2011-2012 春季オープン戦 対 近鉄ライナーズ

2011.05.28

新体制スタートの試合は、伝統の定期戦

 2011-12シーズン、山品博嗣新監督が就任して最初のオープン戦は、今回で36回目を迎える近鉄ライナーズとの定期戦。トップリーグ7位、チーム過去最高の結果を残したリコーブラックラムズ。さらなる飛躍を目指す今シーズンの初戦は、現時点として出せるものを出しきった、上々の滑り出しといえるゲームとなった。

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 13時、雨の東京・世田谷のリコー総合グラウンドに試合開始のホイッスルが鳴る。近鉄10番のキックが左サイドに飛び、試合が始まった。

リコーはSO河野好光のキックで近鉄陣内左サイドに攻め込む。22mライン付近からのラインアウトをキープした近鉄はモールで押すが、リコーのフォワードも力強く押し返し、前進を阻む。押し込まれた近鉄はボールを展開する。

ボールを回し、逆サイドからパントキック。リコーはリコー陣内22mライン手前まで飛んだボールをキャッチミス。ノックオンで近鉄ボールのスクラムとなる。そのスクラムが崩れリコーに反則。近鉄は左サイドタッチライン外へボールを蹴り出し、ゴール前でラインアウトを得る。これをキープした近鉄は左中間22mラインを過ぎたあたりにモールをつくるが、崩れてラックとなる。果敢にファイトしにいったリコーがラックに人数をかけ気味になったところで、近鉄は右へ展開。4分、右サイドにできたギャップを15番に抜かれ、右隅にトライを許す。コンバージョンは左にそれたが5点のリードを近鉄に許す。

フォワードが好調。前半3つのモールトライ

 リコーは、反撃を見せる。近鉄陣内のスクラムで近鉄が反則。SO河野がボールを右サイドタッチライン外へ蹴り出し、ゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。キープし、右中間をモールで押す。そのオープンサイドをNO.8マイケル・ブロードハーストが突き突破を図るが、惜しくもノックオン。近鉄ボールのスクラムとなるが、ボールを奪い返すと、右中間をモールでゆっくりと前進する。10分、ゴールラインに迫り、最後はLOカウヘンガ桜エモシがグラウンディングしてトライ。コンバージョンも河野が決めて7対5と逆転に成功する。

次の得点もリコーに入る。近鉄陣内深くまで攻め込むと、近鉄がインゴールエリアからタッチキックを狙う。これがタッチを割らず、WTB長谷川元氣がキャッチ。左サイドタッチライン際から真っ直ぐに走りアタックをかける。

22mライン付近で倒されたが、すぐサポートが入りリコーはボールをキープ。ラックのボールをSH神尾卓志がショートサイドのCTB小松大祐に出すと、小松はタッチライン際のスペースを走りゴールに迫る。これを止めにいった近鉄の選手がノットロールアウェイの反則。

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 リコーはペナルティキックを左サイドのタッチライン外に出し、ラインアウトから攻撃。確実にキープしてモールで押す。そのままゴールラインを越え16分、LOカウヘンガがゴール左隅に再びトライ。雨が降りしきる中での難しい、角度のあるコンバージョンをSO河野が決め、14対5とリードを広げた。手応えを感じたのか、HO滝澤佳之を中心にフォワードのメンバーがハイタッチ。チームのリズムをあげていく。

降りしきる雨の影響を受け、互いにハンドリングミスを出し一進一退となる。リコーは、30分に自陣スクラムからSO河野がパントを上げ、その落下地点のブレイクダウンに勝利しボールを奪取。近鉄陣内右中間10mライン付近からボールを回し、CTB小松が左中間22mライン手前でゴロキック、WTB長谷川が押さえに飛び出す好機をつくる。惜しくもトライにはならなかったが、バックスによる攻撃の形もつくった。

前半終了間際の40分。リコー陣内10m付近で近鉄が反則。リコーはタッチキックを蹴り、右サイドのラインアウトから再びモールをつくり前進し、3つめのトライをまたもLOカウヘンガが決める。直前のプレーでSO河野が負傷し、替わって山藤史也が入りCTB、SOに金澤良が入っていたが、その金澤がコンバージョンに成功。21対5として試合を折り返した。

ケガから復帰、1年ぶりの試合でFB津田が存在感

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 雨足の強まった後半もリコーのペースで始まる。開始から近鉄陣内に攻め込み、アタックのタイミングをうかがい続ける。しかし、近鉄のディフェンスとハンドリングミスなどにより決定機をつくることができない。

