2011-2012 トップリーグ 第5節 対 NECグリーンロケッツ

2011.12.07

いよいよ、昨シーズントップリーグ上位勢との対戦がスタート

 昨シーズン、僅かな差で順位を競った相手との対戦が続いた序盤戦は、チームとしての熟成を図りつつ、「落とせない」プレッシャーとも闘わねばならない難しさがあった。そうしたチームとの闘いを3勝1敗で切り抜けたリコーブラックラムズは、今節からは成績で、リコーより上位だったチームとの闘いがスタートした。

すべてを出し切り、ぶつかっていくだけ――そんな挑戦者の姿勢へと切り替えることができるか。ポイントはそこにあった。昨シーズンはトップリーグ、日本選手権出場を争うワイルドカードトーナメントで2敗、この春もオープン戦で敗れているNECグリーンロケッツ(NEC)は、"切り替え"には最高の相手だった。

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 強い雨が降る秩父宮ラグビー場。12時に、試合開始のホイッスルが響き渡った。

最初にチャンスをつくったのはリコー。開始3分、リコー陣内のスクラムでNECがコラプシング。ペナルティキックは、SO河野好光がまっすぐ敵陣深く22mライン付近へ蹴り込んだ。ボールはNECの手をかすめグランウンドに落ち、落下地点に駆け込んだリコーがマイボールに。22mラインの内側でフォワードが激しく攻めたてる。雨にボールが濡れた状況を考慮し、パスは最低限に抑え密集の近場を攻める。中央付近のラックからSH神尾卓志が真後ろに出し、プレッシャーのかからない、いいポジションにつけたSO河野へ。5分、河野はドロップゴールを狙うが、ヒットせずボールは密集の間をゴロで抜けNECのバックスが拾う。

蹴り返したキックをWTB長谷川元氣がNEC陣内10mライン付近でキャッチし、再びリコーがアタック。FB小吹祐介は左中間からグラバーキック。ライン裏へボールを転がそうとしたが、これが不運にも相手の足に当たり跳ね返ったボールをNECがセーブしてターンオーバー。さらにこの処理でオフサイドがあったとして、NECがペナルティキックをタッチラインの外へ蹴り出し、リコー陣内まで一気に攻め込む。しかし、ラインアウトから得意とするモールを組んできたNECに対し、リコーは鋭く押し返し前進を阻んだ。やむなくボールを持ち出した8番をタッチライン外へ押し出す。明確な意志を感じさせるディフェンスのプレーだった。

その後、右中間自陣10mライン付近のスクラムでリコーがペナルティ。キックでゲインするとラインアウトからNECが再びアタック。一度はボールを獲ったが直後にハンドリングミスが出て、22mライン付近でNECにスクラムを与える。これを起点にNECはアタックを仕掛ける。ここでもモールを組み、リコーはLOマイケル・ブロードハースト、NO.8ジェームス・ハスケルらが押し返した。
集中力を感じるディフェンスだったがオフサイド。正面の位置でNECにペナルティキックのチャンス。16分、これを落ち着いて10番が決め、0対3とNECがリードする。

その後は、互いにキックを蹴り前進を狙う。18分、リコーはNEC陣内のマイボールラインアウトを奪われアタックを受け、相手10番がキックを蹴ろうとしたところにSO河野が詰め寄る。ボールは、ディフェンスラインを押し上げていたLO山本健太のところに。リコーはチャージに成功する。

しかし、NEC陣内10mライン付近のスクラムでリコーに反則。フリーキックを与えられるとNECは密集のオープンサイドを8番が突進。リコーはこれを止め、すぐさまジャッカルに成功。ボールをSO河野に回すと左中間からグラバーキック。しかしNECディフェンダーの足に当たり、跳ね返ったボールが外側から走り込んできた14番の手に。スピードに乗った14番はスピードに乗ってギャップを抜け一気にゲイン。22mラインの手前で小さくパントを蹴り、ライン裏に転がすが、これを拾いにいったFB小吹は、なんとかセーブするも勢い余って濡れた芝生を滑りタッチラインの外へ。ゴール前のNECのラインアウトとなってしまう。

