2011-2012 トップリーグ 第10節 対 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2012.01.18

トップリーグも第10節、いよいよ終盤戦へ

 W杯ラグビーNZ大会開催に合わせスケジュールが組まれた今シーズンのトップリーグ。第49回ラグビー日本選手権に出場する6チームの決定方法が若干変更されている。

トップリーグのチャンピオンを決めるプレーオフトーナメントに出場する上位4チームが、無条件に出場権を得るのは例年通り。だが、残り2つの出場権を争うワイルドカードトーナメントに出場できるのは6チーム(5位から10位)から、4チーム(5位から8位)へと減った。トップリーグで9位もしくは10位となると、自動的にシーズン終了を迎えることになる。なお、11位、12位は入替戦に回るのは例年と同じ。

第9節を終え、リコーブラックラムズは勝ち点25の8位。NTTコミュニケーションシャイニングアークス(NTTコム)は勝ち点19の9位。勝ち点の差は6。リコーにとって第10節は"ポストシーズン"進出に向け、がむしゃらにぶつかってくる相手との闘いだった。

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 12時、冷えきった冬の空気に包まれた東京・秩父宮ラグビー場に試合開始のホイッスルが鳴る。リコーにとっては久々のホームゲームがスタートした。

SO河野好光が、キックオフを敵陣左サイドに蹴り込む。蹴り返しをLOカウヘンガ桜エモシがキャッチし、リコーが前に出てつないでゲイン。スペースを見つけると、FBタマティ・エリソンやSO河野がキックを放っていく。

蹴りあいから、今度はNTTコムが自陣からボールを回し攻め上がる。これはボールが手につかず、ハーフウェイライン付近の左サイドのタッチラインを割る。
リコーのラインアウトとなるが、これを奪われる。NTTコムはボールを展開しワイドにアタック。一気に22mラインまで攻め込む。リコーもディフェンスラインを整えると的確に相手のランナーを捕捉し止めていく。

何回かフェイズを重ねたところで、NTTコムが左中間から右サイドへキックパス。大きな弧を描いたボールは。NTTコムの選手の手に収まる。そのまま右サイドを突くがリコーもこれに対応し、激しいブレイクダウンでボールを奪いかけたがノックオン。NTTコムボールのゴール前スクラムとなる。

NTTコムの9番はスクラムからブラインドサイドへ出す。ボールを受けた14番が抜け、WTB横山伸一がタックルするも及ばず右隅へトライ。4分、NTTコムが先制し0対5。コンバージョンは外れた。

NTTコムペースが続く。キックオフボールを確保しリコー陣内へ攻め込む。一度はリコーがこぼしたボールをさらってアタックに転じ、LOカウヘンガ、FL川上力也、LO柳川大樹らが突破を試みたが、ブレイクダウンでプレッシャーをかけターンオーバー。リコーのゴールに迫った。

11分、右サイド22mラインの内側でNTTコムがスクラムを得る。ここでリコーにコラプシングのペナルティ。NTTコムはゴールを狙いこれに成功。0対8と点差を広げた。
試合の入りで相手にペースを与えたリコーだったが、ここから反撃に転じる。
この日3本目のキックオフを、SO河野がやはり左サイド深めに蹴り込む。これに対し、NTTコムはパントを上げる。これをキャッチしたリコーはFBエリソンに回し、10mライン付近からカウンターアタック。ディフェンスをかいくぐりゲインする。さらにWTB小吹祐介が右サイドを突く。サポートしたCTBマア・ノヌーが縦に前進。さらにFL川上がフォローしSO河野につなぐと、左中間を走り込んだLO柳川へ。22mラインでボールを受けた柳川はうまくディフェンスをかわしゴールラインに到達、12分、トップリーグ初となるトライを決めた。角度のあるコンバージョンもSO河野が決めて7対8。

前半、リコーが4トライ。アタックに高い実行力

 試合再開のキックオフから、NTTコムがボールを回し攻め込む。リコーもよく守り、ディフェンスからリズムをつくっていくと、こぼれ球にPR高橋英明が詰め、ターンオーバーしかけたが惜しくもノックオン。リコー陣内左サイド10mラインのスクラムから、NTTコムが再びブラインドサイドを突き突破、ゲイン。ゴール前で展開しアタックを仕掛ける。

