2012-2013 トップリーグ 第9節 対 近鉄ライナーズ

2012.12.08

歓喜から1ヵ月、コンディション整えて挑む後半節

ウインドウマンス(1ヵ月の休止期間)を終え、トップリーグ後半節が始まった。リコーブラックラムズの後半節最初の対戦相手は近鉄ライナーズだ。8試合を終えた時点での順位も近い。ここ数年も接戦を繰り返してきた。

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「まずは近鉄戦というターゲットがあります。しっかりとしたラグビーをする強いチームといい試合ができるように準備します」。前節、東芝ブレイブルーパスから勝利をあげた日にも、山品博嗣監督が意識を向けてもいた。

ウインドウマンスは、コンディショニングと実戦感覚の維持をテーマに時間を使い、前半には千葉県でキャンプも実施した。コーチ陣も、開幕前からこの期間の重要性を認識。シーズン入り前から計画をたてていたというが「ほぼ計画通りに進んだ」と手応えを語っていた。

冬らしい曇り空、やや南から微風の近鉄花園ラグビー場にホイッスルが鳴り、風を背負った近鉄のキックで試合が始まった。短いキックオフをFLカウヘンガ桜エモシがキャッチ。右サイドからSO河野好光がキックを蹴り込む。互いにキックを蹴りエリア獲得を狙っていく。リコーは右サイドのブラインドサイドをランで突くがノックオン。近鉄にボールが渡る。

近鉄陣内中央10mラインのスクラムでリコーに反則。リスタートからのディフェンスで今度はホールディングの反則。ペナルティキックで前進され、ゴール前ラインアウトのピンチに。近鉄はこれをキープして大きく展開させ右サイドを攻める。リコーは冷静に対処しタックルを決めていく。少し浮かせライン裏を狙ったキックをチャージするなどいいディフェンスを見せたが、その少し前にラインオフサイドがあった。近鉄は再びラインアウトにして攻めようとしたが、ノットストレートでリコースクラムに。ゴール前からCTBリキ フルーティーの左足のキックで10mライン付近まで戻し、一旦ピンチを脱した。

だが、近鉄のテンポのよいアタックは続き、ミスも反則も出さずフェイズを重ねる。リコーもタックルは当てているが、つかまれても簡単には倒れず粘る近鉄が少しずつ前進。再びゴール前でピンチを迎える。しかしラックでターンオーバー、キックを蹴り、勢いをそいだ。その後も攻める近鉄と守るリコーの我慢比べがしばらく続いた。

前半10分過ぎ、リコーは自陣のラインアウトから展開、FB横山伸一とWTB小松大祐のランで左サイドを破りゲイン。アタックのリズムをつくる。その後、CTBフルーティーのスペースを突いた絶妙のタッチキックで敵陣に侵入を果たしたが、ボールキープできず、フェイズを重ねる前に相手にボールを渡してしまい、リコーらしいアタックにつなげられない。

21分、またもペナルティキックからゴール前ラインアウトのピンチを迎えていたリコーは、ゴール前の攻防でFWが激しくファイトし、ターンオーバーに成功。出たボールをSO河野が自ら仕掛ける動きを見せディフェンスを引きつけると、すかさず左へ。

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 ボールを受けたFB横山伸が自陣左中間22mライン付近から加速しラインブレイク。外側をWTB小松がフォローし、パスを警戒するディフェンスを翻弄。結局横山伸はそのまま走り切って左中間にトライ。コンバージョンもSO河野が決めた。守って守って訪れたワンチャンスを確実に生かしたリコーが7対0と先制する。

しかし、この後も近鉄ペースが続く。再びリコー陣内への侵入を許し、ディフェンスに追われた。28分にはゴール前でオフサイドを犯しペナルティゴールを狙われた(不成功)。そして30分、リコーは近鉄のラインアウトモールを一度はディフェンス。しかし反則が出て、もう一度タッチに蹴り出した後の32分、再びのラインアウトモールでトライを狙われる。今度は近鉄がしっかり押し込み2番がトライ。コンバージョンも決まって7対7の同点に。

その後は互いに攻め合うも陣地の中盤で反則を犯しチャンスをつくれず。このまま前半が終わるかに見えたが、ホーン後、リコーが近鉄インゴールに蹴り込んだボールを拾った近鉄の選手が、デッドボールラインの外へボールを投げ出し試合を切ろうとする反則。リコーは正面やや右の位置でペナルティゴールを得て、これに成功。10対7で試合を折り返した。

