第61弾:選手がみせた、その横顔 51

Inside the RICOH BlackRams

2012.10.17

リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

シニアプレーヤーがもたらす “enjoy”の意識(リキ フルーティー)

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 ニュージーランドに生まれ、2005年に欧州へ。イングランド・プレミアシップやフランスでのプレー経験もあるリキ フルーティー。NZ時代は学生時代から各世代の代表に、イングランドでは代表にも選出され、世界中を飛び回るようにしてラグビーをプレーしてきた。だが32才になる今年まで、日本は一度もその土を踏んだことがない国だったという。

「でも、興味をもっていました。義理の父、Murray Tockerが日本の社会人チームでコーチをしていたという縁もあるんです。それに同じNZ出身で交流のあるタマティ エリソン、マア ノヌー、イングランド代表のジェームス ハスケルからはリコーがどんなチームかを聞く機会がありました。自らを高めようと務めている若いプレーヤーが多くいること。それから二子玉川の環境のよさですね。みんな『自転車で練習場まですぐ着く』と教えてくれました。

かつてリコーでコーチを務めていたイングランド代表のアタックコーチ、ブライアン スミスや、僕が直前まで所属していたロンドンワスプスで過去に指導していたレオン ホールデンヘッドコーチの存在もあります。みんなリコーのラグビーをする環境の素晴らしさを話してくれました。それで、日本のラグビーはもちろん文化も、一度体験してみたいと思うようになりました」

とはいっても、6月の来日からずっとハードなトレーニングが続いている。
「どこか出かける余裕はまだないね(笑)。合宿で網走にいったのと一度“お台場”に行っただけ。練習がハードなので、オフはリラックスして身体を休めることを優先しています」

NZのノースアイランド南端・レイクフェリー(Lake Ferry)という小さな街で育ち、4才でラグビーボールに触った。
「NZだからね。ウィンタースポーツはラグビー以外の選択肢がなかった。父親も兄弟もラグビーをやっていたので、当たり前のことだったね」

ノースアイランド北部の街であるホークスベイ(Hawke's Bay)のTe Auteカレッジに進むと、15才のときに16才以下のNZ代表、NZスクールズチームのキャプテンを務める。その後も将来を期待され続け、セカンダリースクールを経てプロ契約。スーパーラグビーのハリケーンズなどでプレーした後、イングランドへ渡りラグビー選手としての成功を手にした。

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―― 小さな頃からずば抜けていたか?
「それは自分ではわからないけれど、いつも楽しめていたと思うね。プロのラグビー選手になろうと強く願っていたわけでもない。楽しいからやっていた。覚えているのは、兄たちがNZ U-17代表でオーストラリアに遠征に行ったりしているのを見て、自分もいろいろな国に行きたいと、地図を指差しながら話していたこと」

幼いフルーティーにとって、ラグビー選手になることは、まだ知らぬ世界に出て行くための手段に映っていた。

―― 自信のあったプレーは?
「おもちゃ替わりにボールを触っているような子供で、それでいつもスキルを磨くのがクセになっていた。それが強みになっていたかもしれない。でも、自分では練習している意識はなかったです。楽しんでいるうちにうまくなっていた」

現在32才。シニアプレーヤーとして選手たちをコーチングする役目も期待されることとなる。将来はコーチに就くことも視野に入れている自身にとっても、それもモチベーションのひとつとなっている。
「ほかの選手が成長するために、自分の経験を生かして手助けできることはとてもうれしい。近いポジションの津田(翔太)やJC(ジャスティン コベニー)なんかとはよく話をしている」

開幕4連敗を喫した直後のインタビューだったが、フルーティーはこんなことを言っていた。
「ここからがどういったチームなのかが見えてくる。本当に絆の深いチームなのか。顔を上げて闘っていけるチームなのか。4連敗すれば誰だってがっかりする。人のせいにする選手が出てきたり、言い訳を探し出したりする。私自身、リコーはそういうチームではないと感じている。チームの中にコミュニケーションがあり、勝利のために何が必要かを話し合っている。日々の練習にはハードに取組んでいるし、学ぼうとする姿勢もある。笑顔でトレーニングに取組み続ければ、結果が出ますよ」

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 いいアタックを見せながら、トライを獲りきれない試合が続いたリコーだったが、第5節の初勝利後、山品博嗣監督は「ラグビーを楽しむところに一度立ち返った」と話した。

厳しい状況に置かれても、自分たちのラグビーを信じ、笑顔で楽しんでプレーする。

今シーズンのリコーが見せるタフなメンタルに、“enjoy”を信条にプレーするリキ フルーティー。

彼がもたらしている影響は、小さくなさそうだ。

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