーがスクラムペナルティを奪う。PKで前進し左サイドの22mライン付近でのラインアウトとする。奥で合わせ、BKで中央を攻めると守る東芝にオフサイド。再び22mラインの内側でのPKをもらったが、タッチラインの外に出しラインアウトとする。

 

左サイド、ゴール前のラインアウトからリコーはモールを押す。抵抗を受けたがうまくコースをずらしながら押し切ると、左中間インゴールに到達しHO武井がグラウンディング。CVも成功しリコーが逆転、10−5とする。(前半16分)

 

再開後、東芝がボールをワイドに動かしながら突破を図るが、リコーはディフェンスが前に出てスペースを与えず、ランナーの自由を奪っていく。そしてSH髙橋の果敢なタックルで倒した後にFL松橋、LOロトアヘアポヒヴァ大和が素早く寄せ東芝にノットリリースザボール。PKで再び東芝陣内に入っていく。

 

10mライン付近のラインアウトも奥で合わせ、中央をCTBロトアヘアアマナキ大洋がキャリー。鋭く抜けかけたが、足首に手がかかって倒されノックオンの判定。東芝のスクラムとなる。このスクラムでもリコーは優位を保つ。PR笹川らが強く押し、リードするかたちで再びスクラムペナルティを奪う。

 

PKでゴール前まで前進しラインアウトからモールを組むリコー。トライラインが近づいたが、前進が止まるとHO武井が持ち出す。そこからピックゴーを繰り返しFWがトライを奪いにいく。FL松橋が右中間のラックサイドを破ったかに見えたが、映像確認の後にノートライの判定。だが、松橋に対しノーバインドタックルがあったとして東芝にペナルティ。(前半22分)

 

リコーはスクラムを選択。組み直しを経てここも押し込む。左中間から中央方向に押すと、ボールをピックしたSH髙橋が正面の相手9番をかわし、FWがいない広く空いたギャップを突き左中間インゴールへトライ。2本続けてスクラムからチャンスをつくってのトライとなった。CVも決まって17−5。(前半25分)

 

再開後は東芝がリコー陣内浅めでアタック。リコーはここもひたすらリロードし、スペースを奪うランナーを走らせないディフェンスを見せていく。しかし、タックルにいったCTBロトアヘアアマナキ大洋が頭を打ち、脳震とうの疑いがあるとして一時退出。代わってメイン平が入った。(前半28分)

 

リコーはこの一時交替後の再開のスクラムでも右から崩し、ペナルティを奪って敵陣に入っていく。さらに相手のドロップアウトがダイレクトでタッチラインを割ったことから、リコーはほぼ中央、22mライン上の位置でスクラムを得る。ここは左に出しSOアイザック ルーカスがギャップに仕掛けるが、やや孤立したところで激しいディフェンスに遭いボールを奪われる。東芝はこのボールをワイドに動かしながらゲインを狙うが、リコーが食らいつきノックオンを誘った。(前半35分)

 

ハーフウェイ付近のスクラムをまたもリコーが押しペナルティを奪う。PKをタッチラインの外に出し、左サイド、22mライン付近のラインアウトとしたリコーは、このボールを失ったものの直後のディフェンスでプレッシャーをかけ、チャンスをうかがっていく。すると、HO武井、NO8エリオット ディクソン、LOジェイコブ スキーンがランナーを捕まえ、東芝にノットリリースザボール。ほぼ正面、22mラインまであと数mという場所からのPGをFBマッガーンが成功させ、リコーは20−5とする。(前半39分)

 

残り時間わずかとなった前半最終盤、積極性を保ったリコーは右サイドのタッチライン際でWTBヴァカヤリアに繰り返し走らせゲインしたが、トライまではもっていけずそのまま前半は終了した。

東芝の反撃に耐えた15分。FL松橋の勝利を導く会心のジャッカル

リコーは一時退出していたCTBロトアヘアアマナキ大洋をメインに正式に入れ替えたほかはそのままのメンバーで後半へ。2トライ2ゴールでも追いつけない15点差を築いたリコーにとって、次のトライは勝利を大きく引き寄せるものといえた。FBマッガーンのキックオフボールを追いかけ、激しいディフェンスから入っていく。