シンビン直後に痛い失点。しかし、2つ目のトライで見せた「リコーらしさ」

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 後半に入っても近鉄ペースが続いた。ミスなくパスをつなぎ、リコーの出足鋭いディフェンスにも、ボールを容易に失わずフェイズを重ねていく。序盤からゴール前まで前進する場面をつくっていく。リコーも状況の打開を狙う姿勢を見せたが、焦りからかアタックではやや個人プレーが目立つように。サポートがわずかに遅れるシーンが続く。

7分、リコーはNO.8コリン ボークに替わって柳川大樹、WTB星野将利に替わりロイ キニキニラウが入る。FLカウヘンガ桜エモシがNO.8、柳川はFLに。だが流れは変わらずリコーは22mライン近辺でディフェンスに追われる厳しい展開。だが、紙一重のところで守りきる集中力を見せる。SH池田渉、CTBフルーティーの判断力も光った。

試合が動いたのは16分。ボールキープしフェイズを重ねてくる近鉄に対し、自陣浅めの位置でNO.8カウヘンガがボールキャリアを捕まえにいく。ここでハイタックルの判定。さらに危険なプレーだとしてシンビン(10分間の一時的退出)が科された。近鉄はペナルティキックをタッチに蹴り出し、ゴール前ラインアウトにする。これをキープしてモールで前進。そこから1番が飛び出し左中間にトライを決める。コンバージョンも決まり10対14。近鉄が逆転する。

再開後、中央付近でマイボールスクラムを得たリコーは、WTBキニキニラウを加えてスクラムを組む。しかしアーリーエンゲージで近鉄ボールに。素早いリスタートからアタックを浴び、左サイドを突かれ、またもゴール前にボールを運ばれる。ライン裏へのキックをFB横山伸が処理しタッチに出すが、近鉄はラインアウトから攻め、再びゴールに迫る。ゴールライン上での攻防となり、リコーは再び渾身のディフェンス。インゴールにグラウンディングされたかに見えた場面もあったが、ノックオンに救われた。

スクラムからCTBフルーティーのキックでエリアを取り戻すと、クイックスタートした近鉄のバックスを捕らえ、ターンオーバー。右サイドにボールを出しアタック。SO河野、WTB小松、キニキニラウがゲインを狙うが、近鉄はこれを激しいディフェンスで止める。簡単には前進できない。

しかし、近鉄に反則が出て、リコーにアタックのチャンスが訪れる。右サイドのラインアウトから左中間をシンビンからグラウンドに戻ったNO.8カウヘンガが突進。さらにケガからの復帰戦となるFL柳川も果敢にぶつかっていく。ボールを受けたFB横山伸のラン、右サイドへのゴロキックでボールをタッチに出し、ゴール前に迫る。このラインアウトからボールを回す近鉄に激しいプレッシャーをかけるリコー。一瞬ボールがこぼれるが、これを近鉄が拾い、前方に強く蹴る。

ボールはディフェンスラインの裏へ転がっていく。これに反応したのがLOの馬渕武史と近鉄の2番。FW同士がボールに向かって駆け寄るが、一瞬早かった2番がもう一度蹴り、ボールは左中間インゴールへ。30分、左サイドを走りフォローした近鉄11番がこのボールを押さえてトライ。コンバージョンは外れたが、逆転トライがすぐそこまで近づいていた状況での痛い失点で10対19。勝利するためには、リコーは残り10分で1トライ1ゴール以上の得点が必要という状況を迎える。

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 だが、パニックを起こさずリコーは自分たちのラグビーに立ち返る。キックオフ直後のノックオンで得たマイボールスクラムから、連続攻撃を仕掛けフェイズを重ねながら前進。FWは激しい突進を見せ、BKは俊敏にギャップを突く、チームが一体となったアタックをこの試合で初めて見せる。35分、CTBフルーティー、山藤史也、WTBキニキニラウらのゲインでゴールに迫ると、最後はFB横山伸が左サイドを突破。インゴールを回りこんで中央にトライ。コンバージョンも決めて2点差に詰めよる。

