プレシーズンリーグ2015開幕直前 神鳥監督インタビュー

2015.09.04

今シーズン変則日程となっているトップリーグは11月開幕。リコーは9月5日の東芝ブレイブルーパス戦(岩手・盛岡南公園球技場)でスタートする前哨戦・プレシーズンリーグを経て、11月14日に行われるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦(東京・秩父宮ラグビー場)との開幕戦をターゲットにトレーニングを続けています。3年目のシーズンを迎える神鳥裕之監督に、ここまでのチームづくりと目指すラグビーを聞きました。

「6位から7位の力。強みはフィットネスとディフェンス」が現在のリコー

——オフシーズンに、昨シーズンをどのように振り返ったかをお聞かせください。

自分たちの立ち位置を確認しようと。トップリーグには16チームがありますが、自分たちの力をすべて出しきったとして、リコーはどのあたりに位置するのか。それを冷静にとらえ直す作業をしました。その自己認識を選手と共有したいと思ったんです。
それで、いわゆるトップ5(パナソニック・ヤマハ発動機・神戸製鋼・東芝・サントリー)のチームに勝つためには、まだ足りない部分があるだろうと。ただし、6位以下はトヨタ、キヤノン、NTTコム、そしてリコーと続くわけですけれど、ここのゾーンのチームとは、自分たちの実力を出しきれば互角に戦えると考えました。つまり、6位から7位の力はあるというのが僕の認識でした。
評価の根拠となる具体的な要素はフィットネスとディフェンスです。これは昨年1年間で飛躍的に良くなったと思っています。もちろん弱みもあって、それはブレイクダウンだろうと。そんな強みや弱みの整理も行いました。
選手とも話しあい意見を聞くと、僕の感覚とそんなに離れていませんでしたので、この認識を共有してチームを再スタートさせました。

——課題はブレイクダウン。

強みにするにはまだレベルアップが必要です。春のトレーニングでも重点的にやってきました。ブレイクダウンのシチュエーションは様々で、取り組むべきことは多いのですが、今回主に取り組んだのはアタックブレイクダウンですね。昨年のトップリーグのデータでも、タックルブレイクの回数はトップリーグ最下位だったので。
磨くべきなのはボールキャリアとアライビングプレーヤー、セカンドマンのテクニックと判断力。そこを徹底的にやっていきます。春はテクニック中心。判断については夏以降取り組んできました。

——具体的にはどんな取り組みを?

いいブレイクをつくるためには、最初にボールを持ってディフェンスに当たっていく選手が有利なシチュエーションをつくることが大事です。最初のコンテストに勝ってブレイクできるような力をつけさせようと。
まずストレングスで特に体幹を強くして、タックルされたあとでも立っていられるようにする。テクニックではショートステップ。真正面から当たっていくのではディフェンスからすれば当然イージーです。だから少しでもずらしたい。
そのために生きるということで、今年はボクシングのトレーニングを早朝練習に採り入れて、ステップワークなどを学んできました。これはダミアンヒルヘッドコーチ、ダレン クランS&Cコーチの提案です。リーグラグビーなどではよく採り入れているそうです。ステップワーク以外にも、ハンドオフを出すタイミングやスピード、相手の視界から消えるような動きなど、ラグビーの動きにつながる要素がいろいろとある。
みんなコンタクトスポーツやっている人間なので、好きですよね。楽しそうにやっていますよ。コリン(ボーク)なんかはやっぱり器用。本腰入れたら、いいところまでいけるんじゃないかと思うくらいです。
もちろん、ラグビーのトレーニングでもそうした技術をつけるものはあります。でも、今年は開幕が11月と遅いですし、春からずっとラグビーだけだと“お腹一杯”になってしまう可能性もある。変化をつけて、新鮮な気持ちで練習してもらうための工夫はしています。

「野口にはいずれ主将を務めてほしいと思っていました」

——今年はラグビーW杯のため、変則的なスケジュールとなります。

通常は7、8月に行われる夏合宿でチームを仕上げてきましたが今回は違います。7月からようやくチームとしてのトレーニングが始まるような感じですね。5、6月はほぼ個人にフォーカスしたトレーニングをしてきました。それこそ多摩川の土手をマラソンしたり、ジムでウェイトをやったり。ジムはダブルセッションも含めると週に8回入っている選手もいました。
だから春のオープン戦の位置づけも例年とは異なっています。トップリーグのゲームに出場するチャンスのなかったメンバーや新人選手の出場機会となるように意識しました。

——また、9月には準公式戦にあたるプレシーズンリーグがあります。

難しいですよね。チームによっては日本代表メンバーがいない状態で戦うわけですから、各チームで位置づけは違うかもしれません。
僕たちは、あくまで11月の開幕戦にフォーカスしてそこに向かってチームをつくっていきます。ただし、注目度の高いキヤノンとの試合もありますし、地方の皆さんに試合をお見せできる貴重な機会でもあります。その時点で競争を勝ち抜いているメンバーが出場して、トップリーグ同様にその時点の全力で勝ちにいきます。
昨シーズンの後半は連勝しましたが、勝つことで雰囲気が変わり自信が生まれたのは間違いありません。試合に勝って得られるものを大事にしたいと思っています。