 

右サイドのエッジを走る6番を押し出すと、ラインアウトからブラインドサイドをNO8ディクソンが突く。ラックでボールを失うが、直後に奪い返して後方のBKに長いパスを通す。サイドチェンジを図ると、FBマッガーンがグラバーキックをゴール前に転がす。WTBヴァカヤリアが迫るが、わずかな差で東芝が確保する。しかし、キックアウトを狙ったボールを、FBマッガーンがタッチラインの外でキャッチしてクイックスローイン。中央、ハーフウェイ付近のSOアイザック ルーカスに長いパスをつなぐと、ルーカスが左サイドのスペースを狙う。22mライン付近でディフェンスをかわし抜け出すと、外をフォローしたCTBメインにパス。メインはインゴール左隅に向かって走りトライかと思われたが、相手ディフェンスがわずかに先に追いつき、引きはがしタッチラインの外に投げ飛ばす格好に。映像確認の後にノートライとなる。(後半3分)

 

東芝はゴール前ラインアウトからキックを蹴り出し、リコーは左サイド、22mライン付近でラインアウトを得る。左中間のドライビングモールからHO武井が早めに持ち出して、再びBKを使うサインプレー。しかしうまくつながらずノックオン。

 

東芝スクラムとなるが、ここもリコーが完全に押し勝ち、スクラムが崩れた後の密集でボールを抱え込んでしまった東芝に反則。リコーはPKを蹴り出してゴール前ラインアウトにする。再びモールでトライを狙うリコーだったが、東芝が意地のディフェンスで前進を阻む。ラックとなり、ボールを守りながら攻撃を仕掛けようとするリコーだったが、キャリーしたPR笹川がリリースしたボールに手をかけられ、サポートはクリーンアウトを狙うが倒れ込みの反則。PKで陣地を挽回される。(後半7分)

 

ハーフウェイ付近の攻防で出血したPR笹川が一時退出、替わって千葉太一が入る。またHO武井が小池一宏と入替。(後半8分)

 

リコーはラックでの東芝のオフサイドで得たPKで前進し、またも敵陣22mラインの内側へ。ラインアウトから組んだモールは対応されるが、ボールを動かしてディフェンスを揺さぶると、ハイタックルのアドバンテージが出たのを見てSOアイザック ルーカスが短いキックパスを右中間から右サイドに送る。これをWTBヴァカヤリアがキャッチしラックに。ヴァカヤリアはSH髙橋が巻き込まれたのを見てボールを取り出すと、大外のNO8ディクソンにディフェンスの頭の上を通すパスを出す。ディクソンはインゴール右隅にグラウンディングを図るが、惜しくもこぼれノートライ。

 

リコーはPKを使ってもう一度ラインアウトからのドライビングモールで攻めるが、東芝の執拗なディフェンスに苦しみ、トライラインに迫ったLOスキーンがノットリリースザボールを取られボールを失う。(後半11分)

 

3度のトライチャンスを逸したリコーは、NO8ディクソンをファネルに、SH髙橋を山本に入替。チームへエナジーを与え、テンポを上げることで主導権の掌握を狙う。(後半12分)

 

しかし、リコーは敵陣のラインアウトでノットストレート。さらにラックからの球出しに手をかけオフサイド。反則の連続で自陣に後退させられる。ここでPR西を眞壁貴男に入替。一時退出のPR笹川も復帰する。(後半17分)

 

リコーはさらに反則が重なり、パスをもらう前の選手にタックルを仕掛けてしまう。PKで前進を許し、22mラインの内側への侵入を許す。東芝はラインアウトから連続攻撃を仕掛け、リコーはブレイクダウンに仕掛けターンオーバーを狙っていくが、LOロトアヘアポヒヴァ大和がクリーンアウトしラックから離れた選手を妨害してしまいペナルティ。ノットストレートから4連続の反則でリコーに苦境が訪れる。ここでLOロトアヘアポヒヴァ大和をデーモン レエスアスに入替。(後半20分)


