第51弾:選手がみせた、その横顔 41

Inside the RICOH BlackRams

2012.07.27

リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

自分のためだけではなく、リコーがさらに成長するためプレーをする。(ダニエル ピータース)

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 高校を卒業後、留学のため来日して以来ずっと日本を愛するニュージーランド人の若者は、流暢な日本語で語ってくれた。両親のこと、ラグビーのこと、そして生まれたばかりの新しい家族のこと。

「両親は今でも、ニュージーランド(以下NZ)のアシュバートンという街に住んでいます。人口は1万人ほど、隣の家まで2km以上あるような田舎町です。私が10才の頃引っ越して来てからそこにいます。両親は牧場を経営していて、私は幼い頃から仕事を手伝っていました。今でも、ラグビーの練習がつらいと感じたとき、牧場の厳しい仕事を思い出し気持ちを奮い立たせています(笑)」

両親は朝4時から夕方の6時まで、短いランチを除いてほぼ休みなく牧場で働き続けていた。ダニエルは、そんな働き者の両親のもとで、自らも仕事を手伝いながら幼少期を過ごした。

「父は大変厳しい人です。今では仕事も引退(弟が牧場を経営)し、孫もいるので、随分と丸くなりました。一方で、母はとても優しい人。自分のことを常にサポートしてくれました。高校時代のラグビーの試合で遠征があったのですが、家から5時間もの時間をかけて応援にきてくれました。もっとも私の通った高校が車で約1時間のところにあったのですけどね(笑)」

―― そもそも楕円球の出会いはどのようなものだったんですか?
「本当は5才から地元のクラブに入れたのですが、家の牧場の手伝いが忙しくて・・・。7才になってようやくラグビーチームに入ることができました。
そしてもちろん、地元クルセーダーズ(『スーパーラグビー』のチーム)のサポーターでした。父がホームであるAMIスタジアムのシーズンチケットを持っていて、子どもの頃、私のヒーローはアンドリュー・マーテンズ選手でした。今はダン・カーター選手です」

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 そしてこの頃(高校生)、人生を大きく変える選択をする。単身日本の大学への進学を決意したのである。

「もともと地元に日本からの留学生が多くいたので、日本に馴染みはありました。自分も次の進路として海外留学を考えていましたので、そのことを監督に相談したところ、日本の大学に行ってみないか?とアドバイスをもらいました。

そこで監督の知り合いの方のご紹介もあって拓殖大学に進学。その方は、拓殖大学ラグビー部・遠藤監督です。高校時代に、良く試合を観にNZまでいらしてくれて、その時に日本に行くことを決意しました。

もちろん不安はありましたよ。言葉とか、食事とか。ただ高校のチームメイトも一緒だったので、なんとかなるかな、という気持ちで日本行きを決めたのです。

拓殖大学でラグビー部に入部したのですが、毎日約3時間ほどの練習。その点はびっくりしました。高校時代の練習は週2回で、1回の練習時間は約1時間でしたので、練習が多く、とにかく時間が長い。1年生のときはチームは二部でしたが、3年生の時には今もチームメイトでリコーでラグビーをしている横山兄弟(健一選手、伸一選手)やロコツイシュウペリ(元リコー、現NTTドコモ)の活躍もあって一部に昇がれたことは、いまでも良く記憶に残っています」

 ダニエルは、日本での学生生活を楽しみながら、大学の中心選手として活躍する。そしてリコーを選ぶこととなる。

「リコーに、スティーブン・ラーカム選手(元豪州代表 Cap102)が在籍していたことが一番の理由です。拓殖大学OBも在籍していたこともありました。
ラーカム選手はプレーはもちろん凄かったのですが、会話の中での一言、一言にとても重みがありました。とてもいい経験、いい勉強ができ、自身は色々なことを学び、成長できたと思っています。

残念なことに、まだトップリーグ公式戦の出場経験がありません。まずはこの公式戦に出場することを目標にしました。その先に日本代表という目標もあります。

そんな中にあって今年は自分自身も勝負の年。注目して欲しいプレーは激しいディフェンスとパス。そして正確なゴールキック。それもこれも全て自分のためだけではなく、リコーがさらに成長するためのプレーを常に心がけています」

大学から日本という国に触れ、そしてラグビー選手としてのキャリアを選択したダニエル。そんな彼の心の支えとなっているのはなんといっても家族。

「一昨年、結婚。そして長男のジョシュが誕生。日本人である妻とは大学3年生のときに知り合いました。オフの時は、ジョシュと一緒に過ごすことが多いですね。水族館に行ったり、プールで泳いだりと。子供中心の生活です(笑)」

最後に、多くのファンの皆さんはじめリコー社員に向けたメッセージを語ってくれた。

「昨年、会社(リコー中央研究所)に赴いてトップリーグでの応援をお願いするために、オリジナルのポケットティッシュを配布したことがあります。皆さん、とてもフレンドリーで優しくて、仕事を頑張っていると感じました。リコーの皆さん、今シーズンはレギュラーとして出場します。ぜひスタジアムで『ダニエル、がんばれ!!』と大きな声で声援を送ってください」

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 4年目のシーズンを勝負の年と位置付ける。
日々の厳しく、激しいトレーニングを積むダニエル。

自分自身の選択が正しかったことを証明するため、そしてなにより家族とリコーのために、いつも献身的なプレーでファンを魅了するダニエル選手に、注目してみたいと思う。

  • ダニエル ピータース選手のプロフィールはこちら

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