——体制的には主将に新任の野口真寛選手。副将は昨年に引き続き山本昌太選手。

野口にはいずれ主将を務めてほしいと、監督就任したときから思っていました。ケガなどもあり自分のことに専念してもらおうと考えていた時期もありましたが、今回期待していた人材がリーダーになってくれました。
山本に関しては若いので、次の世代のリーダーとして育っていってほしいという思いを込めて引き続き指名しています。昨シーズンも後半は小松(大祐)に代わってゲームキャプテンを務めていたので、今シーズンは普段の練習やグラウンド外でもリーダーシップを発揮してもらいたい。
FWリーダーはポヒヴァ(ロトアヘアポヒヴァ大和)、BKリーダーは小浜(和己)。ポヒヴァは昨シーズンからチームを鼓舞して引っ張ってくれていた。その姿勢を買ったかたちですね。
小浜は発言の内容がとてもいい。もっと前に出て発言してほしいと思っていました。リーダーの肩書きを与えることで、それがしやすくなることを期待しています。あとは副将の昌太(山本)が若いので、2人にはそのサポートもしてほしいと思っています。

——過去に主将を務めたことのある滝澤佳之選手と小松大祐選手がプレイングアドバイザーに就任しました。

経験豊富なベテランの2人のリーダーシップもチームにとって必要です。グラウンド外の規律づくりなどでも積極的に動いてくれています。

昨シーズンの到達点から“Build”する。まずは前半のリーグ戦で4位以上に

——昨シーズンとは違うポジションに挑んでいる選手はいますか。また、コリン ボーク選手は今年もSOを務めるのでしょうか。

昨年No.8などを務めていたマウ ジョシュアがHOをやったり、アマナキ(ロトアへア)がCTBもやったりしています。あとは12番で出場していた牧田(旦)が13番でプレーしたり。
コリンとは話をしました。引き続き頼みたいと伝えました。今シーズンはSOとしてバーナードフォーリーが加入しますが合流は開幕直前です。その時点のコンディションは未知数ですし、チームにフィットするための時間も必要だと思います。まずはコリンをSOにしてチームをつくっていくことになります。

——選手の成長を期待したいポジションはありますか。

ルースヘッド・プロップ(PR1番)は、昨シーズン活躍した藤原丈宏を除けば新戦力が競うことになっています。髙橋(悠太)や眞壁(貴男)のチャレンジに期待しています。トップリーグデビューのチャンスもあると思います。
あとはCTBでしょうか。SOがコリンの際は日本人選手が12番、13番を務めることが多く、山藤(史也)、小浜、牧田などが出場してきました。このあとに続く選手に出てきてほしいですね。

——監督に就任し3年目に入りました。改めて選手との関係に変化を感じていますか。

1年目は、決められたメンバーだけで戦うのではなく、チーム一丸で戦うのだという意思を発信するために、平等に、フェアであることを大事にしてきました。試合に出られないメンバーがチャレンジできる仕掛けも多くつくり、シンプルに横一線で競わせるという形をとったんですね。練習のきつさも、立場を問わずできるだけ等しく設定していました。それは成果を生んだと思います。
ただ、選手の置かれた立場にあったトレーニングがあるのもまた事実です。ベテランであればコンディションに合わせたり、若い選手であればよりハードにやって力を伸ばしたり。それが本当の意味でのフェアで、理にかなった練習だと思います。
今シーズンは、そのように選手それぞれ個別にアプローチする余裕が出てきたと感じます。選手により練習の内容や負荷は異なってきても、選手はポジティブにとらえてくれている。自らの成長を望み、思いを内側に向けてくれていると思います。
当初のやり方も必要なものでしたが、本来はこうあるべきだと思っていました。コーチがトレーニングでフォーカスすべき人材を集中的に指導したりできるメリットもあり、チームの底上げにもつながっていると思います。
2年間の選手とのコミュニケーションを通じて、少しずつ環境を整えられた。そこにはチームの成長を感じています。

——最後に、設定している目標を教えてください。

毎年言っているのでくどいようですが、リーグ戦で上位4位に入ること。そして優勝を争う順位決定トーナメントに残る。過去2年達成できていないこのミッションを達成したい。それは選手たちにも強く発信しています。
楽観視はしていませんが、昨シーズンのセカンドステージの戦いと結果には強い手応えを感じています。後にあそこがターニングポイントだったと思えるようにしたい。あのときのラグビーを基準に、そこからさらに“Build”してタスクを達成する。それが今シーズンのリコーが目指すところとなります。

——今日はありがとうございました。

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