リコーはラインアウトでは競らず、モールを警戒する。一瞬グッと押したが、しっかり組み上がったNECのモールは一気にドライブ。21分、ゴールラインを越えるとモール最後尾についた8番が飛び込みトライ。コンバージョンも決まって0対10。

フォワードの成長「モールトライ」

 リコーは自陣に攻め込まれるが、安定感あるディフェンスで相手反則を誘い反撃に転じる。タッチキックを蹴りNEC陣内でラインアウトを得ると、HO滝澤佳之が目の前に立つFL覺來弦にパス。覺來がすぐさま戻し滝澤が一気にゲイン、22mライン内に入りアタックを繰り返す。フェイズを重ねるが、NECのディフェンスラインが整いボールが出にくくなったところで、ほぼ正面の位置でNECがノットロールアウェイ。28分、リコーはショットを選択し、SO河野がゴールに成功。3対10とした。

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 33分、リコーはラインアウトのミスで与えたスクラムからのアタックで、ノットロールアウェイ。ミスと反則が続いた局面を突き、正面、距離40m以上の位置からNECはゴールを狙い成功。3対13と再び10点差に広げられた。

その直後、NEC陣内右中間10mライン付近で相手にハンドリングミス。こぼれたボールを、CTBタマティ・エリソンが拾いそばにいたHO滝澤にパス。滝澤はこれをキック。ボールは右タッチライン際に転がり、ゴールライン間際で止まる。これをNEC9番が拾うが、WTB小松大祐、FB小吹が詰めると自らタッチラインの外へボールを出す。

ゴール前ラインアウトのチャンスを、円陣を組み気合いを入れ臨んだフォワードがものにする。35分、LOブロードハーストに合わせるとモールを組み前進。そのまま右中間を押し、インゴールエリアになだれこむとFL覺來がグラウンディングしトライ。今シーズン初となるモールトライに、押し切ったHO滝澤が大きくガッツポーズ。コンバージョンは外れたが8対13と点差を縮めた。前半はこのまま終了。

チャンスで惜しいミス。点差詰められず

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 互いに選手交代を行わず後半がスタート。後半最初のチャンスもリコーがつくる。3分、自陣深くに蹴り込まれたボールをWTB小松が足で勢いを止めてから拾うと、対面の右サイドの空きスペースへキック。ボールは転がり、22mライン付近でタッチラインの外へ出る素晴らしいキック。

さらにラインアウトでNECがボールをこぼすと駆けつけたPR伊藤雄大がセーブ。ここからフォワードがアタックを繰り返すと、右中間からSO河野が右隅に向けてゴロキック。拾えばトライというボールがゴールライン間際に転がる決定機だったが、WTB小松が詰め寄ったが惜しくもこぼしノックオン。その後もNEC陣内でアタックの糸口を探るリコーだったが、NECがドロップアウトからハーフウェイライン付近まで蹴り込まれ、押し戻された。

ここからNECが攻勢をかける。22mラインの内側に攻め込んだところでリコーにオフサイド。タッチラインの外に蹴り出し再びモールでトライを狙う。今度はリコーが押し返し、相手のノックオンを誘った。直後のマイボールスクラムが回ると反則をとられNECボールに。リコーは随所にいいプレーはあったが、直後にミスやペナルティを犯しペースをつくれない時間が続いた。12分、正面の位置でリコーがノットロールアウェイ。ペナルティを得たNECはゴールを狙い成功。8対16となる。

リコーはこのゴールの直後、12分にWTB長谷川に替えて山藤史也。山藤はCTBに入り金澤良がWTBに。さらに16分にはLOブロードハーストを柳川大樹へ、FL川上力也を金栄釱へ、WTB金澤をロイ・キニキニラウへ。逆転を狙い先手を打って動く。ちょうどその頃天候は一気に回復し、互いにボールを回す展開が増え出した。

替わって入った選手がチームに刺激を与える。19分、リコー陣内左中間10mライン付近でのスクラムでNECに反則が出ると、リコーは素早くリスタート。FL金がオープンサイドにボールを持って突っ込むと、NO.8ハスケルがサポートしディフェンスラインを押し込んでいく。SH神尾がラックからボールを出し、SO河野、CTBエリソンと展開し右中間からエリソンがグラバーキック。ライン裏に転がると10mラインを越えた辺りで処理にいった15番にCTB山藤が鋭いタックルで倒す。さらにWTBキニキニラウも絡んでいくとノットリリースザボールの判定。20分、リコーはこれをタッチラインの外に蹴り出し、ゴール前でマイボールラインアウトというチャンスを得る。