リコーは的確なディフェンスでじりじり押し戻していく。さらに接点で激しく絡んでいくとNTTコムのボールキャリアがボールを放せずノットリリースザボール。ペナルティキックでエリアを取り戻すと、NTTコム陣内10mラインを越えたあたりのラインアウトから、リコーがアタック。これはターンオーバーされたが、直後に蹴り込んできたキックを、FBエリソンが冷静に蹴り返しタッチラインの外へ。

今度は、リコー陣内10mライン付近のラインアウトから、NTTコムのアタック。ここではNO.8ジェームス・ハスケルらが激しく絡み、ノックオンを誘う。互いに自陣のディフェンスで集中力を発揮した。

試合を膠着させないリコー。22分、中央自陣10mライン付近のスクラムから、SH池田渉はCTBノヌー、WTB小吹祐介へ回し右サイドを突破、NTTコム陣内22mライン付近までゲイン。駆けつけたSH池田渉が素早く左へ球出しし、再びCTBノヌーへ。ノヌーは左中間のギャップをこじ開けると中央に向かって前進。ゴール手前で待ち構えたディフェンスもかわす素振りも見せずそのまま当たってなぎ倒し、正面にトライ。コンバージョンもなんなく決め14対8とリコーが逆転に成功する。

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 高い実行力でチャンスを確実にものにするアタックを前節に続いて見せた。さらに29分、ハーフウェイライン付近のラインアウトからNTTコムが右サイドから左サイドへ展開。このアタックに激しく絡んだCTBノヌーが右中間でボールを奪取。すぐさま前方へ強めのゴロキックを蹴る。その右側からFBエリソンが抜け出しボールを追う。22mライン付近でボールを拾うと同時に追いすがるディフェンスを巧みにハンドオフし、遠ざけると一気に加速し右隅へ飛び込んでトライ。コンバージョンは外れたが、19対8とリードを広げた。

直後32分に、NTTコムも一瞬の隙を突きトライを返す。再開のキックオフボールを左中間22mライン付近にあげると、ぴったりの位置に鋭く飛び出していく5番。リコーの誰よりも速く、誰よりも高く手を伸ばしボールをキャッチ。次の瞬間、前方へ向かって加速してラインブレイク。左中間インゴールエリアまで一直線に抜け、ノーホイッスルトライ。コンバージョンは外れたが19対13と追いすがる。

前半終了間際の37分。リコーは自陣左サイド深くに蹴り込まれたキックを、WTB横山伸がキャッチ。FBエリソン、WTB小吹、CTBノヌーとつなぎ再びエリソンへ。エリソンは詰め寄せてくるディフェンスとファイトしながらいなして力強く前へ。またたく間に、NTTコム陣内中央22mライン付近までビッグゲインを果たす。ポイントをつくるとSO河野は左、大外を走ったFL覺來弦へ。ゴールライン目前で止められたが、そこから内へ戻しLOカウヘンガ、最後はNO.8ハスケルが左中間へトライ。コンバージョンも決まり、26対13とリードを広げた。

前半40分、キックオフボールをめぐる接点でオフサイドを犯し、ペナルティゴールを決められたが、26対16とリードを保ち前半を終えた。

後半の入り、ミスを突きNTTコムが攻勢。 ペースつかみ逆転許す

 NTTコムのキックで後半が始まる。キックオフボールの落下地点にできたラックから、後方へボールを出し、FBエリソンが22mラインの内側からタッチを狙いキックを蹴る。ラックの位置がわずかに22mの外側だったためダイレクトタッチの判定。

22mラインの内側のラインアウトというチャンスを得たNTTコムは、ボールを回しワイドにアタック。リコーは、ゴール前でディフェンスに追われたが、なんとかこらえトライは許さずボールはタッチを割った。マイボールラインアウトをキープしてタッチキック。これが短くピンチが続く。

