【Review】トップリーグカップ2019 第4節 vs 近鉄ライナーズ

2019.07.18

今節も雨中の戦いに。2トライを奪う快調なスタートを切ったが――。

残すところ2戦となったトップリーグカップ。第4節はトップリーグ再昇格を目指し、特に高いモチベーションで臨む近鉄との対戦に。リコーは6月に敗れた定期戦のリベンジを図るとともに、連敗ストップを懸けた一戦となった。

 

コカ・コーラボトラーズジャパン広島スタジアムは雨。リコーはこれで3試合続けてウェットコンディションでの試合に臨むこととなった。SOロビー・ロビンソンのキックで試合が始まる。

 

リコーはハーフウェイ付近でラインアウトを得ると、モールを組み左サイドを前進。タッチライン側をWTB高平拓弥が突くがここはディフェンスに阻まれボールを奪われる。しかし、自陣に蹴り込まれたボールをFBキーガン・ファリアが右サイドのスペースにキック。近鉄の蹴り返しがタッチを割り、リコーは敵陣の10mライン付近で再びラインアウトを得る。

 

右サイドのラインアウトからここもモール。22mラインを越えると、NO8ボークコリン雷神が左に飛び出し右中間でクラッシュ。すぐさま左に展開しSOロビンソン、 WTBアマト・ファカタヴァ、FBファリア、WTB高平とつなぎ左中間インゴールにトライ。SOロビンソンの蹴ったCVも成功しリコーが先制する。セットプレーからの理想的なアタックでの得点となった。(前半6分)

 

再開後はキックを中心にボールが両チームを行き交う展開となる。リコーは自陣でハイボールキャッチを試みたFBファリアヘの危険なタックルでPKを得て前進。敵陣でのラインアウトにする。左サイド22mライン手前のラインアウトをキープするとNO8ボーク、FL松橋周平のキャリーで突破を狙う。ポイントをつくると右に展開。WTB高平、FBファリアらが右サイドを突く。折り返し左へつなぐと、SOロビンソンへのパスが乱れたが、足を使ってうまく処理。さらに左へ運ぶと、インゴール左隅にFL松橋がトライ。CVも成功し14-0とした。(前半12分)

 

リコーはリスタートキック直後の相手のペナルティで、またも敵陣ラインアウトとするがノックオンでアタックに入れず。近鉄はスクラムからキックを蹴り込んで攻め込む。リコーは自陣22mラインの内側で再びノックオン。近鉄はスクラムを起点に中央でピックゴーを繰り返すと左に展開し、鋭い動きを見せた11番がトライ。CVも決めて14-7。(前半22分)

 

この後PR柴田和宏が脳震とうの疑いの確認(HIA)を行うため一時退出。替わって大川創太郎が入る。(柴田は31分に復帰)

 

ハーフウェイ付近の攻防が続くと、SOロビンソンが後方のスペースを見出し、長いキックを蹴る。これがうまく転がってタッチを割り、22mラインの内側の近鉄ラインアウトとなる。キープしたボールをインゴールに下げる近鉄にプレッシャーをかけるリコー。短いタッチキックとなり、リコーは22mラインまであとわずかの位置でラインアウトを得る。

 

このラインアウトは近鉄に奪われ自陣に押し戻されるが、自陣左サイドのラインアウトから右に展開。右中間のギャップを突いたFBファリアが抜けて前方のスペースを走る。ハーフウェイを越え、敵陣22mライン付近でWTBアマトにつなぐと右中間インゴールへ到達。中央に回り込んでトライ。CVも難なく決めて21-7とした。(前半26分)

 

華麗なブレイクでスコアしたリコーに対し近鉄も技術を見せる。再開からひとしきり蹴り合いが続くと、自陣からの長いキックパスを鋭く飛び出した15番がキャッチ。裏に抜けた15番は40m弱を走りきって右中間にトライ。CVも決まって21-14。(前半30分)

 

強くなる雨の中でアタックするリコーにノックオン。ハーフウェイを少しリコー側に越えた位置での近鉄スクラムとなる。PR柴田が戻るが、今度はPR西和磨がHIAで退出。替わって辻井健太が入った。(前半32分/西は39分に復帰)

 

リコーはここでコラプシングを犯し、PKで自陣深くに侵入を許す。ゴール前、左サイドのラインアウトを奥で合わせた近鉄は、9番が左中間インゴールに持ち込んでトライ。CVも決まり21-21の同点となった。(前半35分)

 

前半終了直前、NO8ボークのタックルが危険なものではなかったかの映像確認が行われたがカードは出ず。その後はリコーが勝ち越しを狙って敵陣侵入を図ったが、スコアは生まれないまま前半は終わった。

決定機で確実に仕留める近鉄。リコーは反撃のきっかけをつくれず。

近鉄は後半の入りを力強く攻めた。キックオフボールを捕ったリコーのラックに激しいプレッシャーをかけターンオーバー。左中間から中央に運ぶと縦に仕掛ける。FWが猛然とピックゴーを繰り返しじりじり前に出ると、一気にトライラインを越える。映像判定を経て6番のトライが認められた。CVも決まり21-28。リコーは勝ち越しを許す。(後半2分)