 

右サイドのゴール前ラインアウトからモールを組んだ東芝はこれを押し込んで2番がトライ。CVは左のポストに当たり外れたが、20−10と点差が縮まった。(後半22分)

 

再開後、蹴り合いを経て東芝は右サイド、リコー陣内10mライン付近のラインアウトを得る。これをキープしポイントをつくると、パスをつなぎ14番にボールを持たせる。深めの位置から加速してディフェンスラインに突っ込むと、危険を察知して止めに入ったSOアイザック ルーカス、FL松橋を続けて押しのけ中央を抜ける。サイドに寄っていた最終ラインが追いかけるが届かず、そのまま加速しポスト直下にトライ。東芝が個人技でトライを奪う。CVも決まり20−17となり、リコーのリードはわずか3点となる。(後半25分)

 

残り15分で3点差。試合の行方は全くわからなくなった。勢いに乗る東芝は、ハーフウェイ付近のブレイクダウンでターンオーバー。このボールを使って攻める。リコーは一度ボールを奪うも、手につかずこぼれ球がタッチを割る。東芝のラインアウトは合わずオーバーするが、これを拾ったNO8ファネルに激しくプレッシャーを浴びせ、ノットリリースザボール。点差が縮まり、東芝は一気に息を吹き返し力をみなぎらせていく。

 

しかし、リコー陣内中盤ほぼ中央のスクラムで東芝にコラプシング。PKで前進しリコーは敵陣に入るが、直後のラインアウトでミス。東芝がボールを確保しアタック。これを止めに行ったCTBメインのタックル後のリリースが遅れてしまいホールディングの反則。前半はうまく回っていた歯車が狂い、苦しい時間が続く。ここでWTBファリアを山村知也に入替。(後半30分)

 

右サイド、リコー陣内22mライン付近の東芝のラインアウトは乱れるが、これも東芝に入る。スペースを探りサイドチェンジを図る14番に対し、CTB栗原由太らが猛然と迫り止める。直後のパスの乱れでこぼれたボールを確保したリコーは、後方にパスしSOアイザック ルーカスがキックを蹴りタッチを割る。ルーカスはチャージにきた相手選手と交錯し転倒。だがレイトチャージとは見なされず、逆にルーカスへのパスが22mラインを挟んでいたとしてダイレクトタッチと判定され、リコーはゴール前10mの位置での東芝ラインアウトというピンチを招いてしまう。

 

左サイドからのラインアウトで、東芝はまずモールを組む。競ることなく備えたリコーとの押し合いとなるが、動かないとみるや中央にパスを出しキャリー。ここでリコーにノットロールアウェイの反則。アドバンテージが出た状態で東芝はワイドに振り、外を狙うが、WTB山村が確実にランナーを止めて前進を阻む。東芝が前に出られなくなると、反則のあった位置に戻っての再開となる。

 

ウォーターブレイクを挟み、ゲームキャプテンのFL松橋が規律の改善をチームに伝える。スタンドからは声援の代わりの手拍子が繰り返し打ち鳴らされた。(後半33分)

 

PKを経てゴール前ラインアウト。東芝はモールで押しインゴールへなだれ込む。映像確認が行われたが、最後まであきらめずに絡んだリコーの黒いジャージがグラウンディングは阻んでおりノートライ。ただし東芝ボールの5mスクラムとなり、リコーのピンチは続く。(後半34分)

 

勝敗を決するスクラム。一度目は中央から落ちて組み直しとなる。そして二度目、セットの声がかかる前に、スクラムがバランスを崩したのを見てレフリーが長い笛。高く上がった左手はリコー側に。リコーはスクラムでプレッシャーをかけ続けてきたことが誘ったともいえる相手のミスに救われPKで前進。ゴール前を脱出する。(後半36分)

ここから歯車が一気に噛み合い出す。自陣中盤、右サイドのラインアウトでやや相手側に飛んだボールをFLブロードハーストがえびぞりのようにして確保しモールを組む。時間を使いながらゲインしていく。そしてSH山本がハイパント。ボールをキャッチした相手選手をWTBヴァカヤリアがしっかり待って受け止め身体の自由を奪う。そこにNO8ファネル、HO小池らが寄せてプレッシャーをかけていく。