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 NTTコムのラインアウトでリコーにノックオン。スクラムからNTTコムがアタックを仕掛け、リコーは我慢の時間が続く。LOカウヘンガ、NO.8ハスケルのボールへの絡みで相手ノックオンを誘い、局面を打開したかにみえたが、その前にハイタックルのアドバンテージ。7分、NTTコムのゴールが成功して26対19とした。

エリアを獲り、敵陣で試合をする時間をつくりたいリコーはキックを蹴り敵陣侵入を図る。WTB横山伸一(横山伸)の自陣中盤からのキックが、バウンドして22mラインを越えてタッチを割り前進に成功する。

ラインアウトをキープし、蹴ったキックをNO.8ハスケルがチャージ。ノックオンと判定されたが相手の前進を簡単には許さない。右中間のスクラムからまたもブラインドサイドの突破を狙うNTTコムの選手の動きをSH池田が察知して止め、ラックに持ち込む。気迫あふれるプレーの連続に、リコーにトライの予感が漂った。

ラックから出したボールをNTTコムがキック。これをキャッチしてリコーバックスがカウンターを仕掛ける。さらにつないでSO河野、CTBノヌーが突破を狙い果敢にディフェンスラインのギャップを突いていく。密集でアクシデンタルオフサイド。NTTコムスクラムとなり、さらにインテンショナルノックオン――故意にボールを前に落とした(はたいた)との判定で、ペナルティキックを蹴られたリコーはエリアを押し戻された。

アタックを数フェイズで素早くターンオーバーすると、蹴り合いを経てもう一度NTTコム陣内へ侵入する。ラインアウトからのボールをFBエリソンが中央から左サイドに向かってキックし、WTB横山伸がチェイス。22mラインそばで処理するNTTコムバックスはタッチラインの外へ蹴り出す。

19分、左サイド22mライン付近のラインアウトという大きなチャンスを得たリコー。このラインアウトを奪われ、逆にNTTコムのアタックを浴びる。左サイドであわやラインブレイクかと思われたが、スローフォワードがありリコースクラムに。このスクラムからHOは滝澤佳之から森雄基に。

セットプレーが安定しない。スクラムでもプレッシャーを受けペナルティ。リスタートからのアタックで再びNTTコムにスローフォワードが出てリコーはボールを取り戻すが、NTTコム陣内10mライン付近のスクラムでまたも反則。タッチキックを蹴られ、リコー陣内深くに攻め込まれた。結局、この8分から23分あたりまでの、NTTコム陣内に侵入できていた時間帯にリコーが追加点を奪えなかったことが、試合の流れに影響した。

右サイド22mラインの内側のラインアウトを確実にキープし、NTTコムが逆サイドまで展開しアタック。25分、フェイズを重ねると左サイドからキックパス。弧を描くボールの落下地点に向かい飛び出していった長身の5番が、インゴールでボールをつかむとそのままグラウンディングしトライ。コンバージョンも決まり26対26のたタイスコアに。

拮抗した展開。互いにキックを慎重に蹴りエリアを獲りにいく。ハーフウェイライン付近のラインアウトを得ると、リコーはモールで前進すると、10mライン付近で展開しブレイクダウンが続く。

膠着状態となると再び蹴り合いに。リコー陣内深く22mライン付近に蹴り込まれたボールの処理で、痛恨のノックオン。リコーは31分、NO.8ハスケルからマイケル・ブロードハースト、FBエリソンからロイ・キニキニラウに。キニキニラウがWTB、WTBの小吹がFBに入った。

ノヌーが後半37分に中央突破。 来日4つめのトライに秩父宮が沸いた

 インパクトプレーヤーを入れアタックに備えたリコーだったが、NTTコムは右中間22mライン付近のスクラムからオープンサイドに出し12番が縦に突進、さらに10番につなぐとギャップを突きラインブレイク。32分、右中間へトライを決めた。コンバージョンも決めて26対33。リコーは逆転を許した。33分にWTB横山伸からマーク・リーに。

冷静さを保つリコー。キックオフボールの争奪でNTTコムにアクシデンタルオフサイド。リコーはスクラムを得るとオープンサイドにボールを回し、右サイドでWTBキニキニラウらが渾身のアタック。  集中力を保ってボールキープすると、もう一度左サイドに戻しアタック。ゴールライン間際のWTBリーへのパスが惜しくもつながらず相手ラインアウトとなるが、蹴り込んできたキックをキャッチすると、バックスが再び攻め込んでいく。