最後の最後、ペースをつかんだリコーはキックオフボールをうまく処理し、CTBフルーティーがギャップを抜けて攻め上がる。すると近鉄にハイタックルの反則が出る。

残り時間は少なかったが、これをタッチに蹴りだし、さらにPR高橋英明、SH神尾卓志、SO津田翔太を送って、リコーはラインアウトから逆転を懸けアタックを仕掛ける。中央をNO.8カウヘンガと突進。さらにサポートが駆けつけブレイクダウンをサポート。近鉄ディフェンスも最後の力を振り絞りなかなかボールが出させない。ここでレフェリーがホイッスル。ボールを抱え込むジェスチャーでノットリリースザボールの判定。ボールを得た近鉄は、ラインアウトも確実に獲りそのままキープ。そのままホーンを迎えてノーサイド。17対19でリコーは近鉄に敗れた。だが、7点以内の敗戦であったためボーナスポイントで勝ち点1を確保した。

アタックで必要なのは、チーム内での「イメージ」の共有(LO馬渕武史)

CTB山藤史也

「気持ちが前に出過ぎていたのか、ペナルティが出てしまった。レフェリーとコミュニケーションをもう少しうまくとれれば。アグレッシブにやろうという気持ちは出ていた。ディフェンスも激しくやれていた。ただ勝ちに対する執着心で、相手の方が上回っていた」

LO馬渕武史

「アタックについては精度の上げられる部分はあった。FWが縦に行く場面でも孤立していたことがあった。少し違った形でやれば、一回一回の攻撃でもう少し食い込めたんじゃないか。(サポートの遅れは?)チームがどうしようとしているか、チームの中で同じイメージを共有できれば改善できるはず。同じ反則を繰り返してしまって、敵陣にいる時間があまりにも短かった。中盤からアタックしかけてもトライ獲り切るのはやっぱり難しい。もう少し敵陣に入り込まないといけない。最後のトライのように、敵陣でフェイズを重ねれば、トライは生まれるもの。来週までにディシプリンの部分をもう一度確認したい。ディフェンスでは一人一人の強さを感じました。外国人選手も強かった。アタックの度に毎回ゲインされて自然とゴール前まで押し込まれてしまっていた」

PR柴田和宏

「勝てた試合だった。もったいないのひとこと。FWとしては、セットプレーはよかったが、モールのドライブのところで2本とられてしまった。あれは練習でやっていたので、どうしても止めたかったところ。そこは残念です。ディフェンスはよかった。少し人数かけすぎたところもあったけれど、プレッシャーも与えられていたと思う。あとはペナルティですね」

HO森 雄基

「ラインオフサイドが多かったですね。あとはボールをキープできなかったこと。ボールぽろぽろしたり、ルーズなところもあった。集中力がなかったとは思わないが、パスすべきか、キープすべきかの判断でルーズさがあったかもしれない。(孤立したアタックが多少多かった?)サポートが遅れたということだと思う。タックルしてから立ち上がるまでスピードなどを上げていきたい。あとはディシプリン。次節は、切り替えて自信を持って闘いたい」

 クイックにボールを回す近鉄にプレッシャーを与えられる、出足鋭い前に出るディフェンスには、少しでもはやくタックルを仕掛けていく意識が欠かせない。前半はその意識がわずかに過剰で、ペナルティにつながっていた。それは徐々に減っていく傾向を見せたが、試合を通じてリコーに生まれてもいいチャンスを減らしてしまったことは確かだ。しかし、相手に比べ圧倒的に少なかったチャンスを生かし2つのトライを奪った。試合中にキャプテンの小松大祐が取り戻そうと声をかけた「リコーらしさ」は、そのトライにしっかり現れていた。

「守っているだけでは勝てない」
「FWはダイレクトに、BKもチャンスがあればどんどん仕掛ける」
「ボールをキープし、確実にフェイズを重ねていけば、トライは生まれる」

今シーズン、チームからよく聞こえてくる言葉だが、この日の試合を振り返るとその大切さが伝わってくる。BKが果敢に攻めた1本目のトライと、フェイズを重ねて獲った2つ目のトライは本当に見事なものだった。「勝てた試合」という印象と「進んでいる道は正しい」という思いが同居するのはそのせいかもしれない。今シーズン「リコーらしさ」は完全に像を結んだ。敗戦でもしっかりとその片鱗が伝わる試合を見せられたのはその証拠だ。

次節、第10節は12月9日(日)にアウェーの地、佐賀県に乗り込み闘う九州電力キューデンボルテクス戦(13時~)。トップリーグ残り4試合で、選手は成長を遂げ、さらなる実行力がともなえば、ポストシーズンでの大躍進も不可能ではない。そのためにも結果と内容、両方が問われるゲームが続く。前半節に繰り返し見せた「攻め続けるリコー」を取り戻し、トライラッシュに期待したい。


(文 ・ HP運営担当)

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