 

ここでHO芳野寛を森雄基に、PR柴田を大川に入替。(後半3分)

 

獲り返したいリコーだったが、敵陣のラインアウトでのノックオンや自陣脱出のタッチキックがダイレクトになるなどのミスで反撃のきっかけをつくれない。

 

相手のドロップアウトがタッチを割って得た、ハーフウェイ付近のラインアウトを奪われたリコーはアタックを許す。このディフェンスで倒れ込みを犯すとPKでゴール前ラインアウトにされる。(後半13分)

 

しかしこのラインアウトを逆に奪い返し、トライラインに沿うように左から右に大きく展開。SOロビンソンがキックを蹴りプレーを切って22mラインの向こうに押し戻す。リコーはSH高橋敏也を山本昌太に入替。(後半14分)

 

再度ラインアウトからトライを狙う近鉄。リコーはこのディフェンスで相手のパスをはたいてしまうインテンショナルノックオン。PKを得た近鉄はタッチに出しまたもゴール前ラインアウトに。(後半15分)

 

左サイドのラインアウトからモールを組んだ近鉄は強く押し前進。左中間のトライラインを越えると7番がグラウンディング。後半2つめのトライで21-33とした。CVは不成功。(後半18分)

 

20分を残すものの逆転には2トライを要する12点差となり、早い段階でのスコアが求められる状況となったリコー。再開のキックの落下地点に出足鋭く迫っていく。敵陣中盤で得たラインアウトから攻めていくが前進できず停滞、そしてノックオン。その後は中盤でボールが行き来する時間が続く。

 

リコーはPR西を辻井に、FL松橋を湯川純平に入替。(後半24分)さらにFBファリアを浜岸峻輝に入替。浜岸がSO、ロビンソンがFBに入った。(後半26分)

 

後半27分、リコーは相手のノックオンで得たハーフウェイ付近のスクラムを押しコラプシングを獲る。右サイド、10mラインを越えたあたりのラインアウトからモールを組んで前進。直後に展開し逆サイドを狙うがボールが相手に入る。近鉄はリコー陣内深くにキックを蹴る。これはFBロビンソンがフェアキャッチ。

 

ここでロビンソンは大きく蹴らずにリスタート。ギャップを抜け一気にゲインし、敵陣22mライン付近でリコーがアタックのチャンスを掴む。仕掛けていくリコー。ビッグプレーで舞い込んだチャンスだったが、近鉄のハードなプレッシャーもあり粘り切れずノックオン。リコーはLO馬渕武史をタラウ・ファカタヴァに、WTB高平を深津健吾に入替。(後半31分)

 

点差を縮めることができないまま時間が過ぎていく。敵陣でのスクラムを回したとしてリコーにペナルティ。PKをリコー陣内22mラインの向こう側のタッチに出した近鉄は、右サイドのラインアウトからアタック。右中間を攻めるとリコーのディフェンスラインを破りトライ。CVは不成功も21-38と試合の行方を大きく左右するスコアが入った。(後半35分)

 

意地を見せたいリコーは、自陣のマイボールスクラムを押してコラプシングを獲るとPKで敵陣に侵入する。さらにラインアウトから展開、CTB濱野大輔、NO8ボーク、LOロトアヘアポヒヴァ大和、PR辻井らが果敢にディフェンスに挑んでいく。しかしここもノックオン。

 

近鉄スクラムとなるがアーリープッシュでリコーのFKに。NO8ボークがクイックリスタートを見せると近鉄にオフサイド。PKをタッチに出したリコーは、右サイドのゴール前ラインアウトからモールでトライを狙う。

 

ここで相手ディフェンスの状況を見定めたSH山本が、FWにボールを求めるとすかさず左のCTB濱野にパス。強く鋭く突っ込んだ濱野は、迫るディフェンスからボールを守りながら身体を捻り、ほぼ右中間のトライライン上にグラウンディング。レフェリーの手が上がりトライ。SO浜岸が蹴ったCVは不成功も26-38とした。(後半41分)

 

試合はこのままノーサイド。リコーは序盤のペースを握りいい形でトライを奪ったが、チャンスで確実に仕留める決定力を見せた近鉄が徐々にリズムに乗っていくと、ミスなどもあり流れを変えるきっかけをつかむことができなかった。これでトップリーグカップは1試合を残して1勝3敗勝ち点7の4位に。最終節7月20日(土)は秩父宮ラグビー場でマツダブルーズーマーズと戦う。

 

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

神鳥裕之監督

どうもありがとうございました。まずは雨の中会場に足を運んでくださったファンの皆様にお礼を申し上げたいと思います。結果は非常に残念です。我々のスタンダードはこのようなレベルではないと信じていますし、しっかりと準備させてあげられなかった我々も責任を感じています。選手はよく戦ってくれたと思っています。今日は近鉄さんがいいラグビーをしたということに尽きると思います。我々としては、残り1つカップ戦が残っていますので、来年1月から始まるトップリーグに向けて、少しでもいいゲームをして、未来につなげていきたいと思っています。今日の反省をしっかりして来週に向かっていきたいと思います。