 

前半のようなディフェンスが戻ってくるリコー。ワイドにボールを動かす東芝だが、前に出ることはできない。プレッシャーを避けるべく深めのラインでボールを回すのを見たNO8ファネルが猛然と前に出て捕まえると、続いてFL松橋が迫る。タックルを受けながらもこらえていた20番を倒すと、即座に手を伸ばしボールに仕掛ける。

 

低くしっかりと自立した足腰だけが見えている状況に、スタンドのリコーファンがジャッカルを確信しどよめく。直後、ブレイクダウンの中を確認したレフリーのリコー側の腕が上がり長い笛。松橋の値千金のジャッカルで東芝のノットリリースザボール。苦しい時間を耐え抜いたリコーにビッグプレーが飛び出した。(後半36分)

 

PKでゴール前まで前進したリコーは、ラインアウトからモールをつくり右中間ゴールに迫る。崩れた瞬間に鋭く飛び出したのはHO小池。SH山本、CTBメインが即座にサポートに入り、さらにFLブロードハースト、PR眞壁らが一気にトライライン上になだれ込み、両チームが激しく入り乱れる。

 

その直後、東芝7番が奪いかけた持ち上げたボールが手からこぼれ、ディフェンスをクリーンアウトしたのちラックの右後方に戻っていたSH山本の手に入る。山本はすかさずグラウンディング。トライが認められると、FL松橋が山本を抱え上げて称えた。CVも成功し27−17。残り時間を考えれば、ほぼ勝利を決したスコアにリコーが成功する。(後半39分)

 

PR笹川を千葉に入れ替え、残り1分を切った状態で東芝のリスタートキックへ。80分経過のホーン後、リコー陣内中盤、中央のスクラムからのアタックで、21番にギャップを抜かれトライとCVを許したが、そこでノーサイド。リコーは27−24でプレーオフトーナメント2回戦に勝利。8強入りを果たし、準々決勝に臨む権利を得ることとなった。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はありがとうございました。こういう状況の中で、試合を開催できるように全力を尽くしてくださったスタッフの方に、また足を運んでいただいた両チームのファンの方々に、御礼申し上げたいと思います。本当に厳しい試合でした。我々としては、前半いい形でスコアできたんですけれども、その流れを後半まで続けることができませんでした。やはり東芝さんのファイトは非常に強かったです。最終的にスコアを上回れたのはよかったですが、どちらが勝ってもおかしくない試合でした。我々はリーグ戦で厳しい接戦を落としてきたので、こういう形でスコアを上回れたのは、チームが成長している証拠なのかなとも思っています。

(若いフロントローが出場し、前半だけで4つペナルティを獲った。東芝のようなチームにいいスクラムが組めている要因と、今日の試合が若い選手たちに与えるであろう影響について)そうですね。今日のスクラムはチームがスコアで上回れた大きな要因のひとつ。若いメンバーも日々成長するスピードが加速していっていると感じています。それには日頃からスクラムの練習で相手として組んでくれているベテランのPRの選手であったり、FWの選手たちの力というのも欠かせないですし、若い3人は吸収するためにすごくオープンマインドでコーチの意見を聞いたり、1on1(ミーティング)に取り組んでいる。そういった姿勢が今のパフォーマンスにつながってきていると思っています。彼らのパフォーマンスはチーム全体でつくりあげているような、そういう風にも感じています。

(東芝との戦績は2勝11敗と劣勢。そういう相手に勝てたことの意味は?)過去の成績は私も初めて知ったんですが、やはり東芝さんといえばトップリーグの歴史の中で何度もチャンピオンを獲ったことのあるチームですし、リーグ戦の状況がどうだとか、そういったことは全く関係なしに、一発勝負で力を発揮してくるだろうと感じていました。前半は点差をつけ余裕をもって戦えた部分はありましたが、後半は東芝さんが本来持っている力を発揮されて厳しい試合になりました。そういうチームに勝ったということは今後につながると思います。

