第63弾:選手がみせた、その横顔 53

Inside the RICOH BlackRams

2012.10.31

リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

日本選手権の決勝、後半31分。同点トライを決められた直後このタイミングでいくのか、と(辻井健太)

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 今年8月、リコーブラックラムズへの入部が発表された、
現時点では、リコーで一番のニューフェイスの辻井健太。昨シーズンの大学選手権を制した帝京大学でPRとしてプレー。競争の激しいチームにあって準決勝、決勝で出場機会をつかみ、優勝の瞬間をピッチで迎えた。

「アップをしていたら、同点トライを決められて。このタイミングでいくのか…と緊張したのを覚えています。コンバージョンキックをインゴールで待つメンバーの中に入って。それでキックオフの後、スクラムになったんですけどそこで初めて、『お前、いつの間に入ってた?』とメンバーに言われたんですよ。もう、きわどい試合でみんなガチガチだったんです(笑)」。もちろん辻井も緊張していた。「スクラムはヒットした気がしない。外から見たら押せていたように見えたんですが」。

ラグビーは中学校時代に始めた。小学生の頃は卓球を楽しみながらやっていた程度で、本格的にスポーツに取り組むことはなかった。だが、年の離れた兄が伏見工業高校(京都、以下:伏見工)でラグビーをやっていたため、その試合を観に行く機会はあり、ラグビーは身近だった。

「小学校3年生のときに、伏見工・山口良治先生(TVドラマ『スクール☆ウォーズ』のモデル)にお会いしたことがあります。プレーする兄はやっぱりかっこよく、憧れて友だちとラグビーっぽい遊びをしたりしましたよね」

中学は平尾誠二氏(現神戸製鋼総監督兼任ゼネラルマネージャー)も輩出した名門・京都市立陶化中に進んだ。リコーではSO津田翔太が同じ中学の先輩にあたる。当初はLOやPRを務めたが、徐々にPRに固定されていった。高校は伏見工、大学は帝京大学と兄の背中を追った。

高校のときは、スクラムの練習が印象的だったという。「1年生のときは、練習で全国制覇した3年生たちとスクラムを組んでいたんです。フロントローがかなり強い人たちで。足がつかなくなるぐらい持ち上げられていた。だんだん技術はついていったけれど、あの1年間は押し勝った記憶は一度もないんですよね」。名門ならではの経験が、辻井にPRとしての経験を育ませたといえるだろう。

大学時代は、帝京大学の黄金期突入とともにあった。1年時は大学選手権準優勝、2、3年時は連覇を果たした。

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「3連覇のプレッシャー? 自分たちの代で日本一を目指すというイメージでしたね。前の年のレベルにまず追いついて、それを追い越せば自然と日本一は見えてくると考えていました。あとは経験のある3年生、4年生が引っ張っていこうと」

リコーというチームに対する最大のイメージは、2009年の日本選手権の一回戦だ。帝京大学1年生だった辻井は、トップリーグ復帰を決めたリコーと先輩たちとの闘いをスタンドでじっと観ていた。

「トップリーグがどれくらいのレベルなのかわかっていなかったんです。でも、そう簡単に勝つチャンスはないと思ってはいました。それが先輩たちがかなりいい試合(25対25で引き分け。トライ数の差でリコーが2回戦へ)をして、とても興奮しました。

その中でもスティーブン ラーカム選手(現アドバイザー)が、すごい落ち着いたプレーをしていたのが印象的でした。あの年の帝京大学って、FBの的確なキックと強力なFWを強みに闘ってきたんですけど、ラーカム選手はFBがどんなにいいキックを蹴っても、先読みして待ち構えているし、決して落とさない。あんな凄いプレーヤーは見たことなかったです」

それから3年。辻井も同じ日本選手権の舞台を踏んだ。東芝ブレイブルーパスを相手に闘い、敗れはしたものの先発出場を果たし後半16分までプレー。
社会人の実力派チームと身体をぶつけ合った経験は、辻井に「さらに上のレベルでラグビーを続けたい」という思いを強くさせたことだろう。

冒頭の大学選手権の決勝で、対峙した天理大のスクラムには、現チームメイトのPR・藤原丈宏がいた。「高校時代、僕が伏見工で彼は天理高。練習試合や近畿大会の決勝では何度かスクラムを組んでいるんですよ」。リコーでチームメイトになった今は「やっぱり話しやすい」存在になったという。

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「リコーはファンの方も多いし、応援もコールリーダーの方がいて組織的です。開場前には、先輩方が職場の方々と和気あいあいと話をしていたりして、みんなに支えられているラグビー部だなと感じました。自分もあの舞台で、はやく試合に出たい」

リコーの次世代を担うPR。
この厳しいポジションでレギュラーとなることを目指す辻井の長く険しい日々が始まっている。

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