(ハーフタイムにはどのような指示を?)ラインアウトのところ、セットプレーのところは勝っているということ。アタックについてはもう少しボールキープはしっかりするということ。そのあたりを。前半最初のようなイメージで――というようなことを伝えました。【以上共同記者会見にて】

 

少し深刻かな。でも、今いろいろな課題を出して次の段階につなげていくという意味では意味があるとも思います。ここでみんなで話し合って解決していければ。(深刻というのは具体的にどの部分が?)リコーの良さって結束力だと考えていて、人(個の力)に頼るのではなく、それをつくってきているんですよね。でもお互いの自信とかプレーに対する信頼とか次にやることの理解とか、そういうピクチャーがバラバラになってくるとチームとして機能しなくなり綻びが出る。今日の後半は自分たちのアタックのストラクチャーの形がつくれなくなったり、簡単にラインブレイクされてしまったり、その結果でもありますがチームとして大事にしてきたディシプリンが守れなくなったり…。

 

深刻とは言いましたが、問題をシンプルに見ていくことですね。立ち返って、自分たちが大事にしてきたものは何なのかを考えることが大事。進化の過程でもあるので、変化を恐れてはいけないとも思っています。でも根本的な部分、自分たちの強みというものを見直す機会にしたいと思います。来週の試合が終わるとトップリーグまで少し空きますが、自分たちの真価が問われる期間になります。この期間を楽しむくらいの余裕をもって臨みたいですね。

 

CTB濱野大輔キャプテン

本日はありがとうございました。今日のゲームは自分たちのハンドリングミス、それからペナルティ、それらで近鉄さんにチャンスを与えてしまいこのような結果になったと思っています。近鉄さんのディフェンスライン、ブレイクダウンのプレッシャーに受け身になっていたとも思います。前半は自分たちのラグビーができたと思ったんですが、後半でターンオーバーが16回と普段のリコーではありえない数を許してしまったので、自分たちのクオリティを見つめ直したいと思います。僕自身もそうですし、チームとしてもです。カップ戦は残り1試合マツダ戦が残っていますので、そこに向けたいい準備を選手だけではなくスタッフとも協力してやっていきたいと思います。【以上共同記者会見にて】

 

PR柴田和宏

正直、自分たちのミスで試合がひっくり返った感覚しかないですね。近鉄がどうこうではなく、自分たちだと思います。NECのときもそうでしたけどね。(思い当たるミスが出る理由があれば。この時期というのはあるのか?)そこは難しいですね…。時期というのもないと思います。これまでの試合でもいいときはあったし、今日の試合も入りは良かったですから。相手にとってのチャンスで、こちらがミスしているというのも良くなかった。ミスの場所ですね。

 

(スクラムの印象、感想は?)個人的な感覚ですが、リコーが落としたと判定されたスクラムでも、ヒットでプレッシャーをかけてセンターラインを獲れていることもありました。圧倒するところまでもっていけなかったので、しょうがないんですけどね。苦労しているところもあるんですけど、まずまずのスクラムは組めていると思います。ただ、まだ1番ではないです。切り替えも大事ですが、見直しもしっかりして、チームとして成長の機会になるよう、カップ戦最後の試合に臨みたいと思います。

LO馬渕武史

自分たちがやりたいことが、特に後半できなかったですね。簡単にミスを出して相手にチャンスを与えてしまうと今日のような苦しい試合になってしまう。判断の部分に大きな問題はなかったと思うのですが、ただそれに向かって全員が意思統一して取り組めていたかというと、できていなかったかもしれない。手詰まりになったらエリアを獲る…とかですね。ただ、後半の最後のトライなどは強みであるモールを組んで、しっかり押してトライにもっていくというところは同じ方向を向けていたかなとは思います。

 

(ベテランとして、こういう局面でどうするべきと考えるか)ミスについては意識の部分。今週は練習でもケアレスミスが多かったのですが、それが試合に出てしまったのかなとは思う。ただ修正は難しいことではないです。まずは僕自身がしないようにするというのもある。あとは近鉄さんが素晴らしかったです。キックボールキャッチのスキルなどは高いと感じましたし、個々のランナーも強かった。

FBキーガン・ファリア

(結果は残念だったが、素晴らしいブレイクもあった)これよりもできるチームだと思います。まだポテンシャルを出せるように向かっている最中。もう少し実行力を高めていく必要がある。それができれば求めるところにたどり着けると感じています。(個人的に意識していたことは?)近鉄のFBセミシ・マシレワ選手のシャットダウンですね。相手のチームの中で脅威となるであろう選手だったので。あとはバックスリーのコミュニケーションですね。

(リコーはどんなチームに見えているか? またそこで自分をどう活かそうと考えているか?)新たに加入した者として、率直にすごく強いチームだなと思います。こうやって僕が来ることで、スパーク、エナジーアップのような効果をもたらせればいいなと考えています。目立つことをするという意味ではないです。うまくチームに溶け込んで、貢献していきたいと思っています。リコーの持っているものは素晴らしいので、そこにプラスしていくイメージです。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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