第36弾:選手がみせた、その横顔 26

Inside the RICOH BlackRams

2012.03.16

 リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

アルバイトで資金貯めニュージーランドで武者修行(岩田光)

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 岩田光は、すこし変わった経歴を持つトップリーガーだ。

京都産業大学4年生の春に、社会人チームから誘いがあったが、諸事情でその話がなくなった。卒業後もラグビーが続けたいと思った岩田の頭に浮かんだのは、かつて半年間短期留学したニュージーランドに行くという選択肢だった。

「クラブチームでプレーしようと。実績が残せれば、トップリーグでプレーするチャンスも生まれるかもしれないと考えました。実際、そういう道を通ってラグビーを続けている選手もいると聞いたことがありました」

渡航には資金が必要だ。岩田は京都に住む祖母の家に住まわせてもらいながら、アルバイトに明け暮れた。

「いつも3つか4つは掛け持ち。数えきれない種類やりました。記憶に残っているのは、個人の方が経営している居酒屋さんです。開店してすぐに満席になるような人気店なんですが、アルバイトは自分一人。接客を学ばせてもらいました。あと、まかないがとてもおいしかった(笑)」

もちろん、ジム通いと週に2回の京産大の練習への参加も続け、体力の維持も図った。約1年かけて資金を貯めると、2010年2月に岩田は海を渡る。ニュージーランドのオークランドにあるクラブチーム"イーデン"のセレクションを兼ねたプレマッチに参加し、"プレミア"というスーパーラグビー、NPC(ニュージーランド州代表選手権)に次ぐグレードのリーグ戦に参加できるトップチームを目指した。岩田は見事、この競争に勝って"プレミア"で、スタンドオフのレギュラーとしてプレーするチャンスをつかんだ。

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 だが、ニュージーランドでの武者修行開始から半年足らず、リーグ戦開幕からはわずか2ヵ月しかたっていない6月。岩田に一本の電話が入り、状況が大きく変わる。
「じつは渡航前に、高校時代指導していただいた先生と、リコーのスタッフの方が知り合いで『いつか日本に戻ってきたら、セレクションを受けさせてください』とご挨拶していました。その方が、自分が"プレミア"でゲームに出続けているのをチェックしてくれていて国際電話をくれました。『来週、リコー総合グラウンドで一週間セレクションを受けることはできますか?』と」

突然のことであっけにとられながらも『はい』と答えた。そして、岩田はリコーのセレクションに合格。リコーラグビー部への入部が決まった。

「一週間と少しで人生が変わりました(笑)。チームを突然離れることになってしまったのは、心残りでした。当初から自分の目標はトップリーグ入りであることは伝えていたので、イーデンのメンバーも喜んでくれましたが」。ニュージーランドからの飛行機には、来日の決まったリコーの外国人選手と一緒だったという。言わば"逆輸入選手"として岩田はリコーにやってきた。

それから2シーズン。岩田はメンバー入りを果たしながらも、なかなかトップリーグに出場するチャンスは得られなかった。高校、大学、そしてニュージーランドでもゲームに出続けただけに、行き詰まりを感じていた。だが、2011年12月18日、京都・西京極での近鉄ライナーズ戦で、後半に5分間だけだったがトップリーグ初出場を果たした。微かに視界が開けた瞬間だった。

「ディフェンスは自信を持ってできていたけれど、それ以外については『自分はトップリーグのレベルにはない』と痛感していました。自分はリコーに入れたことで満足してしまったのかなって。本当に、今後について考えなければ、と思うくらいに悩んでいたときでした。でも、トップリーグの試合に出てみたら、たった5分間だし点差も開いていたけれど、すごく楽しかったです。ラグビーって面白いって、改めて感じ取れました」岩田は、この短い約5分間、ピッチに立って皆と闘い、『リコーで成長していこう』と決意を新たにした。

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 ラグビーをやっていなければ「銀行員になってみたかった」という岩田。学生時代からビジネスにも興味を持っていたそうだ。昨年度の途中で加入したため、本格的に社業に取り組むのは今年度から。オフに入ってからは、職場の指導役である先輩と得意先を回る日々が続く。初めて取り組む、営業の仕事の面白さを感じている。

岩田の持ち前の広い視野と行動力を生かして、ラグビーと社業を両立させるリコーのラガーマンとして、才能を花開かせる日を待ちたい。そして近い将来、多くの課題を乗り越えて、ピッチにたってリコーラグビー部を引っ張っていける人材のひとりに成長して欲しい。

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