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 37分。ラックから球出ししたSH池田がアタックラインの裏を走り、もう一度パスをもらって出し直すサインプレーで相手ディフェンスラインを揺さぶるとCTBノヌーが突破。中央にトライを決め、31対33。コンバージョンも決まり土壇場で33対33と再び追いついた。

互いに勝たねばならない一戦。ホーンまでのラスト2分。両チーム得点を獲りにいき、グラウンド中盤で攻防が続いた。ホーン直後、NTTコムがリコー陣内に入ったあたりでリコーに反則。NTTコムはゴールを狙う。

15番がスタジアムの全視線の集めボールを蹴る。しかし、アシスタントレフェリーの旗は上がらない。どよめきの中、ボールをキャッチしたリコーは勝利を目指し、迷い無くつないで前へ――。レフェリーのNTTコム側の手が再び上がる。右サイドでつくったラック内でプレイヤーが手を使うハンドの反則。もう一度、NTTコムがゴールを狙う意志を示し、キックティーが届く。

角度はややついたが距離は25m程度。これがまたも外れた。リコーは再び攻め上がろうとしたが、押し上げてきたNTTコムのディフェンスに阻まれ、ボールを出せずにいたところでノーサイドのホイッスル。ゲームは33対33のドローで終わった。

やるか、やられるか。 小さなほころびが勝敗を分けるのが終盤戦

「『なんとか負けずにすんだ』『勝てるはずが勝てなかった』今日はどちらか?」
記者会見で山品博嗣監督に質問が飛んだ。

「勝てなかった。後半の始めもキックミスから自陣で闘うことになりましたし、細かいことがしっかりできなかったことで、相手にペースをつくってしまったので」

ただそうした中で、指揮官は手ごたえを述べた。
「ターンオーバーアタックから実行力高くフィニッシュまで持って行けたことは、よかった。(バックスに成長を感じることは?)ディフェンスのショルダー(肩)を見ながら走るのか、パスするのかを判断することはできるようになってきている。それは成長と言っていいと思います」

フル出場を果たしたPR高橋英明は、NTTコムの激しいプレッシャーを受けとめ続けた。シーズン終盤の闘いの難しさを語る。
「(スクラムで)プレッシャーはありましたね。それを強みとしてやってくることはわかっていたのですが。ラインアウトも含めたセットプレー全般、シーズンが深まってくるとどうしても研究されてくる。そこをなんとか獲得しようという気持ちがあった。重要なところで獲れなかった。シーズン当初と比べると、わかってきていると。前節の神戸製鋼戦でも感じていたんですけどね。ラインアウトのディフェンスなんかで。ただ、今から新しいことをやるのではなく、これまでやってきたことの精度を、どれだけ高められるかになってくると思います」

「(最後は攻めていったが)あれは勝ちたいという気持ちの表れですよね?」
「簡単なオフサイドのようなミスは減らさなければいけないけれど、ブレイクダウンは激しくいこうと前々から話していました。その結果のペナルティは、ある程度想定していました。それでも多過ぎかなと。向こうも同じくらいの気持ちで向かって来ていたんでしょうね。とにかく絡んで来たんで。
あとはレフェリーにいい印象を与えるプレーできるかどうかは重要なこと。そこは改善しないといけない。チームは決して悪い状態ではない。今日も悪い試合ということではないと思っています。残り3試合、力を出し切りたい」

やるか、やられるか。わずかな隙やほころびが、トライにつなげる決定力を持った者どうしの熱戦は、トップリーグ中位勢の実力が拮抗していることを改めて感じさせた。PR高橋が言うように研究は既に前提だ。何をやってくるかが互いにわかっている中で、勝敗を分けるのは本当に細かなことができるか、できないかの差。

次節1月22日(日曜日)12時から、近鉄花園ラグビー場でNTTドコモレッドハリケーンズと対戦する。ラストスパートに向けて、細かな部分まで研ぎ澄まされたリコーブラックラムズとして立ち向かう。

(文 ・ HP運営担当)

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