この勝負の局面のラインアウトでボールを奪われてしまう。インゴールエリアからタッチキックを蹴られエリアを回復された。再びアタックをかけようとするが、FB小吹のパントキックが風で流れタッチを割りダイレクトタッチとなり、再びボールを自陣に戻された。23分にはPR伊藤雄大を高橋英明に、27分にはHO滝澤を森雄基に交代。

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 後半30分頃からは、リコーのゴールライン間際でのフォワード戦が続く。くり返し、激しく突進し、NECのフォワードをリコーが必死にディフェンスする意地のぶつかりあいに。NECはラインアウトから得意のモールを仕掛けてきたが、これも防ぎきるなどリコーのフォワードは集中力を保ち続けた。

36分、NECがリコー陣内ゴール正面の位置にラックをつくり、サイドの突破に注意を払っていたPR長江有祐とHO森との間を、5番が低く鋭く突く。CTBエリソンが食らいついた。が、一瞬早くグラウンディングし、トライ。10分以上NECのアタックをディフェンスし続けたリコーだったが2本目のトライを許す。コンバージョンも決まり8対23。

39分、自陣左サイド22mラインのスクラムでNECが反則を犯すとNO.8ハスケルが小さく蹴ってリスタート。展開し右サイドからFB小吹が大きくキック。WTBキニキニラウがこれをチェイスしゴール前で奪い合う局面をつくったが、ボールはNECに出る。ここでホーンがなり、ボールを蹴り出されノーサイド。リコーは8対23で敗れた。

気持ちだけではだめ。練習中の行動から、何かを変えないといけない

「単純なところでミスが出た。噛みあわなかったですね。スコアで上回る時間がなかったので、ずっと受けている感じがあった。修正すべき点はあります。ただ、ひきずらないことも大事です。今年の目標はトップ4。この高い目標に向かいチャレンジし続けます」
試合後の山品博嗣監督は、次節への準備を急ぐ。

キャプテン滝澤は責任を背負い込んだ。
「ハーフタイムはペナルティの数(前半で5個)が気になっていました。それが原因でエリアを獲られたり、ショットされたり。自分たちがやらなければいけない展開を相手にさせてしまった。
(一週間空いたが、その影響は?)ないです。ただ、NEC戦に向かっていく雰囲気がチームに欠けていた部分があったかもしれない。ミスに対する厳しさが欠けていたような気がします。それに対しキャプテンとして発信できていなかったと思う。
自分でも信じられないミスを何本もしたし。(後半20分の)モールでトライを獲りにいくラインアウトが獲れなかったのは自分だけのミス。自分のワンプレーでチャンスを消してしまった。自分自身にがっかりしている。
(来週すぐに試合だが?)まず、僕自身が変わらないとだめなのかなと。普通に1週間過ごしたのでは、チャンピオンチームには勝てないと思うので。自分自身がしっかり変わらないと何も変わらないのかな。
(気持ちを切り替えて?)気持ちを切り替えただけでは何も変わらないと思うんですよね、僕は。練習中から何かを変えないと変わらない。何かが何なのかはわかりませんが、すぐに考えたい、キャプテンとして責任を持って」

山品監督の「噛みあわなかった」という言葉が、的確にこの試合をとらえているように感じられた。随所にいいプレーも見られ、特にディフェンスの安定感は変わらず高く保たれた。また昨年は重ねられたNECのモールでの攻撃を防ぎ、逆にモールでトライを獲り返すなど着実な進歩もあった。「春から取り組んで来たことが、ひとつ形になった気がする」と、悔しさをにじませ続けた滝澤も、その話題だけは明るい表情を見せていた。ただし、それぞれがうまくつなぎスコアする最終段階でミスや不運、NECのファインプレーが出た。歯車の歯が一つずれれば――そう思わせる試合だった。

次節は12月11日(日曜日)の山梨県・中銀スタジアムでのサントリー戦。滝澤キャプテンが中心となって選手全員で流れを変えなければならない。

(文 ・ HP運営担当)

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