15分、リコーはSH神尾を湯淺直孝、FL金栄釱を森山展行、PR柴田和宏を伊藤雄大に交代。しかし直後、キックで攻め込んだ近鉄に22mラインの内側でアタックを繰り返されるディフェンスの局面となる。ゴールライン間際の際どい攻防も見られたが、リコーは意識をうまく切り替えディフェンスに集中する。20分には、LO生沼知裕が大山大地、HO滝澤佳之が森雄基、FB小吹祐介が津田翔太と交代する。

直後、リコー陣内10mでの近鉄のラインアウトのこぼれ球がリコーに。ボールを持ったPR伊藤が左サイドを抜け出しゲイン。フォローしたLOカウヘンガがさらに突き進み22mラインに迫ったところで展開、ラインブレイクを狙うが惜しくもノックオン。このプレーで約5分にわたる近鉄の攻勢を断ち切ると、その後はしばらくグラウンド中央付近で一進一退の攻防が続いた。

スコアが動いたのは33分。左中間22mライン付近のスクラムを力強く押したリコーは、そのオープンサイドを突いたFL森山がディフェンスラインのギャップを抜けゴール正面にトライ。コンバージョンも決まり28対5。

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 その後、再び近鉄の攻撃を受けたが、また守りきったリコーに好プレーが飛び出す。40分、近鉄陣内左サイド22mライン手前のラインアウトから攻撃を仕掛ける。SH湯淺が中央からアタックライン最後方のFB津田にボールを戻すと、右中間から外に向けて絶妙のゴロキック。ディフェンスライン裏に転がったボールに反応したWTBマーク・リーがこのボールに追いつき、インゴールエリアに達しトライ。昨年5月15日のオープン戦で右ヒザ靭帯を切る大ケガを負った津田は、この日が1年ぶりの試合出場。今季に懸ける思いが生んだプレーをメンバーは手を叩いて称えた。

コンバージョンも成功し35対5となったところで試合終了のホイッスル。リコーブラックラムズは、今季最初のオープン戦に快勝した。

「一体感がすべて。それがなかったら、勝っても意味はない」

 試合後、今季、キャプテンとなった滝澤佳之に話を聞いた。
「まだお互い試合に向けたトレーニングをしていない。勝敗を意識する段階ではないかもしれない。でも、ジャージを着ると気持ちが変わりますね。今日気になったのは、クイックに球出しできていなかったこと。原因は単純で1人目のキャリアがしっかりボールをリリースできなかったり、2人目のサポートが遅かったりといった部分。すべてはこれからですね。
キャプテンになったので、グラウンド外でのチームの意識、練習の雰囲気には少し気を遣っています。(昨季はゲームキャプテンを務めていたが)気持ちとしてはだいぶ違う。ただ、選手それぞれがしっかりしているので、苦労はないですね。今年は一体感を持っていけるところまでいきたい。一体感がすべて。それがなかったら、勝っても意味はないと思っています」

バイスキャプテンに就任したCTB小松大祐も随所で活躍。
「春先から新しいチームで練習をしてきて、自分たちがどれくらいのプレーをできるのかを確かめられました。雨のせいもあるけれど、やりたいことができなかった部分もある。でも、ディフェンスで気持ちを出していけたというのは自信になると思います。その点は、ひとつの自分たちのスタンダードとしてこれを維持し、さらに上を目指します。
新チームになって、じつは選手たちに任される部分は増えています。甘えようと思えば甘えられてしまう。でも、これまで数年間、自分たちはスタンダードを決めレベルを下げないよう意識することを続けてきたから、大丈夫だと思う」
「自分たち次第で成長できる」。そのためには自分に対し厳しくあることが不可欠。小松は今のリコーにはそれができるという手応えを感じているようだ。

山品監督はこの試合をどう評価したか。
「今日選手に意識するように伝えたのは、シンプルなこと。ゲインライン、スピードを持って動く。一対一。このエリアではどう動く、という細かなことは伝えていません。それでこれだけの試合ができているのだから、やはり大事なのはシンプルな基本なんだと思います。しっかりと速いリアクションとって守れていたし、最初のトライも単純なコミュニケーションミスだと考えています」

久々に異なるチームのジャージの選手にタックルを仕掛けていく選手たちを見ていると、とくに若手選手は、皆身体がひと回り大きくなったように映った。「それは方針。もちろん、身体を大きくした上でスピードをつけていくためのトレーニングもしています。今はその途上ですが」(山品監督)

次戦は一週空いて6月11日(土)。個としても、チームとしても、日々成長を続ける新しいリコーブラックラムズは、春の闘いで何をつかむのか? 一体感のある熱いリコーのラグビーを期待したい。

(文 ・ HP運営担当)

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