(スクラムとモールの強さの秘訣があれば)スクラムの成果はフロントローが脚光を浴びますけれども、FW8人が全員コミットして瞬間瞬間を全力でやっているところが結果につながっていると思っています。モールも同じですね。誰かひとりがさぼっていたらできない。チーム全体でやりきれているということだと思います。

FL松橋周平共同主将

今日はありがとうございました。ファンの皆さんに僕たちのラグビーをお見せすることができてよかったなと思っています。試合は負けたら終わりというノックアウトのゲームなので、まず勝てたことが一番だったかと思います。試合内容としては、僕たちは前半から自分たちのラグビーをしっかりやろうとしていて、特にFWがスクラムでプレッシャーをかけることができたことで試合を優位に進めることができたのかなと思っています。後半、相手陣に入ってトライチャンスを3本逃してしまって。しかも最後の終わり方が全部ペナルティで終わってしまっていました。それはメンタル的なダメージが大きくなってしまうものなので、それが接戦になった理由かなとも思います。また、後半は規律も乱れてしまったので、そういうメンタリティの部分をさらにステップアップしていきたいと思っています。ただ、ここまで大事にしてきた自分たちのプロセスというものも信じて、引き続きやっていければとも思っています。

(後半35分頃、ショットを狙わずトライを獲りにいった)モールは自分たちの強みでもありますし、トライを獲る自信があったのでその選択をしました。時間的にショットを狙うよりは、モールを選びトライが獲れなくても、時間を稼ぐことができるので、そういう選択をしました。

(惜敗を多かった。勝ちきるためにプロセスとしてどんなことを意識してきたのか?)自分たちが乱れてしまったという部分は必ず直さないといけませんが、どの試合であろうと「自分たちのラグビーをするには、自分たちのプロセスをしっかりやらなければいけない」というのはわかっているので、まずはそれを信じてしっかり遂行するということ。結果の全てをコントロールすることはできません。だから自分たちとしてはプロセス、過程の部分を大事にしている。それを守るだけですね。惜敗も結果なので、それよりもその前のプロセスがどうだったかを意識するようになりました。

(勝ちきれた今日、何か違ったことはあったのか)普段なら沈んでいってしまう雰囲気はあるのですが、今日は押されていても冷静でまとまってコネクトしようとしているのは感じました。それが結果につながったのかなとは思います。リラックスしていました。

(東芝というチームに勝った意味)前回東芝に勝ったのは(2016年10月の)広島でのゲームですから、非常に強いというイメージが僕の中にあります。今シーズンは波があったかもしれませんが、プレーオフになったらしっかり修正してくると思っていました。案の定、前半から積極的に来ていて、乗っていたなというのはすごく感じていました。そういうチームに対して自分たちがぶれずにやるべきことをやれて、それが勝利につながったので、そこはすごく嬉しいです。

HO武井日向

(スクラムを押せた理由は?)松さん(FL松橋)のいう通り、プロセスを大事にしていて、一個一個、本当に細かいディテールのところなのですが、リコーのスクラムはこういうものだというのを、プロセスを踏みながら共有し、全員がそれを実行できたことが、今日のスクラムでプレッシャーをかけられた要因かと思います。あとは一本一本に集中して、スクラムのときは8人がスクラムのことだけを考えて自分の役割を徹底しようということを、試合前も試合中も話していたので、そういうところもよかったんじゃないかと思っています。

(試合で心がけていることは?)今シーズントップリーグデビューした選手が試合に出ているんですが、若い選手みんなで盛り上げようという話はしています。大五(PR笹川)とは2番、3番ということもあって、毎回スクラムをレビューしたりと同期でいる時間は長いのですが、「自分たちが引っ張っていこう」くらいの気持ちで取り組もうという話をしています。

PR笹川大五

(かなり優勢だったスクラムを組んでいての率直な感想は?)とにかく自分のシェイプ(スクラムにおける姿勢)を崩さないようにして、後ろが重いのであとは押してもらうだけでした! 今週は練習でもシーズンで一番いいスクラムが組めていたので、その流れでいいスクラムが組めました。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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